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謝罪

聖女様、どうかご慈悲を」

 思わずすがりそうになった救いの糸はあっさりと途切れた。

 破滅まで準備期間が短すぎる。やっぱり聖女に頼らねばならないのだ。

「一つ聞こうか、今までの巫女は本当に、元居た世界に帰ったのか?」

 言われて、神官長は目を瞬かせた。

 戻ったに決まっている。ずっと前の神官長からそう言われてきた。

「確かめたことはあるのか」

「異なる世界のことなど知るすべはありません」

 言ってから、巫女の視線は凍り付いていた。

「なぜ、確かめたこともないのに、還っているはずだと断言できた?」

 アルタイルは背中に冷たい汗が浮かんだ。

 もしかしたら、巫女は自分たちの知らない物事をすでに悟っているのではないだろうか。

 自分たちが知る由もない、今までの巫女の行く末とか。

 もし、今までの巫女が、実際は元の世界に帰ることかなわず、非業の最期を遂げていたとしたら。

 巫女にとって、世界など救っても救わなくても同じということになる。どのみち非業の最期しかないのだから。

 そして、こちらの怠慢で、巫女にそのような羽目に陥らせたとしたら、巫女が自分たちに慈悲など垂れるはずがない。

 言葉の定義が変わるほど長い間、この世界を維持するためだけに、異世界の巫女を犠牲にし続けていた。

 それゆえ滅ぶべきだ。そう言われたらアルタイルは返す言葉もない。

「ならば、なぜ、こんなことを教えた」

「お前たちの愚かさを思い知らせるためだ」

 神の名をかたり非道の限りを尽くしていた、そう巫女は言っていた。

 そんなことは知らない、知らなかったといっても後の祭りだ。

「謝ってください、神官長」

 アルタイルはそう叫んだ。自分たちの身勝手で巻き込んだその巫女に謝罪すべきだと。

「知らなかったではすみません。たとえ過ちを犯したのが遠い先祖だったとしてもそれに乗り続けてきたのは我々なのです」

 むろん、先祖は、どれほど恨んだとしても余りあるが、それ以上に被害者なのは今までの巫女たちだった。

 謝罪、過ち、その言葉を何度も新官庁は反芻している。

 それを認めるということは自分たちの行いが、神のもとで間違っていたと認めることだ。

 巫女は色のない目で神官長とアルタイルを見ていた。

「どうか、巫女様、我らの罪をお許しください」

 神官長は床に座り込んでそう呟いた。

「女神よお許しください、貴女の名で罪を重ね続けた愚かな我らを」

 どれほど認めたくなくとも現実だ。神官長は絞り出すような声でそう口にした。


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