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037 『周辺探知』

今回は少し長く5000字を超えております。

 舞踏会のことは置いておいて別の話題に移ったアウレイア達3人。


「そう言えば、前に『シティーレアの部』で魔力についての話が出たの覚えてる?」


ミルに唐突に言われ、アウレイアは思い出せずに視線を彷徨わせた。


「ああ、あれだよ。アウレイアが長ったらしいアススススス…みたいな鉱石がどうのこうのって一言も噛まずに言い切ったやつだ」


オウガストがヒントの欠片も出なそうな助言を言った。


「ああ、合アステラチルミンヘルグラミン魔力反応石のことね」


「アススススス…でよくわかったね、アウレイア」


思い出したように顔を明るくして口を開いたアウレイアにミルが冷めた目線でツッコむ。隣でそのツッコみを聞いたオウガストが恥ずかしそうに下を俯いた。思い出したことでいっぱいいっぱいだったアウレイアはミルのツッコみは聞き取れずにいた。数日前の出来事なのに思い出すのにこんなにかかるなんてと自分の脳の老化具合が気になるな、なんて能天気なことを考えながら、ミルに尋ねる。


「そんなこともあったね。覚えてるよ。で、それがどうかしたの?」


「そ…その、その時にアウレイアは魔力量がとても多くて、魔力の波長が合わなくても光の最大出力を上回って、一周し、光が出なかったと言ってたじゃない?」


アウレイアはそんなこと言ったような、言っていないような、と首を捻りながら疑問形で「うん?」と答えた。それを見たオウガストがおい、と言わんばかりに引き攣ったような顔でアウレイアを見ている。だが、どうやらミルにとって、アウレイアの反応は重要でなかったらしい。ミルは歩く自分の足を見つめながら話を続けた。


「魔力量ってもう変わらないの?」


そう尋ねるミルをオウガストは感心したように見つめた。オウガストは伯爵家の出だ。この国では爵位が高い貴族ほど強い魔力を有するという結果が出ている。平民でも身分の低い貴族でも極稀に魔力量の多い者が生まれることがあるが、それ以外はいない。血こそが魔力量を決めるものという認識が常識にあった。ミルは男爵家のため、魔力は最底辺層に当たるのだろう。

ミルがなぜこのような問いをしたのかわからないが、何かに行き詰ったのだろう。その行き詰まりを逃げずに解決しようとする、そのミルの様子にオウガストは感心したのだ。


「うーん、残念ながら魔力量は天性によるものと、生まれて5年でどれだけ魔力を使ったかで決まっちゃうんだ」


「…そっか。…生まれて5年?」


「そうそう」


なにげないように言うアウレイアをミルとオウガストは驚いたように見つめた。


「アウレイアの言う感じだと、生まれて5年で頑張れば、王族の魔力量を超すことも可能なのか?」


オウガストが思わず尋ねれば、アウレイアはこくりと頷いた。


「まあ、生後0か月とかで魔力を使わせるのも無理だし、一般的に有名ではないから、誰も実践しようとは思わないよね。で、ミラージュはどうしてそんなことを聞いたの?」


なんでもないように言って話を変えたアウレイアに二人は思考を停止させた。しばらくして、もう5歳を過ぎている自分たちには関係のない話かと整理をつけた。


「えっと、興味があっただけ」


ミルは淡々とした口調でそう答えた。その目が少しだけ泳いでいることにオウガストもアウレイアも気が付いたが、触れないことにした。本人が言いたくもないことを無理に聞くのもよくないであろう。


 そのまま話を変えて歩いていると、森が見えてきた。北の森は東の森とはまた違い、木々の色は深く、草花は東の森ほど生えてはいなかった。


 そんな森でアウレイアはさっそく魔物がいるのに気が付く。


「ミラージュ、オウゼリア」


そう言うと、二人はわかったかのように魔物?と呟き、身構える。


「さっそく私たちの獲物がかかったみたい。ゴブリンね」


アウレイアがそう茶化して言うと、ミルとオウガストは微妙な顔をした。怖い森のなかを依頼のために緊張しながらも歩くという行為をこれ以上しなくて済むという喜びと、これから魔物を倒すという行動に出る必要があるという緊張が混ざり合ったからである。

