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041 剣学2/2


 レイアーシュの指示に令嬢たちは動きを変える。なお、剣術なんていうものに力を注ぐつもりのない令嬢は楽しく会話をしながら剣をそえ合っている。


「どうぞ、剣の花束ですわ」


相手の令嬢の肩に優しく剣をそえる。


「まあ、嬉しいわ。こちらもお礼よ」


相手も同じように肩に剣をそえる。

この不思議な光景の中、リリアージュの相手をする令嬢だけが歯を食いしばっていた。聖女でありながら必死に練習をこなす健気なリリアージュに、適当に相手をして欲しいなどと言えるわけがない。こちらも本気で行かなければならない。


「い、いつでもかかってきてください!リリアージュ様!」


「ありがとうございます、フェリシア様。では、参ります!」


リリアージュはそう言って剣を構えながらフェリシアに向かっていく。丁寧にかつ素早く。これが騎士団でリリアージュが言われたことであった。女性であるということは、力業では男性に勝てない。なら、技と速さで勝つのが最善という考え方であろう。リリアージュはそのように考えながら剣を丁寧に相手に向けた。

そのリリアージュの懸命な姿を男子たちは眺め、ほうっと息を吐き、手足を止める。その瞬間、カインズ講師から打撃を与えられる。

一方でルルアージュは流れでレイアーシュ講師と組むことになった。レイアーシュはにっこりと微笑んでルルアージュを見つめる。


「ルルアージュさん。では、いつでもかかってきてください。手加減はもちろんしますのでご安心を。先ほどの型をこちらに向けてみてください」


「…はい」


そう答えつつ、アウレイアはどのように動けばいいのか考える。そして、胸の前で構えて、猪のように、けれどそれほど全力を出さずに突進した。

 ルルアージュの突拍子のない攻撃にびっくりしたレイアーシュだが、落ち着いたように構えなおし、ルルアージュの剣を優しく薙ぐ。

 アウレイアはそこで剣の鍔をレイアーシュの剣先に引っ掛けて、剣を離し、飛ばされたように振る舞う。飛ばされた剣の行方を目で追いながら、レイアーシュに視線を向けた。


「さ、さすがですわ…」


そう驚くルルアージュにレイアーシュはなにか違和感を持った。そもそも自分が狙ったのは剣の鍔ではなくて、刃である。しかも真ん中に剣を当てたつもりであるのに、どうして鍔へと当たるのであろうか。いや、偶然ルルアージュが避けて鍔に当たったのであろう。レイアーシュはそう考えて、ルルアージュに向き直った。


「ルルアージュさんは構えの時に脇が少し締まっていません。なので、もう少しそこを意識してみてください」


「はい。ありがとうございます」


「ルルアージュさんは今回が初めてということで、よく健闘していると思います。少し、休憩していてください。私は他の令嬢を相手にしてきます」


レイアーシュはそう言って他の令嬢たちの元へと向かう。先ほどのルルアージュの様を見てこっそりと笑っていた令嬢たちはさっと顔を背けて遠くへ向かおうとする。レイアーシュの顔はにこりとした表情であったが、目は笑っていなかった。

 そんな空気を知らずにアウレイアはレイアーシュの言う通り素直に休むことにした。なぜなら、見た目はルルアージュ。彼女が休みの言葉を受け取って、やります!ではさすがに怪しまれそうだからだ。もう既に若干一名に怪しまれている気がしなくもないが。そう考えながらルルアージュは壁際に立つライネルをちらっと見る。そして、なぜか目が合う。まるでこちらをずっと凝視していたかのように目が合うライネルにアウレイアは驚いてパチパチと瞬きを繰り返す。その様子を見ていたライネルはくすりと微笑んだ。その様子を見てアウレイアはますます訳がわからなくなり、首を傾げる。


「ベルン!なかなかやるな!」


王子の威勢のいい声が聞こえてそちらへ目を向ける。ベルンと王子が打ち合っているようであった。剣の弾き合う音が響き渡る。本格的な試合をしているようだ。アウレイアはじっとそれを見つめる。少し王子の方が有利であるのが彼らの表情から読み取れる。王子は勝気な表情なのに対し、ベルンは顔を顰めて厳しそうな顔をしている。案の定、すぐにベルンが集中力を乱し、王子に剣を飛ばされてしまった。


「っ!…さすがです。殿下」


ベルンは悔しそうにしながらも王子に賛辞の言葉を贈る。


「では、次は…」


カインズがそう言って次の打ち合いの組み合わせを告げている。


「では、令嬢の皆さんはここまでにしましょう。各自、今日の問題点を洗い出して次の授業に挑んでください。お疲れ様でした」


レイアーシュがそう言って剣術の授業を終了させた。終わった令嬢たちは『洗浄』の魔法を自身へかけて更衣室へと向かっていく。ルルアージュはその令嬢たちの最後尾に付きながらも、途中の角でこそっと曲がった。そして、誰もいない教室へ入り、『着替え』を使い、あらかじめセットしておいた先程着ていたドレスへぱっと着替える。昼休みの始まり前なので次の授業はしばらくない。よって、わざわざ更衣室で着替えるのは面倒である。


「…まだ少し時間はあるし、ご飯でもするか」


小さな声でアウレイアはそう呟いて『転移』で湖畔へと移動する。いつも昼にダルそうに迎えてくれるユーリファが今日はいなかった。首を傾げながらも、アウレイアは一応彼の分のご飯を用意して自分の食事を開始する。今日はいつもよりは悠長に過ごすことができないため、手短にオムレツとベーコン、トーストを作り、食べる。オムレツにはジャガイモと玉ねぎを加えてあるため、ほくほくで食べ応えがあった。卵のとろりを感じた後に、ジャガイモのほくほく、玉ねぎのシャキシャキが続々とやってきて、食感に飽きない食べ応えであった。

 昼食を満足に摂った後、アウレイアは休む間もなく皿を洗い、『転移』で元の空き教室に戻る。人がいないのを確認して教室から出て、食堂へと向かった。


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