026 神と天使
陽が昇る前に起きたアウレイアは昨日の夜にあったことを思い出し、テンションを急激に下げた。もしかしたら、まだあの天使はいるのかもしれない。そう思ったアウレイアは『転移』で移動し、湖畔の家の前にやって来た。恐る恐るドアを開けるとソファーで眠りについている件の天使がいた。
眠る顔は安らかで昨日のご飯を勝手に食べたような天使とは思えない綺麗な寝顔だった。テーブルを見れば昨日の食事で使った皿などは洗われてテーブルの上に置かれていた。
アウレイアは眠る天使を放置してご飯づくりを始めた。屋敷で味のしないご飯を食べるよりは、おいしいとご飯を食べてくれるただ飯喰らいの方がマシだ。なんせ、アウレイアのご飯の材料はアウレイアを信仰してくれる人々からの貢物なのである。
さて、本日はスパゲッティにしよう。アウレイアは唐突にそう思った。スパゲッティは様々な種類があるが、今のアウレイアの気分はトマトソースを使ったスパゲッティである。よって、ナポリタンを作ることにした。ナポリタンはバターをふんだんに使った少し濃厚なソースを絡めることにする。作っていると甘みと酸味の含まれたいい香りが部屋を漂う。匂いで起きたのか、ユーリファはアウレイアに話しかけた。
「おはようございます。アウレイア様。美味しそうなご飯を作っていますね」
「おはようございます。運んでいただけませんか?」
そう尋ねれば、自分の分もあると理解したのかユーリファはご機嫌でご飯を運んでくれた。
食事ではアウレイアは昨日聞けなかったことを聞くことにした。
「貴方は神界に戻られないのですか?」
ユーリファはスパゲッティを食べる手を止めて、真剣な目でアウレイアを見つめた。
「神界に戻ったとしたら、アウレイア様を守ることができません」
「…私は一応元軍人です。自分の身は自分で守ることができます。そんなに心配なさらなくても、神界から見守り、危険だったら降りてくるのもいいのではありませんか?」
アウレイアは一応、剣の腕には自信がある。昨晩の剣の振りから、前の自分の感覚に追いついてきたのだ。毎日振れば、自分の感覚よりもっと鋭い、未知の剣の領域に入ることができそうだ。…つまり本音を言うと、ユーリファの護衛はいらないのである。
ユーリファは表情を暗くして答えた。
「…実は主神の命で、アウレイア様の魂が無事神界に還れるまで戻れないのです」
アウレイアが昨日神界に戻らないと宣言したため、ユーリファは神界へ帰ることができない。そのことにアウレイアは罪悪感を抱いたが、それを知っていたとしてもやはり神界に戻るということはできない。その罪悪感を消したかったため、ユーリファの勝手な居候には目を瞑ろうと考える。
「そうなのですね。ところで、天使でもご飯と睡眠は必要なのですね」
そう尋ねればユーリファはフォークを片手にスパゲッティを見つめ、アウレイアに尋ねた。
「ところで、アウレイア様。天使とはどうやって作られるかご存知ですか?」
そこでアウレイアは視線を逸らして顔を赤くさせた。
「恐らく、あなたが想像しているのとは違うでしょう。天使の器、つまりは主神が魔力で器を作り、その中に主神の魔力と合う魂を落っことします。すると、天使が出来上がるのです。そのため、天使の体は魔力で構成されており、あらゆる行動に魔力が伴います。神界に居れば、魔力を主神からいただく事で済むのですが、下界は主神の魔力の濃度も薄めです。そのため、主神の力が行き届く自然や生物から摂取することが天使の維持につながります。よって、食事は天使にとって死活問題です。さらに、睡眠は主神への報告です。魔法でもできますが、寝て魂だけを神界に飛ばしたほうが魔力も使いませんので効率的です。体は無防備になりますがね」
想像していたのと違った天使の実態にアウレイアはなるほどと頷いた。天使は天使で生きるための生理的現象があるのだ。人間などの生物とは違うものの、彼らは彼らなりに生きるための行動をするのであろう。
食事を終え、着いてきたがるユーリファを拒否して屋敷にアウレイアは戻った。
アウレイアはいつも通り、馬車に乗り込むが、今日、リリアージュは同乗しなかった。ライネル曰く、城へ謁見に行くらしい。
教室に入るとやはり王子もなく、教室内はざわざわしていた。一人の令嬢の声がアウレイアの耳に入った。彼女は甲高い声でこう言っていた。
「リリアージュ様とルロスト殿下が婚約なさるそうですわ。恐らく、リリアージュ様の光適性が関係あるのでしょう。あれは聖女と呼ばれる適性値だったかと!」
「まあ、つまり、近々リリアージュ様が聖女と発表があるということですわね!」
そこでアウレイアは昨日ユーリファが言っていたことを思い出した。
『で、なぜあなたに迎えが来たかと言いますと、なんか悪魔の大群がそろそろ来るかもしれないのです。地上では新たな聖女と呼ばれる存在が生まれ、お祭りモードですが、神界はピリピリとしています。もしかしたら、その余波がこちらへと来る可能性もあります。悪魔が地上へ来るかもしれません』
「光の女神シレストレーゼ様に感謝を!」
一人の令嬢がそう言った。
『ああ、アウレイア様はご存じないのですね?いまやラシアン様は下界に追放された身。私が使わされたのは主神の命によってです。申し遅れました。私は主神に仕える天使、ユーリファ。主の命により、あなたを神界へお連れする任務を受けました』
ラシアンが追放された。つまり、シレストレーゼは…。そこまで考えてアウレイアはリリアージュが聖女になったことはシレストレーゼが意図的にしたことだと察した。
どんなに地上の人から愛される身であったとしても、神界からしたら、ただの道具なのかもしれない。そう思ったアウレイアは秘かに両手に力をこめて、リリアージュを憐れんだ。
その横に座っていたルルアージュの婚約者のベルンは別の意味で両手に力を入れていた。
今回も少なくて申し訳ありません。
実はですが、来週から一か月実習がありまして、一か月間は実習に専念したいと思います。
そのため、一か月投稿はできないかと思われます。
また、毎度次回の更新日時を告げておりましたが、正直、その日時に間に合わせるために質が落ちてきているとひしひし感じております。
そのため、次回から、更新日時を告げることはやめ、書けるときに書くといった形に変えます。
色々とご迷惑をおかけしますが理解していただけると私としましても嬉しい限りです。
長文後書き失礼しました。




