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045 vsゴブリン

 一方のアウレイア達は仲間がうまい具合にワイバーン、オークを引き受けてくれたため、ゴブリンと安全に戦える状況が作られていた。アウレイアはミルとオウガストを見た。彼らは顔を青くして震えながらようやく立っていた。仕方ないことである。ワイバーンのあの攻撃は恐ろしく、死を狙うような攻撃であった。ラジーがやらなければ、アウレイアがばれないように防御していた。だが、攻撃をされたのは事実だ。冒険者が死の危険と隣り合わせであるということを彼らは目の前で体験した。その恐怖が拭えないのだろう。


「2人とも、ここにはなんで来ているんだっけ?」


アウレイアは3体のゴブリンを目の前にして、そう尋ねた。


「な、なんでって依頼だからでしょ!?」


ミルが震えた声で答えた。


「私たちはそもそもなんのために冒険者をしているの?」


アウレイアは2人に問いかける。


「…えっ?そりゃあ、強くなるためっていう話だったよね?」


そうミルがアウレイアに話す。アウレイアは大きく頷いた。


「強いって何だと思う?オウゼリア」


「え?俺?…強いっていうのは、ラジーさんみたいになることだろ?」


その答えを聞いてアウレイアは笑った。


「へえ。ラジーさんて強いんだ。どうして?」


思わぬ問い返しにオウガストは戸惑った。


「ど、どうして?えっと、冒険者ギルドで上位に入る実力なんだろ?だから強いだろ?」


これに関してはミルも頷いている。アウレイアはその2人の回答に首を傾げた。


「どうして冒険者ギルド上位は強いの?」


「それは依頼をたくさんこなしてギルドに貢献しているからでしょ?」


ミルがアウレイアのどうして攻撃にイラつきながら答えた。


「…じゃあ、ゴブリンの依頼を永遠にしていて赤札になった人も同じくらい強いってこと?」


「はあ?ゴブリンなんて初期依頼でしょ?そんな人が強いわけないじゃない。もっと上級の強い魔物をぶっ倒したりしている人が強いに決まっているじゃない!それに、ゴブリン放置して話しているのもおかしいでしょ?早く倒しましょう!」


ミルはそう言ってゴブリンを指さした。どうやら彼らは頭がなっていないようで、ぽけーとした目で草木を齧っていた。アウレイアは一瞬冷めた目でゴブリンを見た後、ミルとオウガストを見据えた。


「いい?私が言いたいのはね、強さっていうのは色々あるってこと。ラジーみたいに大剣振ってワイバーンのように人を一瞬で殺めてしまう魔物と渡り合うのも強さ。けれど、どんなにか弱くっても、恐れる心を押し殺して対峙するのも強さ。どんなに悲しいことがあっても決して折れることない心の強さ。いろいろな強さがある。その中でどの強さを手に入れるかは人によりけりだと思うけれど、私はあなたたちが強くなるために応援している。で、その最中に死んだりするのは私が許さない。どんなことがあっても私が守るから、おびえたりしないで前を向いて。私が言いたかったのはこういうこと」


「…アウレイア」


オウガストが感動した目でアウレイアを見つめた。少し、目が潤んでいるように見える。ミルはつんけんした様子ながらも、頬を赤く染めていた。


「…そ、そういうのは、もうちょっと場所を選んでいうべきじゃない?」


「そうだったかも。じゃあ、ゴブリンを倒しましょう。あなたたちは2人で1体。私は2体を、でいいのかな」


アウレイアがそう尋ねると、オウガストとミルはお互いに顔を合わせて何か言いたげにアウレイアを見つめた。アウレイアがん?と首を傾げれば、オウガストが口を開いた。


「アウレイアのさっきの言葉を聞いて、わがままを言いたくなった。聞いてくれるか?」


オウガストは真剣な目でアウレイアを見つめた。アウレイアが縦に首を振ると、今度はミルが口を開いた。


「3体やるから、アウレイアは手を出さないで」


「さ、3体!?」


アウレイアは思わず聞き返した。ゴブリンは全3体。3体をオウガストとミルで相手する。つまり…。


「わ、私の分は残してくれないの?」


「そこ?」


1人1体を担当すれば、手が空いてしまう人が出ないのに。アウレイアはそう思いながらミルを見つめた。


「いやいや、アウレイアは守る係でしょ?戦う係は私たちに任せて。ね?オウゼリア」


「あ、ああ。任せろ」


「オウゼリアまで…。まあ、別にいいか。じゃあ、2人のお手並み拝見ってことで。私は見守ってるね。前回教えた『周辺探知』を使えれば、3体でも安全に戦えると思うから、使ってみるのも一手だと思う」


「できそうだったら、やってみるね」


ミルはそう言って、ナイフを握りしめて、詠唱を静かに開始した。頭の能天気なゴブリンたちはそれに気が付いていない。ミルが詠唱したのは『アースボール』だ。地面の土を集めて塊にし、敵にぶつける魔法である。ミルがゴブリンの頭に問答無用で『アースボール』をぶつけると一体が大きくのけぞって倒れた。

その様子にゴブリンは漸く今の現状に気が付いた。確か、仲間と餌探しに来た気がすると。そこで慌てて周囲を見回せば、人間の女と男がこちらに向かって刃物を振ろうとしていた。ゴブリンたちは自分の手に持っているもので命の危機を防ぐ。

棍棒の釘でうまい具合にナイフを防がれたミルは心の中で舌打ちをしながら、再びナイフを振りかざす。ナイフの刀身は見事に棍棒の木を捉えて通過し、ゴブリンの額を軽く切るに至った。顔に激痛の走ったゴブリンは呻きながら、棍棒を振り回し始めた。その様子を冷静に見て、ミルは数歩後ろへ下がり詠唱を始める。今度は先端の鋭い『アーススピア』だ。これでとどめを刺す。その思いを込めてミルは一つ一つ正確に詠唱していく。

