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プロローグ
戦乱の世が明け、今人々の常識から戦いの文化が消えようとしている。
まるで戦など無かったかのように、人は平然と毎日を過ごす。
子を育て、農業に勤しみ、疲れた身体に一時の休息を与え、また同じことを繰り返す。
同じことの繰り返しとは生の証、今を生きる人々はこの繰り返しに幸福を感じている。
しかし焼けた原野が広がり、陥落し敗北の傷跡が残る城の数々、地に刺さったままの矢には紅の染みが残っている。
戦いの跡、そして戦いの歴史は消えず残ったままとなっている。
いずれ自然に消えゆく日を待っているのかもしれない
それらと同じように、決して人の手では消すことの出来ない精神の傷や快楽を知った者も存在し、皆生きているという意味では普通の人々と何ら違いはない。
ただ違うのは……
――彼らは戦を忘れようとはしていない
――武器を捨てることが出来ない