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戦闘狂は今日を楽しむ  作者: 椿 飛輝
7/12

第六話_殺意と強み

 闇が深まるにつれ、恐怖と不安が募るばかりで、ろくに眠る事も出来なかった


 「隊長……隊長!」


 志斎は声の矛先が自分であることに気づき慌てた様子で振り返る


「すまない」


集まった隊員達は心配そうに志斎を見つめた


「大丈夫ですか」


「ああ大丈夫だ お前達も怖がることは無い 必ず俺が守ってみせる だから安心して戦ってくれ」


 志斎は自分の発言に違和感を感じた。


(安心して戦ってくれ…… 自分が敵を殺すことを完全に放棄し他の者にその責任を丸投げしている…… 情けねぇどうしたらいい)


 考え込む志斎に隊員達は


「何言ってるんですか 俺達が隊長をお守りするんですよ だから安心して戦ってください」


 志斎はまだ兵としての歴が浅いため、隊長とは言ってもかなり小規模隊の長だった


 時間が経過し、遂に戦いが始まろうとしていた


 志斎を含む軍隊は、真っ直ぐ奥を見据え音もなく緊張感の漂う中、ただ時を待っていた


 見据えていた景色が変わった、目線の先からは無数の騎馬が、こちらへ向かっているのが見える

 その瞬間、戦の始まりを告げる笛の音が静寂をかき消した


「行くぞぉぉ! 奴らを向かい打てぇ!」


 地鳴りのような声を上げ、敵の軍と志斎を含む味方の軍がぶつかり合った


「我々の仕事は将軍への接触を防ぐことだ 突破してきた敵をなんとしても食い止める」


 志斎は指揮をとり、大きな戦いが行われている場所から少し引いたところで敵が来る瞬間を待っていた


 耳を澄ませば、死に嘆く者達の悲鳴が聞こえてくる。目の前に広がっているのは敵味方乱れて死んでいくもの達の姿

 志斎は視界の隅に苦戦する武士を捉えた

昨日の奴だ 相手は敵の隊長格だろう


 ふと志斎は思い出す

――なんでこんな所に居るんだっけ


 何してんだ俺は……人を救う為に刀を握ったんだろ だったらこんな所でただ見てるだけでいいのかよ


 そう思いながらも志斎の体は既に動いていた


「隊長!! 一体何を」


 軽く振り返り隊員達に叫んだ


「悪いがそこは任せる」


 志斎は斬り合う武士たちの間を駆け抜けた

その際、敵味方関係なく峰打ちで戦意を削ぎ落とす


 この戦場において『足音』の有無など関係ない

ただ志斎は速度を身につけていた。そして最も志斎の強さを語るに相応しいのは、速度を落とすことなく正確な攻撃を繰り出せるというところだろう


 そして既のところで相手の刃を食い止める


「お前 何でここにいやがる」


 その声は助かったという安心感など微塵もなく、ただただ怒りに満ち溢れていた

 助けてやったなんて偉そうなことは少しも思っていなかったが、あまりにも予想と反応が違い驚きを隠せなかった


 志斎が敵の刃を止めている間に、そいつは敵を斬り伏せ志斎に叫んだ


「貴様は自分の勝手で部下を危険に晒すのか」


 その言葉で、さっきまで自分のいた場所に視線を送ると、そこには敵が進軍しているのが見えた

 急いで戻ろうとしたその瞬間、斬ったはずの敵が立ち上がる 巨体で頑丈な体の敵には浅い傷だったのだろう


「戻れ」


志斎に向けられるその声は喉が切れ、血が出るのではないかと思うほど、強く必死だった


「しかしその傷では」


志斎も必死に言い返すが、それをかき消すように怒鳴り返した


「貴様は部下の命を捨て たった一つの命を守るのか」


 志斎は迷っていた。

 戻るべきなのか、ここに残って守るべきなのか

しかし、そいつのその一言は志斎を冷静に戻した


「違うさ どっちも守るんだよ」


 刹那で繰り出された剣撃は、その速さからは想像もできないほどの破壊力を持ち、敵の刃に留まらず鋼のような肉体を深く傷つけた


 敵が倒れ始めてから完全に地に着くまでの短時間の間に、志斎は踵を返して自分の隊員の場所へと向かい始めていた


 進軍する敵が隊員に辿り着く前に、隊の先頭には志斎が立っていた


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