その時だ。オウガストの声が聞こえた。

「ミラ!危ない!」


ミルはばっと後ろを振り向くと、自分の後ろでゴブリンが棍棒を振りかざしているのを目撃し、頭を手で覆った。もはや避けるのは困難である。そう思ってミルは頭を手で覆い、背中を向けた。


 一方のオウガストは初めから剣を構えてゴブリンに挑んだ。初めは順調にゴブリンを追い込んでいったが、次第に頭の中の何かがいかれてしまったのか、相手のゴブリンは遊ぶような感じで楽し気に棍棒を振るい始めた。そこからオウガストはずっと防戦になってしまった。ゴブリンの棍棒の釘にうまい具合に剣を当てる。もし、スパッと棍棒を切ってしまえば切られた棍棒の先端が自身に向かってくる可能性があるからだ。そうすれば、自分も怪我し、相手に隙を与えてしまう場合がある。

…アウレイアならどうであろうか。オウガストはちらっとアウレイアを見た。彼女は少し離れたところでぼうっとした顔でどこかを眺めている。もし彼女ならば、自分では思いつかない奇天烈な方法でゴブリンを倒すであろう。ただ、今はそのようなことを考えている暇はない。ゴブリンの出鱈目な攻撃を受けながらもオウガストは思考を巡らす。ふと、アウレイアの言葉が頭をよぎった。


『前回教えた『周辺探知』を使えれば、3体でも安全に戦えると思うから、使ってみるのも一手だと思う』


…一か八か。いや、恐らく集中できずにやられてしまう。オウガストはゴブリンのリズムを崩すために敢えて誘いに乗って棍棒を体へと近づけた。好機とばかりにゴブリンが大きな声で叫びながら飛び込む。そこで、オウガストは上半身を後ろへ倒しながら、体重をゴブリンの方へ傾けた。大きく腕を上げ、無防備になったゴブリンの胴へと剣を叩き込む。同時に自分の胸に棍棒が当たる。


「ぐっ」


痛みに耐えながら、剣を振りぬけば、ゴブリンは地に突っ伏した。それを感情を込めずに見つめ、手で胸を押さえた。手を見れば、赤くなっていた。釘で傷つけられて、血が出たのだろう。このような痛みは前にアウレイアの文句を言っていた貴族に殴られた時以来だ。

 あいつらより、ゴブリンの方が痛い攻撃を加えれるのか。

 オウガストはそう思って微かに笑みを浮かべた。ふと、大きく透明な泡がこちらに飛んできているのに気が付く。その泡はふよふよと漂って、オウガストの胸を包み込んだ。その泡が消えると、胸の痛みも出血もなくなっていた。その方向を見れば、アウレイアがこちらを見ていた。彼女はじっとオウガストを見つめた後、オウガストの背後を指さした。


「…!?ミラ!危ない!」


ゴブリン一体と交戦中のミルが背後から別のゴブリンに攻撃されそうであった。オウガストが今から向かってもその攻撃を止めることはできない。彼は肩を強張らせてミルが攻撃されているのを見ているしかなかった。

 だが、彼は目でしかと見た。ゴブリンの背後の攻撃が当たる瞬間にピタッと止まった。


「…は?」


オウガストにはなにが起きたのか全く理解できなかった。それはゴブリンも同じようで、首を傾げながらもう一度棍棒を振りかざす。が、やはりミルに当たる寸前で棍棒が止まってしまうようだ。オウガストはミルを見つめる。ミルは攻撃が自分に効いていないことに気が付いていないのか、未だに手で頭を押さえている。ゴブリン達はムキになったのか、ミルを棍棒で叩こうと何度もミルに向かって棍棒を振り下ろす。

 蹲るミル。叩く2匹のゴブリン。もはやいじめ現場である。唯一救いなのが、ミルが傷ついていないことである。オウガストはミルに声をかける。


「ミラージュ!」


ミルは名前を呼ばれてはっと顔を上げた。すると、自分に棍棒が向かってくるのが見えた。


「きゃああああああ!」


ミルは大きな叫び声を上げ、再び頭を覆い、元の体勢に戻る。そして、ミルは衝撃に耐えるが…来ない。


「…あれ?」


そう思い、再び上を向けば、やはり棍棒がミルを襲い掛かっている。


「やっぱりぃぃぃぃぃぃい!」


ミルは再び頭を抱えて縮こまる。しかし、やはり痛みは感じない。


「ど、どうなっているの!?そ、それよりオウゼリア!見てるだけじゃなくて、助けて!」


「あ、ああ。悪い」


不思議な出来事に思考を停止していたオウガストは漸く剣を片手に動き始めた。まず、ミルの背後にいるゴブリンへと切りかかる。ゴブリンはミルに夢中のため、後ろにいるオウガストに気が付かない。そのため、一撃で倒すことができた。

もう一匹のゴブリンは目の前で味方が地に伏せるのを見て、攻撃の対象をミルからオウガストへと変えた。闇雲に棍棒を振り回せば、敵は困ったように避けていく。ニヤリと笑みを浮かべるも、もう一度棍棒を振り回すことはできなかった。一体何が起きたのか、彼は理解できずに意識を失った。


前話の本文が2重になってしまった件ではご迷惑をお掛けしました。修正致しました。

教えてくださった方々、本当にありがとうございます。このようなことのないように今後は注意深く見直していきたいと思います。読んでくださる方は、今後もよろしくお願いします。

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