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048終結と

 二人で冒険仲間のところへ戻ると、もうすっかり傷が治って元気ピンピンのミゼルがラジーに突進した。


「ラジー!よかった!さすがラジー!ワイバーンを討ったんだな!」


その様子を見てアウレイアはほっと息を吐いた。ラジーもミゼルも無事であったことから、全員の顔色は悪くなかった。


「アウレイア!無事でよかった。怪我はない?」


アウレイアが本当に不安だったのだろう、ミルが眉間に皺を寄せて声を掛けてきた。


「心配かけてごめん、ミラージュ。どこも怪我はないよ」


アウレイアがそう言えば、ミルはほっとしたように顔を和らげた。


「…それならよかった。…ちなみに怪我はしたの?」


そう聞いた理由は自分が回復魔法を使えるからであろう。アウレイアは首を横に振った。


「ううん。一回も怪我はしてないよ」


「それはよかった」


ミルはそう言った後、ちらっとオウガストを見た。彼はアウレイアのことよりもラジーのワイバーンの話に興味があるようでこちらを一瞥もせずにラジーを一心に見つめている。


「…気があるくせに、これだから男は」


そう小さく呟き、アウレイアを見れば、彼女はもうそこにはいなかった。どこに行ったと探せば、彼女はラジーのワイバーンの話を興味津々で聞いていた。


「…」


この光景を見て、自分は可笑しいのかとミルは首を傾げる。そこへ、先ほどラジーと話をしていたメディアとシェイラがやってきた。


「はあ、まったく男共は。討伐が終わって報告するまでが依頼なのに、はしゃいじゃって」


シェイラがそう言って軽蔑するような目でラジーの話を聞く仲間を見た。


「あはは、でもみんな無事だったのはよかったよ」


メディアがそう言って微笑む。


「で、ミラージュ。ラジーの補助を完ぺきにこなした影の貢献者アウレイアはどこに行ったの?」


シェイラはそうミルに尋ねた。


「…アウレイア、ですか?あそこに混じっています」


ミルはそう言って、ラジーを中心に円になっている男たちを指さした。シェイラは指さされた方を向くと、そこにアウレイアの紫色の髪が見えることを確認した。


「…え」


メディアはアウレイアが違和感なく混じっていること、楽しそうにその集団にいることに驚いて声を上げてしまう。シェイラは頬を引き攣らせながら口を開いた。


「とりあえず、さっさと解散させて帰りましょう。ここだっていつ何時魔物が現れるかわからないんだから」


正論である。その場の二人はそう思った。


「そこでワイバーンの攻撃を剣でガードだ、からの弾き返し、からの横薙ぎ!」


「さすが!」


「ちょっと、ラジーさん、そろそろ行きましょう!また魔物来て危ない目に遭ったら、誰が治療すると思ってるんですか!」


シェイラがラジーに呼びかければ、ラジーはバツが悪そうに反応して、道中も怪我をしないように帰るという形になった。ワイバーンの亡骸は大きいため、とりあえず討伐部位の尻尾の先をナイフで切り取り、残りは放置であとで冒険者ギルドの人と回収しに来るという形になった。



 「ゴブリン3体、オーク2体、ワイバーン1体の討伐部位の確認終わりました。では、依頼達成ということで金貨2枚を報酬として渡します。あ、集団ですので、崩した方がよろしいですか?」


森からの帰還中に他の魔物と遭遇することもなく、無事に冒険者ギルドに辿り着いたアウレイア一行は依頼達成のための手続きを行っていた。


「あ、お願いします」


受付嬢は金貨を銀貨に両替して袋に入れて渡した。受け取ったラジーは袋の中を確認した。


「ありがとうございます。また、依頼の時はよろしくお願いします」


「いえ、いつもご協力ありがとうございます。また、なにか依頼がありましたら、率先してご紹介いたしますね」


受付嬢はそう言って笑顔で冒険者たちを見送った。


「…完璧にラジーさんしか眼中になかったわね」


「冒険者の強さ筆頭って言ったらラジーだからな。そりゃ、赤札でも眼中にないわ」


シェイラとミゼルがそのようなやりとりをしている中、ラジーは銀貨を数えて配りだした。


「今回は、本当に申し訳ないが、青札の3人には合わせて銀貨15枚ということで事前に契約しているから15枚でいいか?本当は俺の取り分もアウレイアにあげたいくらいなんだが」


そう小さな声で言って銀貨15枚をアウレイア達に出すラジー。アウレイアはミルとオウガストと顔を見合わせる。2人ともアウレイアに任せるとばかりに言葉を発さず、静観していた。


