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事情説明とルティアの快諾

 あのあと、コード『ギア・アクセル』のせいで体がぴくりとも動かない俺はその場に昏倒。

 気絶から回復したシリアはそんな俺に一生懸命回復魔法をかけてくれた。


 ただ回復魔法は傷を癒す力はあっても体力を回復する効果はわずかしかない。


 多少の疲労ならともかく、体力全てを使い切った俺を癒しきる力はなく、

 シリアは、一度回復魔法を使った後も、何度か回復魔法を使ったが、俺の体が動くほどまで即座に回復することはなかった。


 そこで、そんな俺をルオスが運んでくれることになった。


 ルオスの体は血だらけだったものの、長谷部の攻撃で出来た傷はシリアの回復魔法で回復していたらしく、人を運ぶくらいわけないとのことだ。


 情けないが、背に腹は代えられない。

 そのため動けない俺をルオスがかついで宿まで戻ってきてくれた。

 身動きできない俺はそのまま宿のベッドに横たえられる。


 「だ、大丈夫ですか?」

 自身の回復魔法があまり効かなかったからだろう


 シリアは心配げに俺を見ていた。


 なんだか、こいつが神官らしい一面を初めて見た気がするな。

 いやそもそもそこの世界で神官らしい人間を初めて見た。

 ゼロディアにいた神官は、金に意地汚いうえに、相手が平民なら、誰かを慮る様子などなかったからな。


 「ああ、少し休めば治る、」


 「無理はしないでくださいね?」


 弱った人間を気にかけ、傷を癒す。

 本来の聖職者っていうのは、こういうものなのだろうか? 

 病人を気にかけるような、慈愛あふれる手つきで今も布団をかけようとしてくれている。


 そんな俺たちをルティアはじっと見つめていたが、しばらくして落ち着いたと判断したのか

話を切り出した。


 「担当直入にいうわ、あれは何?」


 あれとはおそらく俺を襲ってきた長谷部のことだろう。

 風の魔法を手足のように扱い、俺達を追い詰めていた恐るべきゼロディアからの刺客。。


 「あれは俺を殺そうとしているクラスメイトの一人だ、ゼロディアに召喚された勇者の一人でもある」


 「勇者、聞いたことがあるわ、おとぎ話でいくつかの国が、力を合わせて、勇者を召還して、魔王と機械王の二人を倒したってね」


 魔王?機械王?そんなのが昔はいたのか。

 とはいえ、今は話の腰を折るわけにはいかない


 「もうその技術は失われたと思っていたけど、あいつら隠していたのね」

憎々し気にルティアはそうつぶやいた。

もしかしたらこの国と過去勇者関連の技術のやりとりでなにかあったのかもしれないな。


 「そうみたいだな、それで勇者たちは、俺を殺すとあいつらに加護を与えた神から、新たな加護を与えようって言われたらしい」


 ルティアは嘆息したように

 「そりゃ、躍起になるのも無理ないわね、

それってつまり神託ってことだもの」


 「貴方を狙っているクラス?メイト?とかの一人って言ったわね、そのクラス?メイト?って何人いるの?」


 「だいたい40人くらいだな、」


 「40人!?」

 「あ、あんなとんでもないのが40人もいるのか……そいつは」

 シリアは人数に驚いているが、意外にも大きな恐怖を感じていないようだ。

 むしろルオスの方が、怯えているように見える。


 無理もない、自身の力が通じなかったルオスは一番脅威を感じているのだろう。

今もやや顔を青くしている。


 ルティアはそんな二人の反応に目を向けず、なにごとか考え込んでいた。


 「相手のことはわかったわ」


 「でもまだわからない」


 肝心のことがまだわからないとその目が俺にうったえかけていた。


 「勇者に狙われているあなたはいったいなにものなの?」


 ルティアは鋭い目で俺を見据えていた。


 黙秘など許さない

 嘘など絶対に許さない

 そんな意思を感じさせる目だった。


 貴族だし、下手なことを言えばその場で処刑もありうるかもしれない。


 いや、あの戦いの場で彼女は身を張って俺たちを守ってくれた。


 普通そんなことは貴族なら絶対にしない。


 その時点で、ルティアは、他の貴族とは少し違うのではないかというのはわかる


 だからこそ彼女の優しさにつけこんでしまうのはいけないことだ。


 自分が巻き込んだという自覚があるのなら


 聞かれて答えないわけにはもういかなかった。

 

