第十一話_タフな奴
八裂が剣を振るう
確実に先手を取ったであろう八裂の剣は、振り切る前に弾かれた。
何が起こったか理解する間もなく、八裂は体の向きを180度変え次の攻撃を何とか阻止した
決して志斎の動きを読めていた訳では無い。
視界から志斎が消えたことに気がついた八裂は、反射的に振り返り、剣を振った。言うならば勘が当たっただけだ。
「やるじゃねぇか」
口ではそんなことを言っているが実際、油断する隙などほんの一瞬も貰えない
八裂は志斎の攻撃に『ヤバさ』というものを感じていたが、その正体を知ることなく次の攻撃が八裂に襲いかかる。
一撃目を既のところで受け止めるも再び弾かれ、勘を頼りに向きを変えるも、運は二度連続で味方してはくれなかった。
攻撃を受け止めるべく、構えた剣は虚しく空を切り同時に腹部に痛みを感じた。
「運のねぇ奴だ」
一見、志斎が放った言葉のように聞こえるが このセリフの主は八裂だ。当然、志斎はこの発言に疑問を持った。
「何を言っている」
「運がねぇって言ってるんだ テメェのな」
少し怯んだ様子だった八裂が、背中を伸ばし腹部からの出血を見つめていた。
「今の一撃で仕留め損ねたなら もう勝ち目はねぇよ」
視線を腹部から志斎へと移す
「もうこれ以上の攻撃は受けねぇからだ」
八裂の顔に段々と、にやけ面が戻っていく
「やはりお前は危険だ」
志斎は表情にこそ出さないが、自分の勝率が下がったことを確かに感じ取り、恐怖をも感じていた。今の一撃で仕留めたつもりだった。しかし八裂はまるで痛覚がないかのように、楽しそうな表情で立っている。
両者が再び動き出した時、八裂は確かに感じ取る。先程より志斎の速度が上がっていることを。
一撃目を剣で受けようと考えていた八裂だったが、思わず回避の行動に出る。しかし剣先は八裂の胸部を確かに捉えていた。
腹部に受けた傷ほどではないが、かと言って決して浅い傷ではなかった。
その後も同じ内容のやり取りが続く。志斎が仕掛け、八裂が受ける。
志斎の攻撃を捉えることは出来ないものの、身体に受ける傷は徐々に浅くなっていた。
剣が肉を裂いた感覚。痛みが脳に伝わる前のその感覚を頼りに致命傷を回避する。
志斎が八裂を傷つける度、その感覚は鋭さを増していく。
「こんなに攻撃しても倒れないとは」
息を切らしながら志斎は八裂に次の攻撃を仕掛けることなく後方へ飛び退いた。
呼吸を整えると、志斎は再び攻撃を始めたが八裂は一撃目を刀で受け止める。
正確には、受け止めきれず再び弾かれた状態ではあるが、刹那で繰り出される二発目も何とか刀で防ぎ身体への接触を回避した。
「やっとテメェの速度に追いつけそうだ」
八裂は次の攻撃に備えるが、志斎は距離を取った後、再び呼吸を整える
「そんなに血塗れになって尚 立ち続けられるのか」
志斎は服の一部を破ると、その切れ端を掌に刀もろとも巻き付けた。
「タフな奴め」
志斎は手を開いた状態で刀が落ちないことを確認した後、すぐに攻撃に入った。
八裂は敵の刃をしっかりと目で捉えた。
目で捉えたからこそ、思い出した。
始めに感じていた『ヤバさ』を




