表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/56

036 ゴブリン討伐

 放課後、屋敷の戻ったベルンに護衛が申し訳なさそうに声をかけた。不機嫌そうなベルンに香水を渡す。


「…この香水はなんだ?」


片眉を上げて、香水を片手で持って尋ねるベルン。護衛は視線を逸らしながら答える。


「ルルアージュ様からの香水でございます」


その瞬間、ベルンは香水を床に落とす。とっさに反応した護衛が香水に手を伸ばし、ぎりぎりで受け止めた。それを気にせず、ベルンは護衛に聞き返した。


「また、送ってきたのか。これで何個目だ?」


「7個目でございます」


それを聞いたベルンはフンと鼻で笑った。


「湯を浴びてくる。香水はどこかの部屋の隅に適当に放っといてくれ」


そう言われた護衛はお辞儀をしてベルンが去ってから、ルルアージュからもらっている香水をいつも保管している場所へと持っていった。


 「小国1つ買えてしまう香水か」


ベルンは湯を浴びながら、香水のパッケージを思い出す。ルルアージュの弱みを握った確信を得た。


 日は変わり、オウガスト、ミルと2回目の冒険を約束した日。アウレイアはご機嫌で馬車へと乗った。そんな様子の彼女にライネルは疑問に思いながらも質問をするという水を差すような真似はしなかった。そのまま、流れるように馬車は進み、にぎやかな街の片隅でアウレイアは降りた。


「ルルアージュ様。くれぐれもはしゃいでご友人に迷惑をおかけにならないように気をつけてくださいませ」


ライネルはご機嫌な様子のルルアージュに貴族とばれないように気をつけてくださいと遠まわしに念を押しておく。アウレイアはライネルにそう言われ、自分の感情が表に出ていたことに気づき、心の中で深く反省をしながら、待ち合わせの場所へと向かうのだった。ライネルはそれをじっと見つめ、ルルアージュの姿が見えなくなるまでそれは続いた。



 前回同様、さっと魔法で着替えを済ませ、広場に行くと、もうオウガストとミルは来ていた。


「ごめん。遅れたみたい。ミラージュ、オウゼリア。先週ぶりね」


そう言えば、前回と同じ服装の二人はお久しぶりと口を開く。それを機に三人は歩き始める。


「今日は前回、依頼ついでに行った魔物の討伐依頼をしたいと思うんだけど、どうかな?」


歩きながらアウレイアが問う。


「うーん。私は怖いからできればしたくないけど、いつかやらなければいけないだろうし、早めに慣れとくのが大事だよね?」


ミルがそうアウレイアに尋ねる。

もちろん、強くなるにあたっては、魔物を倒すことは必ず通る門だ。いつかは必ずやらなければならない。それも慣れるほどに。ただ、魔物に対してでも命を奪うということに忌避感を抱くことは大事である。『魔物を殺し慣れた人はいずれ同族を殺すことも嫌悪しなくなる』という言葉が昔からの言葉で残されていた。もし、魔物を殺すことに躊躇がなくなれば、いずれ人の命を奪うことも可能になってしまう。アウレイアはそう考えながらミルに対して頷く。

「オウゼリアは大丈夫?」


アウレイアはオウがストにもそう尋ねる。オウガストは自分の武器を一瞬見つめてすぐにアウレイアに視線を戻し頷いた。二人の返事をいただいたアウレイアは冒険者ギルドへと辿り着くと早速掲示板から、一番簡単な魔物討伐の依頼を剥ぎ取る。そして、流れるように受付カウンターで手続きを始める。


「すみません。こちらの依頼を受けたいのですが」


アウレイアがそう受付に声をかけると、女の人がにこりと笑って、依頼を受け取った。


「かしこまりました。こちらのゴブリン討伐ですね」


女の人は素早く依頼を確認し、こちらへ話しかけてくれる。


「前回あなた方のパーティーはゴブリンを倒してくださっていますので、討伐の際の注意事項は必要ないかもしれませんが、念のため。もし、なにか危険なことがあったらすぐに逃げてくださいね。この間も森の主であるドラゴンが出現し、大変なことになっていたんですから。ちなみに、そのドラゴンの出た森は現在封鎖していますので、北の森へ行くことをお勧めします。東の森には絶対入らないようにしてください」


「はい…」


ドラゴンと聞いて、真っ先に前の冒険の日のことを思い出す。恐らく、そのドラゴンのことであろう。自分も関与していることを話しに出され、おどおどしながら、アウレイアは返事をする。その様子に違和感があった女の人は首を傾げながらも三人を見送る。さすがに依頼二回目の初心者冒険者がドラゴンを倒したなんていうことは浮かばなかった。



 依頼は北の森で行うことになった。ゴブリンは森に住処を持つ魔物なのだ。三人は北の森へと向かう途中である。


「そう言えば、今度学園で行われる舞踏会、二人ともどうするの?」


ふと、アウレイアが二人に問う。ミルは顔を顰めて口を開く。


「それってさぼったら、いけないやつなんだよね?面倒くさいから最低限の服装で顔だけ出して帰ると思う」


オウガストはオウガストで、嫌そうに頭を掻いて口を開いた。


「その全員参加という言葉が俺は一番嫌いなんだよな。それに、学園だと、アウレイアとミラージュと一緒にいられないだろ?アウレイアはあの怪しいリ…いや、顔の良さそうな貴公子と常にいるし、ミラージュはミラージュでどこを見ても見つからないし、ようやくできた友人は婚約者がいるから、一緒にいるのは無理って断られるしな。参加したい奴だけ参加できるようにすればいいのにな。そうすれば、自分の為の時間が作れるし」


リ…なんだろうか、その瞬間、ミルがオウガストを睨んだように感じた。まあ、気のせいであろう。そう考えてアウレイアはオウガストに返答する。


「まあ、確かに面倒くさいよね。けれど、貴族の仕事ってそういう場での情報交換も一つだから、場を踏ませようと学園も必死なんだと思うな」


そう言って、アウレイアは自分の前世を思い出してこんなことを言った今の自分を恥じた。なぜなら、前世のアウレイアは舞踏会なんてものに関わったのは10歳くらいまでだからだ。剣の道を選んでからは手に豆を作って、足に擦り傷を作って、何かと理由をつけて舞踏会への参加をできなくしていたのだ。今思えば、泣きそうな顔で参加できないの?と聞いてきた両親の気持ちがわかる。将来の娘の安否を心配していたのだろう。悪いことをした。昔のアウレイアはオウガストよりの人間なのだ。


そうだよな。と力なさげに返事するオウガストに対して否定して悪いと思い、前世の自分がやってきたことを提案する。


「まあ、頬に傷をつければ、出なくていいよって言われそうだけどね。手の豆もいいかなって思ったけど、みんな剣術の授業があるから意味ないだろうし。最悪、足を骨折させれば、立つどころの話じゃないから、休めるよ」


「いやいやいや、それはそれでそこまで出たくないわけじゃないからな?自分で自分の顔を傷つける酔狂な輩がどこにいるんだよ?」


「…私だけど?」


「「…」」


アウレイアはミルとオウガストの無言の冷たい視線を受けて首を傾げる。なにかおかしなことを言ったのだろうか。その問いに答えるものは誰もいない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