 二人のそのような表情を見つめて、アウレイアは再び口を開いた。


「魔物を倒すことによって、剣の使い方や動き方を二人とも、確実にものにしてきているわ。だから、大丈夫。自信もって」


そうアウレイアに言われ、二人はなぜか自信が沸き上がった感じがした。明らかに変化した二人の表情を見てアウレイアは大きく頷いた。



 今度のゴブリンも釘がたくさん刺さった棍棒を片手に歩いていた。どうやら単体のようである。その様子を見てアウレイアは二人にサインを出した。それを見た二人が頷いて行動を開始する。まず、オウガストがゴブリンに近づく。ゴブリンがオウガストの足音でオウガストに気が付いた。そこから、ゴブリンはオウガストに向かっていき、棍棒をオウガストに向かって愚直に振り下ろそうとする。オウガストはそれにたじろぐも、剣を構えて衝撃に備えた。パキッという音がしてオウガストは上を見る。すると、ゴブリンの棍棒が真っ二つに折れていた。オウガストは剣が衝撃に耐えられるように棍棒に対して平らな面が当たるようにしていた。まさか、それで棍棒が折れるとは。そう驚いてしまう。


「オウゼリアどいて!」


ミルの言葉でオウガストは我に返る。ふと、ゴブリンを見つめれば、折れた棍棒でなお、自分に攻撃しようとしている。慌てて横へずれれば、ゴブリンが、もともと自分が居た場所に棍棒を振っていた。もし、ミルが叫ばなければ、自分はどうなっていただろうか。

 立ち尽くすオウガストの横にミルが走って行き、ゴブリンの首を狙って短刀を振るった。グギギギ…と苦しそうな声を出してゴブリンは地に倒れ、核を残して消滅した。ミルはゼー、ゼーと呼吸を乱しながらその様子を眺め、ゴブリンが消えたと確認したところで、オウガストをギラリと睨んだ。


「ちょっと!!!オウゼリア!!死にたいの!?」


確実に今のは自分が悪かった。オウガストはそう思った。思わぬアクシデントに思考を停止させてしまったことで、自分が命の危険に晒された。それはミルのお陰で助かったものの、今度は自分のミスでさらに思考を停止させた。


「ご、ごめん。咄嗟のことで動けなかった…」


「いやいや、自分の危機感もわからないの?」


ミルにそう詰め寄られ、オウガストは何も言えずに下を向く。


「…ミラージュ」


ふと、アウレイアがミルに声をかける。


「一体、何?アウ…」


ミルが勢いよく振り向くと、自分の目の前に枝先が向けられていた。あと少し動けば目に刺さってしまう。その恐怖と恐ろしさにミルは停止する。その剣を構えているのはアウレイアだ。彼女はミルを見つめて笑顔でこう言った。


「いつもみんな油断している。こうして木の枝を背後に向けられたとして、気づかない。ミラージュはこの状況で自分が言ったようにまともな判断を下せるの?このあと、どうすればあなたは助かるの?」


ミルは瞳をアウレイアに向けた。その瞳は揺れていて、動揺を物語っていた。アウレイアは同じ表情のまま木の枝を静かに下げ、口を開く。


「あなたがオウゼリアを心配してかっとなってしまったのはしょうがないと思うけど、それはあまりにもオウガストにとって辛いんじゃない?自分にできないことを注意しても全くもって説得力がない。まあ、オウゼリアもかなりダメだったけど」


「「うっ」」


アウレイアの言葉に二人とも胸を押さえる。そんな二人の様子に気づかないまま、アウレイアはゴブリンの核を拾い上げて呟く。


「まあ、丁度いいのかも。今から『周辺探知』を使う練習をしよう。というわけで一度…あれ、二人ともどうしたの?」


落ち込んでいる様子の二人にアウレイアはようやく気が付いた。


「…オウゼリア。私が悪かった。ごめん」


「ああ、俺も悪かったんだ」


ミルとオウガストが互いに謝りあう。アウレイアはその様子を見ながら、満足したように頷いた。


「では、和解をしたところで、さっそく『周辺探知』の練習ね!!じゃあ、二人とも手を出して!」


そう言われ、ミルとオウガストは首を捻りながら手を差し出す。アウレイアは二人の手を取る。二人は驚いたようにアウレイアを見つめる。


「『魔力可視化』」


アウレイアがそう唱えると、ミルとオウガストの視界に変化が生じた。木や空気、草木、人が薄い紫色に覆われているように見える。


「!?これは、一体」


オウガストが驚いたように周囲を見渡す。


「ど、毒ガス!?一体何がどうなっているの!!!」


ミルがびびったように腰を抜かした。その様子を眺めてアウレイアは笑ってしまった。


「ちょっと、アウレイア!笑わないで!」


ミルがそう言ってアウレイアを睨んだ。耳が赤くなっている。


「ごめん。毎回こんな感じでみんな驚くから」


「毎回?アウレイアは他の人にもこの魔法を使ったことがあるの?こんな変な魔法を?」


ミルが目を丸くさせながら立ち上がる。アウレイアは前世のことをついうっかりとしゃべってしまった。慌てて誤魔化すように口を開く。


「えっと、見たことがあるっていう感じかな?私もこれを教えてもらった時には驚いて笑われたし。で、この魔法は魔力を目で見る魔法なの。魔力が紫色で見えるようになるものよ。魔力は物質のみに宿るんじゃなくて、そこら中に溢れかえっているのがわかるでしょ?」


