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07 書庫

 

 建物の玄関は木の床に石の壁と暖かくなるような雰囲気であった。玄関を通り二つに分岐する位置へと向かおうとすれば突然声を掛けられた。


「これは、これは、私の愛しい婚約者、ルルア嬢。一昨日ぶりですね。お元気ですか?」


 アウレイアは声の聞こえる方へと顔を向けた。そこには金色の輝く髪を持ち、青い宝石のような瞳を持った少年が立っていた。婚約者という単語からこの少年がルルアージュの婚約者のベルン・マキドシュであろう。それから、ルルアージュより、リリアージュが好きなのであろう。そう判断したアウレイアはニコリと笑って返事を返す。


「ごきげんよう、ベルン・マキドシュ様。私は元気ですわ」


 恐らく、彼はルルアージュが通ったので挨拶をしただけのはずだ。よって、アウレイアは挨拶を返し、通り過ぎ、教室を探し始めた。驚いた顔をしているベルン・マキドシュに気付きもせず。


 よくよく考えてみると、授業をするということはたくさんの本を使って授業をすることなのではないか。そう考えたアウレイアは人気のない場所へと行き、転移の魔法を使うとする。転移の魔法はアウレイアの国でも一般的な魔法であった。よって、いきなり授業中にアウレイアが現れたとしても遅刻扱いにされるだけで騒ぎにはならないだろう。そう判断したアウレイアはまずは授業を行っている場所を探すために探知の魔法を行使する。


『探知、座標、書類、降順』


A(アンサー) 座標(43,32,25)』


 たくさんの本がある部屋を知ったアウレイアは今度こそ転移魔法を行使する。


『転移 座標(43、32、25)』


 アウレイアが目を開けるとそこは本棚がたくさんある場所の端であった。周囲を見渡すと、一人の少女と目が合った。少女は茶髪をきっちり二つに分けて三つ編みにしており、メガネをかけていた。手には本を持っており、椅子に座っている為、読書中だったのであろう。少女は突然現れたルルアージュに驚き、両手から本をすとんと落とした。


「そこのあなた、驚かせてごめんなさい。ここが授業の場所でよろしいかしら?」


 アウレイアが質問したのに対して少女は悲鳴を答えとして上げた。


「きゃあ!人がいきなり現れた!!」


「…あなたは『転移』っていう魔法を知らないのかしら?」


 アウレイアが再び別の質問を投げかけたことで少女は意識を取り戻したようだ。


「『転移』?それはどのような魔法なんですか?」


 落ち着いた声でかろうじて聞き取れる声で少女は質問した。


「『転移』は自分の行きたい場所に瞬時に移動する魔法よ。ご存じないかしら?」


「そ、そんな魔法があるんですか!?知りませんでした!私、この学園で最下位から二番目の学力なんです。なので魔法に関してあまり知りません。ただ、見た限り、私の知っている人で『転移』を使う人なんて見たことないです」


「…あまり知られていない魔法なのかしら?」


「そうじゃないですかね?」


 二人で首を傾げて笑いあう。アウレイアはこの少女とは友達になれそうだと感じた。


「あら、そう言えば私、名乗っていなかったわね。私、ルルアージュ・ベデルギスというわ。あなたは?」


 アウレイアが自己紹介をすると少女は笑った顔から表情を強張らせた。


「え、えっと、ルルアージュ・ベデルギス様?」


 名前を呼ばれたルルアージュはニコリと微笑む。残念なことに今の少女からは悪魔の表情に見えた。今、名乗ったら消される。そう確信した少女はごめんなさいと言いながら、立ち上がり、図書室から逃げようとする。


「待って!」


 ルルアージュが逃がさないとばかりに少女の腕を掴んだ。少女は抵抗しながらもできず、涙目でルルアージュが口を開くのを待つ。


「お、お手洗いに行くのに、引き留めてごめんなさいね。ところで、ここで授業が行われてるはずなんだけど、先生はどこにいらっしゃるの?」


 あまりの見当違いで指摘することの多い発言に少女は脱力した。進みかけた体を元の場所に戻し、ルルアージュの方を向いた。


「先ほどは名前を聞いただけで挨拶もせず、すみません」


 少女にはこの目の前の令嬢がそれほど恐ろしくないように感じられた。現にルルアージュは去って行くのを引き留めたものの、罵りはしていない。


「私はミル・ウィスキーと申します。ルルアージュ様と同い年です」


「なんてお呼びすればいいかしら?」


「ふ、普通にミルでいいです」


「では、ミル様。いくつか質問してもよろしいかしら?」


 名前のみでいいと言ったはずなのに敬語をつけてくるルルアージュ。ミルは顔を真っ青にしながら頷いた。このまま私は殺されるんじゃないだろうか。


 一方のアウレイアは質問をしていいかと言った辺りで顔を青くしたミルを心配していた。やっぱり、お手洗いを引き留めたのはまずかっただろうか。そんな考えが頭に浮かぶ。


「えっと、ミル様。お手洗いの方は大丈夫なんですか?」


 ミルはアウレイアの質問に対して小さく大丈夫ですと返した。全然大丈夫なように見えない。百面相をしだしたミルを見ながらも、大丈夫と言う言葉を信用し、質問を始める。


次回は3/20 12:00に投稿します。

読んでいただき感謝です。

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