「いえ、15枚でいいです」


アウレイアはそう言ってラジーから銀貨15枚を受け取った。


「ラジーさん、またなにかあったらよろしくお願いします」


「ああ、こちらこそ。よろしくお願いする」


そう言ってラジーを見送った後、ミルが口を開いた。


「アウレイア、よかったの?私たちはともかく、アウレイアは活躍して、ワイバーンの討伐に協力したでしょ?」


「私はいいわ。それより、銀貨15枚だから一人5枚と計算して大丈夫?」


「いや、俺はアウレイアがいたからこそ、ゴブリンを倒せたと思うし、4・4・7枚で分けてもいいと思う」


「…何言っているの、オウゼリア。2人は自分の実力をふんだんに生かして最高の戦いをしていたじゃない。能力の上下はあるかもだけど、貢献度は変わらないし、一人5枚でいいんじゃない?それに、私はお金に困っている訳じゃないし。2人は苦学生なんだからもらっときなよ」


「…確かに、アウレイアはお金に生涯困らなそうだね。でも…」


「じゃあ、2人に恩を売るから、なにかあった時にはよろしくね。ラジーさんにもそんなニュアンスをほのめかしといたし」


アウレイアのその言葉を聞いてさすがにミルもオウガストも何も言えなかった。むしろ、そのように『恩を売る』ことを考えていたことに感嘆した。


「…アウレイアはさすがにあの家の出なだけあるね」


ミルがそう小さく呟いた言葉にオウガストは心の中で何度も肯定していた。



 冒険が終わり、次の朝。アウレイアはいつも通り早起きをして支度をし、暇な時間をティータイムで過ごした。そこで考えたのはユーリファのことである。彼は最近めっきり姿を現さなくなった。一体どこで何をしているのかわからないが、きっと元気にやっているのであろう。


「失礼します」


ドアのノックが響き、ライネルの声が聞こえてくる。アウレイアは紅茶を飲み干し、ティーカップを『亜空間』へと放り投げてどうぞと声を出す。しばらく間を空けて、ライネルが入ってきた。


「おはようございます。ルルアージュ様。やはり身支度は終わってらっしゃいますね」


さすがにルルアージュの行動に慣れたライネルは彼女の姿を眺めた。今日のルルアージュは鮮やかな緑の布をベースがピンクや黄色が花弁のように散りばめられていて、薄くて白い細かな刺繍が施された布が上に覆われ、少しばかり覗いていた。そして、腰にはピンクの布が巻かれている。腰と首がキュッと締まっているため、シルエットも細身でルルアージュにしては珍しくふんわりとした雰囲気を持っていた。


「おはよう。ええ、もう終わってしまったわ。今日の学園の予定はなにかしら?」


ライネルはそこでちらりとドアを見た後に申し訳なさそうに口を開いた。


「ルルアお嬢様。申し訳ございませんが、先に話しておきたいことがございまして。そちらを先に話してもよろしいですか?」


申し訳なさそうなライネルを見て、アウレイアは悪いことでも起きたのかと唾を飲み込んだ。


「大丈夫よ。先にそちらを話してちょうだい」


「ありがとうございます。ルルアお嬢様へ新しい護衛が配属になったのでご紹介したいという話でございます。ご紹介してもよろしいでしょうか?」


この時期に新しい護衛。それは、ルルアージュのことを悪く思っている父親が護衛という名目の監視を置くためなのか、それとも単純に娘達の安全を講じてなのか。知っているのは父親とその護衛のみである。そんなことを考えながらもアウレイアはライネルに許可を出す。その許可を得たライネルは一度部屋を出て、護衛を部屋の前まで連れてきた。


「紹介いたします。今日からお嬢様の護衛へ配属されました、ユーリです」


ライネルに紹介された護衛は優しい夜の色をした黒い髪を一つにまとめ、12歳ぐらいの年齢に見える少年だ。他の護衛と同じ服装だが、華がある。存在が他の人と異なって見えて、アウレイアは妙な既視感を抱えながら瞬きを数度繰り返した。しかし、「彼」は立派な天使だったはずだ。そんなルルアージュの瞬きの速さを見たライネルは首を傾げた。

 ユーリはライネルに見えないようにくすりと大人の笑みを浮かべ、ルルアージュに対して跪き、挨拶をはじめた。


「お初お目にかかります、ルルアージュ様。ユーリと申します。今後お嬢様を全力で守るつもりです。よろしくお願い致します」


彼の笑みにアウレイアは自分の既視感が当たったことを察した。彼がいったい何を考えているのかわからないが、ここ最近姿を見なかったのは、護衛として雇われるためだったのであろう。アウレイアは気を取り直して、口を開いた。


「…ユーリですね。私はルルアージュと申します。これからよろしくお願いします」


「…では、ユーリに下がってもらって、学園の予定についてお話しますね」


ライネルに今日の予定を聞いている間、アウレイアはユーリのことが頭から離れなかった。


「…というように今日の予定はなっております。また、学園での護衛の件ですが、今日から私ではなく、ユーリになりますのでよろしくお願い致します。そこでいつもと変わる点があります。それは、護衛は朝、ルルア様に就き、授業が始まってからはリリア様に就くということになったのでよろしくお願いします」


朝から、ではなく、授業開始から。それは、一体何があってその流れに変わったのだろうか。


「わかったわ」


アウレイアは頭の中で思考を広げながらもにこりと微笑んで返事を返した。


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