「もし、これが魔力ならそこら中に溢れかえっているということになるな」


アウレイアの言葉に同意するようにオウガストは呟く。


「二人とも、なにか習った魔法を使ってみて」


そう言われた二人は顔を見合わせながら、ファイヤーを唱えた。ファイヤーを唱えた途端、自身の体から紫色の光が放たれていったのがわかった。


「本当に魔力なんだ」


ミルが驚いたように呟いた。


「そう、魔力は空気にも存在する。万物のあらゆるものに魔力はそんざいする。だから、それを理解してもらうために開発されたのが、『魔力可視化』なの。そして、魔力を通じてどこになにがあるかを感じ取ることができるのが『魔力探知』。その魔法を習得する前にまずは体内の魔力でなく、体外の魔力を使えるようにならないとね」


「体外の魔力?」


ミルが変な顔をしてアウレイアを見つめた。


「そうそう。不思議なことにみんな、なぜか体内の魔力をメインに使ってるでしょ?外にこんなに魔力があるのに、自分の中でだけで魔法を完結させて、結局大した魔法を使えずに枯渇して生命の危機に至っているでしょ?私から見たら自殺行為にしか…」


「アウレイア。それは、私たちは頑張ればもっと大きな魔法を使うことができるということなの?」


ミルが真剣にアウレイアに尋ねた。アウレイアはその顔に答えるようにしっかりと頷いた。


「そう。体外の魔力を使えば大抵の魔法を行使できる。今から、それを教えるね」


本当?とミルが呟き、オウガストがまじかよ…と驚いたように呟いた。


「さあ、二人とも手を出して。私の手を受け取ったら私の魔力を二人に送る。だから、二人はそれを受け取ってみて」


二人が首を傾げながらも手を出したので、アウレイアが二人の手を握り、静かに息を吐いた。


 すっと、なにか暖かいような冷たいような不思議な感じが体の外を這う。ミルはそれが少し慣れずに震える。


「二人とも、魔力を体の中へ誘導して」


アウレイアにそう言われたものの、ミルはどうしたら受け入れられるのかわからない。隣のオウガストも同じようで困った顔でアウレイアを見つめている。


「えっと、魔力が体に入ってくるのを想像して」


言葉が足りなかったかと、付け足してアウレイアが言葉を発した。二人は言われたとおりに体が魔力を吸収している感じを想像した。すると、自分の力が漲る感じがした。


「っこれは…?」


オウガストが不思議そうに自分を見つめる。


「よし、しっかりと魔力を受け取れたみたい。じゃあ、今度は外の魔力を意識してみて、そして、自分がそれを吸収する姿を想像して」


アウレイアにそう言われ二人は外の魔力に意識を集中してみた。先ほどは感じられなかった魔力のような感じが空気のように漂っているのを感じ取る。それを取り込むイメージを浮かべる。すっと、さらに力が湧く感じがした。


「二人ともその調子。今度はそれを外にゆっくり広げてみて」


アウレイアに言われた通り、ミルは今度魔力を外へと広げてみる。自分から円状に魔力が広がって行くのを意識すると、アウレイアが自分の真後ろで木の枝を拾い、自分を殴ろうとしているのを見ることができた。ミルは慌てて左へとずれた。同時に集めた魔力が霧散していくのを感じた。


「ちょっと、アウレイア!?なにしてるの!?」


自分の横を枝が通っていくのを見て、ミルは叫んでいた。ミルの内心も知らずにアウレイアはにこにこと口を開いた。


「そう!さすがミル!それが『周辺探知』よ。オウガストも無言で後ろから石を蹴ったら避けてたし、二人とも習得したね。一度使ったから、あとはこの『周辺探知』という言葉を唱えれば自分の腕の長さ2個分の円の中を探知できるよ。体内の魔力がなくなったら外から持ってくれば枯渇しないから。ただ、持ってこれる魔力も個人で上限があるから、気をつけてね」


ミルは試しに『周辺探知』を使ってみる。魔力が体外から体外へと勝手に循環しているのがわかる。すごい。そう思った。暗く見えていた木々が少しだけ明るく見えた。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

前回の話の内容がもう少しあったのですが、つけ忘れていたので、この話の最初につけさせていただきました。

よって今回5,000字越えとなってしまいました汗

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