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ふとよぎる思い出は


膨大な魔力を持つ者はこの機械神を崇める国では嫌われ者だ。





生まれてすぐ私は膨大な魔力と魔法神の加護を受けている証である神紋を持って生まれてきた。



私の体は、膨大過ぎる魔力に耐えきれているとはいいがたかった。


加えて私の一部の魔力の質は


言葉にしなくても、小さな魔法が発動するほどで、当時の私は危険物そのもの。


そのせいで母親は私を育てることを諦め、無言で実家に帰ってしまったらしい


けど、祖父と父はそんな私のことを捨てるなんてこともなく精一杯かわいがってくれた。




もちろんそんな私を治そうと2人は努力して、優秀な医者を何人も訪ねて回ったり、貴族のつてで方々に私と似た症状の人間がいないか探しまわったりしてくれた。



魔法技術よりも機械技術が発達しているゲイルアルクでは、私の完治させるのは難しく、症状を抑えるのが限界だった。


ましてや魔法神の加護はゲイルアルクでは嫌われ者だ。




そんな病状を治そうとする医学を志す物自体決して多くない


さらにいえば、ゲイルアルクで医学に優れている事が多い、機人の人達の多くは、敬虔な機会神の信者であることが

ほとんど。


魔法神の加護を受けている私を診察してくれるどころか、貴族であっても悪魔の子扱いで門残払いされてしまう


この国で力を持つのは貴族と社だ。


機械神を崇める社が崇める機械神


子供心ながら、機械神が嫌いになりそうだった。


けど、保守派の祖父はそんな私に絶対に外でそんなことを言ってはいけないと言われたから

口にすることはなかった


いまおもえばそんなことを外で口に出せば私が貴族でも、機人や信者に殺されてもおかしくなかっただろう。


私を嫌うものが多い一方


ゼロディアは逆に私を強くほしがっていたらしい。


けれど、興味があるのは私だけなのか、父や祖父がついてくるのを非常に嫌がり、

言外に娘を治す代わりに国に引き取らせてほしいと言われたこともあったそうだ。


けど、そんなことをはいそうですかと父も祖父も許すはずがなく

すぐに彼らを追い払ったそうだ。


私のことを煙たがり、外国に追い出したがる貴族は少なくなかった



それでも保守派の貴族である祖父と革新派である父は、私のことを精一杯守ってくれた



しかし、ある日このままじゃあと数年も君は生きられない。


私を小さい時から見てくれた医者の告げた言葉は私に衝撃を与えた。


このままじゃ死ぬ。


子供心ながら7ソレはとても恐ろしいことのように感じた。



父と祖父がわたしのことで何度も争いだすようになった。


「あんな腐った連中に孫を渡す!?正気なのか貴様はっ!!」


「だが、そうなれば娘の命はどうなる!?ここには彼女を治すすべがないんだ!このままじゃ娘は!」


「今私が、戦争で加護持ちの魔法使いを抑えるという名目で魔力の抑制技術の研究を軍で行わせている!だからしばらく待て!」


「一体いつまで待てばいいんだ!そうしている間にもあの子は……ッ!」


たまたま聞いてしまったのだ。

私はそれを聞いてとても心が苦しくなった。



たとえここにいても病気が治らなくても一人で

知らない国になんていきたくない。


けど、ここにいるだけで私はみんなを困らせてるのがわかった。



私の気分は落ち込み、体調は悪化していった。




ある日の昼


私の体調は良くなく、その日はベッドで横になっていた。


もっともいまやベッドで寝た切りのほうが多いため、珍しくもない。


その日は、生まれてすぐ左胸に刻まれていた神紋が、発熱するように熱かった。



私もうそろそろ死んじゃうのかな?



そんなとき



「ぐふっ!?」


なにか重いものが突然お腹を打ち付けた。

な、なに?

花瓶でも落ちたの?

