異世界転勤というべきなのかもしれない
楽に手に入るものなど無く、タダより高いものはない。
異世界転生に憧れる若者が増えているような気もするが、経験者から言わせてもらうと夢を見るな、である。
というのも実際そんなに良いものじゃないからだ。
チート能力とか異能とかそう言うスペシャルなスキルを貰えるだろうって?
まあ普通はそういう風に考えるよな。でも違うんだ、それが罠なんだ。
転生時に貰えるスペシャルなスキルっていうのは、実は借金なんだ。
勿論実際に金銭で支払う訳じゃない。
対価は人生。そう、人生だ。
貰ったものにもよるが、まあ二桁で終わることはまず無い。
その年数分、神様のお使いをやらされるのさ。
人間はそんなに生きられないだろうって?
中には転生先で上手くやって長寿の力を手にするヤツも居るじゃないか。
わかってる、そういう事じゃないよな。大丈夫。
神様がたもわかってるから、きちんとシステムを組んでるんだ。
転生だ。
異世界での人生を全うした――――この場合、どう全うしたかは問わない。
殺されようが寿命を迎えようが全うしたと見做されるのさ。
兎も角、そうやって人生を全うした、俺達のようなマレビトは再度別な世界に転生させられるのさ。
記憶やスキルを引き継いだままでな。
そうして別世界でまた、神様の言うことをこなして、異能の対価を返済していくのさ。
中にはその転生で再度スキルを貰って、返済年数が延びるやつも居るが……。
まあ、そういうやつは精神が摩耗してぶっ壊れるのがオチだな。
そうなったらどうなるかって?
ソイツの魂を素材にして、武具を作るんだよ。
これが魔剣だの聖剣だのと呼ばれるような武器や、謂れのある防具に魔道具と言った器物の正体さ。
生前に宿していたスキルから好きなものを抽出したり、組み合わせたりして性能を決めるんだ。
そうやって武具として作り替えられて、有効に使われることで返済するって訳だ。
笑えない話だろ?でもそれが世界の真実なんだよ。
人間である以上、限界はあるからな。どうやったっていつかは精神が摩耗してぶっ壊れるのさ。
この話を聞いて絶望するか、或いは頑張って返済に精を出すかはお前さん次第さ。
働きによっては何年分ってカウントもあるみたいだからな。不可能って訳じゃないようだぞ。
俺はダメだったがな。おいおい、この有様を見れば分かるだろう?
んで?お前さんはどれだけ貰ったんだ?
……あらら、そりゃご愁傷様。まあ気を落とすな。それだけの力があれば上手く功績を残せるだろうさ。
いや、だって他人事だしな、うん。マジで。あっバカやめろ燃やそうとすんな!
燃えねえけど熱いのは熱いんだぞコラ!
っぶねーなもう、お前それ自分のマイナスにもなるんだからマジ気をつけろよ。
あ?当然だろそんなの。世界に対して不利益な行動を取ったら年数は増えるよそりゃ。
恩恵だけ受け取って好き勝手は出来ねえってことだ。
今知れてよかったな?取り返しが付くかどうかは知らんけど。
ま、せいぜい頑張れ。
俺のような道具になることなく、任期を全うできるよう祈ってるぜ。