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 じっと座禅を組み「何が悪かったのだろう」と考えていたところに、蝋燭の炎が揺れるのを感じた。

 「だれだ?」と声をかけるが反応はない。そしてまた考える「何かまちがっていたのだろうか?」

 私の名は護良(もりよし)、今上天皇後醍醐(ごだいご)の長男として生まれたが、6歳の時に出家させられた。別に出家が嫌だったわけではない、出家後も武を鍛え、学を学び天台座主と言われたときもあった。

 

 ある年、父が幕府に反旗を翻した。当然私も父の行動の同調した。しかし我々は敗れ、行者や修験者と言われる者たちを頼り落ち延びた。その後父は隠岐に流罪になったらしい。「後鳥羽上皇のようだな」私は承久の戦いで幕府討滅の軍をあげ、敗北した。過去の上皇を思い出した。

 

 その後父は隠岐から脱出し、私や先の敗北から逃げおうせた者たちと必死に戦った。すると幕府側だったはずの御家人からこちら側に味方するものが現れた。新田、赤松、そして足利。そうして幕府はあっけなく滅んだ。


 その後父は平安の世の天皇親政を目指し始めた。当然味方に付いた武士たちからも不満が出る。その中に足利尊氏を担ぐ者たちがいた。

 「足利に注意するように」と私は父に忠言したが、父は足利の棟梁高氏を好み、偏諱(へんき)として本名の|尊治《たかはる》より「尊」の文字を与えた。

 しかし本人は納得しようが、兄弟や家臣は納得すまい。私は足利をけん制するために征夷大将軍の座を得た。足利に鎌倉幕府の後を継がせぬために。


 しかしその後誰ぞの諌言を信じた父は、私を足利の弟のいる鎌倉に幽閉した。父のために尽くし、父の理想を叶えるために働いた結果か。

 「ふっ」そう考えると声が出た、笑えないが笑ってしまう。そういえば北条の残党がここ鎌倉を奪還しに来ていると、見張りの雑兵が、交代時に話していたのを思い出す。


 「で何の要件だ?」私は向き直り先ほど入ってきたものにたずねた。しかし返事はない。

 「北条のものか?」返事はない。

 「足利ものか?」 返事はない。

 「父の手のものか?」 一瞬のためらいのようなものをその者に感じた。


 「そうか」と私が言うとその者は襲い掛かってきた。長期の幽閉で四肢も弱り、力も出ない状態だったが普通なら避けれるはずの一撃だった。しかし私は避けなかった。刀のきらめきが蝋燭の炎によって見えた。


 私を斬ったものは、すぐに音もなく出ていった。父のために戦った自分が父の命で一生を終わるか。そう考えると笑えて来た。私の人生とは何だったのだろう。あの女の諌言か。そう考えながら私は意識を手放した。

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