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040 剣学1/2

 お昼前に剣学の授業がある。アウレイアはこの剣学の授業を前回休んでしまったため、受けられずにいた。そのため、今回が初めてでとてもワクワクしている。ライネルから朝に渡された剣学のための服に着替える。全員がそれぞれ個室へと入っていく。アウレイアもそれに倣って個室へと入る。個室には着替え専用の使用人が1人おり、アウレイアは彼女に着替えを任せた。アウレイアは白いスーツの動きやすいような服を見て、満足そうに頷いた。

 着替え終わり、剣術室へと向かう。剣術室は部屋というより、むしろ屋外で地面が茶色い土で覆われ、頑丈そうな石の壁に囲まれている。アウレイアはきょろきょろ周囲を見回しながらもみんなが集まっているところの一番後方を陣取る。集団の先頭付近を見れば、先生らしき人が2人いる。1人目が青い髪の男の先生だ。がっしりとした肉体とワイルドに生えている髭が男らしさを強調している。2人目は女性だ。薄紅色の髪を後ろで結い上げ、お団子状にし、真っ赤な赤い瞳は妖艶に煌めいている。すらりとした体に凝縮された筋肉が存在していることをアウレイアは見抜く。


「はい、ではいつものように男女分かれてペアで素振りを開始してください」


先生の言葉に生徒たちが動き出す。アウレイアがなんだなんだと眺めているうちに生徒は男子、女子それぞれでペアを組み始め、向き合って素振りを始めた。


「あら、ルルアージュさん。お初にお目にかかります。私はこの授業の講師、レイアーシュ・キエティエと申します。ルルアージュさんがこの授業に顔出ししてくれるなんて初めてね。ペアはきれいに決まってしまったし、私と組みましょうか。素振りの仕方はわかるかしら?」


ルルアージュに気が付いた女性の先生が彼女に近づき、木の剣を渡した。


「お、お初目にかかります。ルルアージュと申します。剣を握ったことがないので素振りはわかりませんわ」


まさかルルアージュがこの授業を一度も出ずにいたとは、と衝撃を受けながらも先生に向かって当たり障りのないことを言っておくアウレイア。渡された剣を鉛筆のように持ち、素人感をアピールする。


「そんな持ち方は初めて見たわね…。剣はこう持つのよ」


レイアーシュは優しく微笑みながら、ルルアージュの手を動かして握り方を教えていく。豊満な胸がルルアージュの背中に当たる。ルルアージュは男子が羨むような状況の最中、至って真顔でレイアーシュの教えを聞き取っていく。剣の持ち方はアウレイアが普段握っているのと変わりなかった。


「剣は基本叩き切るという風に使うわ。力を使って肉を断つ。そのため、基本は胸より上で構えるのよ」


そう言って、レイアーシュは基本の型をルルアージュに見せた。ルルアージュは大きく頷いてレイアーシュの真似をする。こんな形から始まる剣術は前世も含めて見たことがない。

 アウレイアが使う剣術は下段構えが基本だ。基本的に下段は守り、上段は攻め、の構えとして認識している。よって構えは下段から習うのが基本だ。下に下げて剣を振り上げる練習から始めることにより、相手の攻撃を受け流すことが身につく。そして、それができると今度は受け流して上段から相手を攻めることができる型を習う。

 よって、胸より上から始まる剣術というのは初めてである。新たな型にワクワクしながらアウレイアはレイアーシュの真似をする。そっくり真似るルルアージュにレイアーシュは感心した。


「すごいわね。ルルアージュさん。最初からそっくり真似られるなんて才能あるわ。剣術を習っていた方たちはわからないけれど、初めて剣術に触れる令嬢ではあなたが初めてよ」


「それは…ありがとうございます?」


「ルルアージュさんはよくできているし、今みんながやっている素振りの練習をちょっとやってみましょうか。構えの状態から剣を右に持っていって横に薙ぐ。これが基本の攻撃です。右ができたら今度は左。出来たら連続でを繰り返してみてください。剣はこう動かしてね。その際に足は右からの場合は左足を前に出すこと」


「は、はい。わかりました」


一気に捲し立てられるように言われたが、アウレイアはきちんと理解した。要は素振りをしろということである。


「私は他の令嬢たちを見てくるから何かあったら呼んで頂戴」


そう言って、他の人のところへ向かっていく先生を見ながら、アウレイアは自分の剣の持ち方を見つめた。両手で手の甲に水平に持つという剣の持ち方がどうしても自分には向いていないようである。アウレイアは剣を片手で包丁握りに直す。一振り軽く下に薙ぐ。


「…『詳細』」


『詳細

魔法刻印 頑丈

     質量軽減

最近使用者 一日前 1人目 アウール・レガシー

          2人目 デルモンド・キチアリベ

          3人目 レイアーシュ・キエティエ

近日使用者 二日前 1人目   ・

                ・

                ・

         ・

         ・


 頑丈・質量軽減共に一日に一度、レイアーシュ・キエティエ又はカインズ・オリバーが書き直している。質量軽減の値は1/30』


道理で軽いわけであるとアウレイアは感じた。木にしては軽すぎるその剣はアウレイアにとっては握ったけれど、実感が湧かない重さになっていて、とても気持ち悪い。令嬢たちが軽々と木剣を振るっていることから、彼女らに負担をかけないようにするためであるのかもしれない。また、男性の使用者がいることから、男性の剣に触れたことがない完璧な温室育ちもこちらを使っているのかもしれない。ちらっと男子の様子を眺めれば、木の剣を振るっている人と刃を潰した剣を振るっている人の二種類がいる。どうやら、王子やベルンなども鉄剣を使用しているようだ。

 『詳細』で出てきた名前のカインズ・オリバーはおそらくあの青い髪の男の先生のことであろう。

 アウレイアは頷いて剣を再び振り始める。ひたすらにそれを繰り返していると、自分が集中していることに実感する。冷たい空気に自分の息、剣を振る音だけがアウレイアの耳を支配する。ふと、そこで我に返る。これは授業である。周囲を見れば、みんな剣を振るっている。いや、令嬢たちは手を抜いている者が多い。そんな令嬢の中でもリリアージュは熱心に剣を振っている。軍と一緒に剣術の練習をしているだけあって、その太刀筋は他の令嬢よりも遥かに鋭い。

ふと、リリアージュを見つめていると誰かに睨まれた気がした。その方向を見れば、王子であるルロストの姿がある。王子である彼が人を睨むようなことをするのであろうか。そう思いながらルロストを見る。男子の剣は人によって差が大きいが、ルロストはその中でも群を抜いていた。一つ一つの動きがしっかりしており、王道に則っているのがよくわかる。精錬された動きとまでは行かないが、効率よく動くことを意識しているのがわかる。


「ルルアージュさん?よそ見してないで剣を振りましょう」


どうやら、王子を見過ぎていたようだ。視線を戻せば先生が笑顔でこちらを見ている。


「…それとも、もう飽きましたか?」


真意の読めない顔で問うてくるレイアーシュにアウレイアはにこっと笑みを作って、いえ、と答えた。その様子をしばしば変わらぬ顔で眺めていたレイアーシュはこほんと咳ばらいをして大きな声を発する。


「では、そろそろ打ち合いに入りましょう。お互いのペアに順番に打ち合いをしてください」


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