 だが、すぐには言葉が出てこない。

 なにから話せばいいのか。

 いざとなってわからなくなったのだ。


 「大丈夫ですよ、ゆっくりでいいんです」


 戸惑い、混乱している俺にシリアは慈愛に満ちた表情で話をせかすこともしなかった。


その姿におかげで俺は心を落ち着かせられていく。

深呼吸する。

俺はゆっくり口を動かしていく。

「……俺は、勇者としてゼロディアに召喚されたんだ」


サリアはすでに知っているため、頷くだけでそう大きな反応はない。

「勇者ですかっ!?」

「そ、それは本当かい!?」


 シリアとルオスは、目を見開き驚きをあらわにしていた。

 その中で、ルティアは半ば予想していたのか、頷くだけだった。

 「ああ、欠陥勇者らしいけどな」

 「どういうこと?」

 「勇者は、この世界に召喚されるとき、神に望むことで、望んだ力を与えられるんだが、他のクラスメイト40人が、出会ったのが魔法神なのに、俺が出会った神だけがなぜか機械神だったらしくてさ、そのせいで一人一人力を城で披露している最中にゼロディアの教会の人間が俺のことを悪魔と呼びだしたんだ、で、召喚されたにも関わらず勇者としては欠陥があるから勇者を召還した聖女が、俺のことを欠陥勇者ってさ」


 「それ、ひどくないですか!?向こうが呼び出したくせにっ、そんなのひどすぎますよ!」


 シリアは我が事のように怒ってくれた。

 それに対し、ルティアは、ゼロディアの事情を知っているのか


 「無理もないわ、機械神は魔法神の天敵みたいなものだもの、そのせいで


 ゼロディアの国民のほとんどが信奉する魔法神の幾つかは、大昔、神話の時代に機械神に殺されて消滅

してしまったと聞くわ」


 シリアはそれを聞き、何かを思い出したのか


 「はい、確かに教会にもそういい伝えられています、そのせいで、水と時の魔法の神

の恩寵は失われ、それらの上級以上の魔法はこの世から失われることになったと」


 「光もそうですが、水はそれ以上に治癒を司ります。高位の治癒魔法なら死んでも蘇らせることができるといわれ、時魔法は高位の魔法でも似たようなことができるほか、文字通り世界の

時を操り歴史すら変えられる、大昔の人たちはそれを用いて災厄や災害を何度もやり直して、犠牲者が出なくなるまで時魔法を使い、犠牲者を一切出ない世界に作り替え、そのおかげでゼロディアは、かつて永遠の繁栄を約束されていたとか」


 そうなのか、


 あのときはなんでここまで目の敵にしているのかわからなかったが


 そんな理由があるなら嫌ってくるのも無理ないかもな


 「でもそれとヤマダさんが召喚されて、欠陥勇者呼ばわりは関係ないですよっ!全部相手の国の都合でしかないじゃないですかっ!」


 シリアは本当に優しい子だな。

 思わず空気読めないとか思って悪かったと内心詫びてしまうほどだ。


 俺は話を続ける。

 「俺はゼロディアから逃げてきたんだ」


 「ゲイルアルクの国境をよく超えられたわね、どうやって検問から逃れたの?」


 「検問は受けてない」


 「賄賂でも使ったの?」


 「魔物の巣を突っ切った」


 「!?無茶なことするわね、あそこの魔物は最低でもDランク以上、魔道機械にも乗っていない貴方がよく無事だったわ」


 あのときは背後から魔物以上に恐ろしいのが追いかけてきたからな、


 「だから、あれだけぼろぼろだったのね」


 「いいわ、事情はわかった」

ルティアは、納得したようにうなずく。

俺は居住まいを正した。

 「俺がこの領地に迷惑をかけているのはわかっている。出て行けというのなら出ていく」


 「出ていく?何を言っているの?今の話を聞けばあなたは無断入国者なのよ?そう簡単に逃がすモノですか」


 そうだった、俺は無断入国者だ。

 とはいえ話はそんな段階じゃない。

 下手をすれば他国の勇者が大挙して押し寄せるのに


 「あなたが他国のスパイかどうか調べてからしかるべき処置をするわ、それまでここにいなさい」


 「で、でもそれじゃ勇者連中が俺を狙ってここにくるぞ?」


 「別に賊なんて珍しいことじゃないわ」


 「ぞ、賊?」

 勇者を賊?