「あっ、ごめんね、大丈夫?」


見れば

私と同い年くらいの茶色い髪の少女がお腹の上に乗っかっているのを見つけた。

こ、こいつ~ッまさか私のお腹の上に飛び乗ったんじゃないでしょうねっ!?


「ぶ、ぶれいもの!いたいじゃないの!!」


「ごめんね、ちょっと座標ミスしちゃって、」


「ザヒョウとかわけわかんないこといわないでよっ!私をだれだと思ってるのっ!?」


「えっと、なんかここお屋敷っぽいから貴族かな?」


「そうよキゾクよ!この国でちょうえらいんだから」


「へー」


私の剣幕に少女は、最初に軽く謝るだけで全くひるんだ様子がない



「ねぇねぇ、なんでこんな真昼間にこんなお部屋で一人で寝てるの?」


「はぁ?」


顔をぐいぐい近づけてくる。


茶色い髪を小綺麗に髪留めでまとめ、

眼は爛々と輝き

好奇心旺盛そうな目をしている。


熱くて痛くて苦しい私にとって

当然、その無神経な発言は癪に障った


「うるさいわね、『しょけい』されたいの?」


体が痛くて、暑くて、だるくて、その時私の心は正直荒れていた。

父が注意したのに、私をよくかわいがってくれた祖父の口癖がつい口から飛び出てしまったほどだ


「しょ、処刑はこわいなー」


「そうよ、こわいわよっ!」

そんなことをする気はないけど

少女をもっと怖がらせてやろうと私は口を開く


「早くしないとごうもんもするわよ!ギロとかサンカクウマーなんだからッ!!」

するとなぜか少女は笑ってしまった。

「よくわからないけど楽しそうだね」

むう、へいみんにはキゾクのこうしょうなごうもんがわからないみたいね。

ならどれだけ恐ろしいか教えてやるわ!

「なにがたのしそうよ、おじい様が誰もが恐れる世にもめちゃくおそろしいものだって言ってたの……げほっ、ごほっ!」

むうっ、へいみんのまえでよわみを見せるなんてくつじょくだわっ!くつじょくよっ!

「病気なの?」


「みてわからないの!?さっさと出ていかないと『しょけい』するわよ!」


「機人のお医者さんは診てくれなかったの?」


「ふん、私のことみんな大嫌いだから、みてくれるはずないわ、あいつら目にしただけで私のことあくまのこって呼ぶんだから!」


「むーっ、それはひどいね」


「ってわたしのことはいいのよ、もうさっさと出て行って!早くしないとついかでだいしゃりんのけいよ!ぐるんぐるんしちゃうんだからっ!」


「さっきと言ってること変わってない?

うーん、でも病気ならちょっとほうっておけないかな、ちょっと待っててね」


その場から姿が消えた。


消えた?


むむ、よくわからないが

やっと邪魔者はいなくなった。


なんだか寂しい気もするが、これで静かになっただろう。


それにしても

同い年くらいの子と話すのは始めてだが、実に無礼な平民だった。

平民の子供とはみんなあんな感じなのだろうか?


と思っていたら


「ぐふっ!?」


「あっ!またミスしちゃった!」


「もうおこったわ!あんたいますぐ『しょけい』よっ!死んだあと、とりのえさにしてやるんだからぁっ!」


「まあまぁこれ飲んでみて」


渡されたのは小さな緑色の液体が入った瓶だった。


今まで私が飲んできたモノとは全く違うそれ



私は、得体が知れないそれを見て思わず躊躇した。

というか待って、私にはそんなことをする筋合いはないはずだ。


「なんで私がそんなことをしなきゃいけないのよっ!」


「えっとじゃあ私が一口飲んでみるから」

少女は憤る私にもかまわず、毒がないことを示すためなのか、自分でまず一口飲もうと宣言した。



少女が瓶を開けた瞬間、緑色のどろっとした液体からなにやらすごいにおいがした。


なにこれ、おとう様の足の匂いよりもすっごく臭い!


得体のしれない液体を少女は口にする。


どろっとした液体が少女の口に含まれた瞬間、少女は一瞬痙攣した。


「っ!!……ほ、ほ、ほら、にに苦く……っ……ない……よ?」

言葉では言っているがめちゃくちゃ苦そうな顔をしていた。



うう、こんなわけがわからなくてくさいもの飲みたくない。



「もう、私がせっかく苦いの飲んだのに、これじゃ意味ないでしょっ!いいから飲んでっ!」


らちが明かないとおもったのか、少女は私の顎をつかむと瓶を近づけていく。

「やめなさいっ!やめなさいったらっ!」

私は必死に

したばたして抵抗していたが、少女の手の力は大人のように強くまったく顎から外れる様子がなかった。



そのままあっけなく

無理矢理薬を口に入れられてしまった。

しかも自分は一口のくせに私は瓶丸ごと一本


どろりとねばっこくのどにからみつくため、飲み込むのも一苦労。

そしてなにより苦いッ!!


やっぱり苦いんじゃないのぉぉ!


その苦さは、私が今まで口にしたことのない形容しがたいすさまじい味だ。

これに匹敵するものはなく、にがいおやさいたちでもここまでのものはおめにかかったことがない。


に、苦いわ……。

それになんだか、はきそう。



それでも平民にぶざまなすがたを見せてはいけないというおじいさまの教えを守り、きぞくとしてのキョウジで必死になんとか耐える。


もうっ!これでなんの効果もなかったら、おじいさまに言ってホントに『しょけい』してもらうんだからっ





しばらくして体が急激に楽になっていくのを感じた。

「え?」

さっきまで焼けるように体が痛かったのに


見れば光を放っていた左胸の神紋が、逆に薄光が消え、神紋自体も薄くなっているのが見えた。



「な、なおった?」


「ほらね、効くでしょ?」


「そ、そうみたいね」




「じゃあもう一杯あげるね」


「え?わ、わかったわ」



「もう一杯いいよね」


「そ、そうね」


「念のためもう一杯」

「……」


数分後、私の体はとても軽く、それに比例するように口の中には地獄が形成されていた。


くさい、苦いくさい苦い


こ、このままじゃ薬に殺されちゃう!


「どう、めっちゃ効くでしょ?」

おんじんだと思っていたからだまっていたけど、

もう我慢の限界だった


「き、きくでしょじゃないわよ!めちゃくちゃにがかったわよあれ!おとうさまの足の匂いよりもくさいうえに苦い!

それを何本も何本もばかみたいに突っ込んでっ!!わたしをころすきっ!?」


「えー、大げさだなー」



サラは不思議な子だった。


それからもたびたび彼女は私の部屋に遊びに来た。


どうやっているのか大人たちの目をかいくぐり、私に毎日会いに来たのだ。


部屋の前にいるはずのメイドさんなんて知らないとでもいうように



時に窓から入ってきたり、堂々と扉を開けて入ってくることもあった。



小生意気な同い年の初めての友人に私は、表向きはそっけない態度をとっていても、彼女が来る時を

毎日心待ちにしていた。


体も元気になって、友人もできて、その友人と毎日楽しく遊んだり、お話ししたりできた


そう、その頃の私は人生で間違いなく幸せだったといえた。






「……疲れてたのかしら」



私としたことが


貴族殺し(マジシャンキラー)やハセベとかいう少女のことで疲れが出ていたらしい。



それにしても

懐かしい夢だった。



あのころはシリアにも出会っていなくて、サラだけが唯一の友人だったといっていい





その後はあんなことがあったせいで、すっかり嫌われることになったけど



今でも彼女のことは友人だと思っているつもりだ




「さて、準備……しないとね」


私は貴族だ。


人を使うことはあっても


誰にも助けなんて求めちゃいけない。



そんな私が

幼少期以外で

二度も他人に助けられた。


冒険者ギルドの前で

二度目は貴族殺し(マジシャンキラー)の依頼で


私はお金以外での礼の仕方なんて知らない。


でも借りの返し方はなんとなくわかる



――敵を倒せばいいのだ。





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