 そんな賊なんかとひとくくりにするのか?


 「怖くないのか?」


 「ここはオデラス、中央の威光もあんまり届かないから、隣の領地やほかの国のスパイとやりあうのも

珍しいことじゃないわ」


 「それにゲイルアルクとゼロディアの仲は別によくない、戦争だって何度もしたしね」


 彼女の目に恐怖はなかった。

 もしかすると俺が思っているよりも彼女は戦いに精通しているのかもしれない。


 「それよりも」

 そこでルティアは、なぜか満面の笑みを浮かべる。

 「先の貴族殺し(マジシャンキラー)のときの活躍実に大義だったわ、」

 「故に私があなたの悩みの種を取り除いてあげる」


 ルティアは、尊大に俺にそう告げた。

 俺を狙ってくる長谷部をなんとかしてやると。


 当然のように、安堵させるように、彼女は、自身にあふれた表情を浮かべていた。


 「どうしてそこまで?」

 だから俺はついそんな疑問がでた。


 「たまにはあなたにお金以外で報酬を払いたいと思ったのよ」


 「相手はおそらくお前と同じ魔法神の加護を受けているんだぞ」


 「この国の人間は魔法神の加護ってひとくくりに読んでいるけど、そもそも魔法神は一人じゃないわ。 だから、あの女と私に加護を与えている魔法神はそもそも別の神よ、、私の加護の発動に支障なんてないわ」


 「だけど……」


 「ごちゃごちゃいわず、私にすべてを任せなさい、このルティア・フォーレンハルトにね!」


 最後にそう押し切られ、

 しばらくしてルティアには、しばらく休息に専念するよう言われ

 俺はサリアとともに宿に残された。





 まどろみの中、俺は目を覚ます。

 やはり眠れない。

 体はもうだいぶ動くようになった。


 コード『ギア・アクセル』は、体力を消費するものの、時間がたてば動けるようになる。

 飯も寝る前にしっかり食ったし、このぶんなら明日には体力も全開するだろう。


 だが俺は静かにベッドから起き上がった。

 外はまだ明るい、まだ昼を少し過ぎたくらいだろうか?だからこそ動くなら今しかない


 体はまだ万全じゃない。

 それに敵である長谷部は明日今日戦った時よりも10倍強いなとどいう、はるかに強い力で俺の命を狙いに来るという。


 俺はあの後、何度も説明したが、ルティアには何か手があるのだろう。

 私に任せろといったままで、その意見を一切違える気がないようだった。


 考えてみれば最初にこの国で見た魔道機械もゼロディアとは雰囲気が違うし、

 この領地にある魔道機械やルティアの魔法神の加護の力のことを俺は、何も知らない。


 もし俺がいなければ、巻き添えも気にせずそれらの力を発揮できるのだとしたら、俺のこの行動はもしかしたら彼女の足手まといになるだけなのかもしれない


 それでもこのまま彼女だけにまかせたままにはしておけない。

 やみくもに動く気はない。

 杞憂であったならいい。


 けど、もしなにかあるならなにかできないか俺は模索しないといけないんだ。

 さんざん内心で貴族や教会であるという理由で彼女たちのことを警戒していた自分が、ここでじっとしていい道理はない。


 なにより、この世界に来て彼女は初めて自分を認めてくれた人間の一人だ。

 例え貴族でも、俺を助けようとしてくれている。

 そんな彼女が、高みの見物をしている間に自分のために死ぬのは我慢がならない。

 


 インテグラルには成長する余地がある。

 近くにDランクの機械がいるならそれを狩れば、『ギア・アクセル』並の強力なコードも手に入るだろう。


 ぶっちゃけ受付嬢の名前は知りたいが、今ギルドの依頼を受けるヒマはない。

 動くなら今しかない。


 そこで俺はなにげなく近くのサリアを見た。

 「ん……どし……た……の?」

 無表情だが、心なしか心配げな顔でこちらを見るサリアを見て俺は、自身のことを相談することを決めた。


 彼女は機械神の子だ。


 俺が機械神からもらった『インテグラル』の力を俺以上に知っている可能性がある。


 もしかしたらコードや成長意外に『インテグラル』の力を向上させるすべを知っているかもしれない


 まあだめでもともとだ。


 「少しいいか、サリア……」


 できる手はすべて打っておかないと











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