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ルティアへの糾弾と移民とサラの素性



 俺は、二人の対立を見てふと思いついたことがありコード『鑑定眼』をサラに対して使用した。


 ふむ、前の『鑑定眼』よりも少し詳細な情報が載っているな、具体的には

 年齢と種族が増えている。


 サラ・マキア・エレスコート


 年齢 不明

 種族 機人


 筋力値 不明

 防御力 不明

 体力  不明

 速度  不明

 器用さ 不明

 魔力  不明


 スキル 不明


 ……なんだこれ?


 ルオスはスキルも不明だったが、ステータスくらいは見れたのに、こいつはそれすら見れない。

 間違いなく何かあるな。

 種族も機人だし、苗字が二つあるのは、かなりいわくありげだ。


 そこでルティアを責め立てていたサラが、視線をはずし、とがめるようにこちらをじっと見てきた。

 気づかれた?

 ルオスには気づかれなかったのに、こいつはコードの使用を感知する力があるのか?


 だが、すぐに視線を外す。

 今は俺よりもルティアのことが重要だと思ったのだろうか?


 ルティアはサラの、移民をないがしろにしているという意味合いの言葉にかろうじて違うと言っているが、反論というにはあまりにも弱弱しいものだった。


 「ち、違うわ、そんなこと思ってない!」


 サラは、ルティアの言葉に納得などできず、涙交じりに犠牲者たちの窮状を話し出した。


 「何が違うんですか!現にあれだけのことをした男がなんの罰もなく許されて、お父さんは、意識不明のまま、他の人だって

大けがで、仕事休んだせいで首になった人もいるし、襲われたときのトラウマで震えて部屋に閉じこもっている人だっているのに……」


 「なんの罰もないことはないわ、この男は戦奴としての罰を……」


 ルティアは吠えた犬をなだめるようにゆっくりと言葉をつけたし、サラを納得させようとした。

 しかし、サラはそれに対し、顔を横にふり、ルティアをまるで親の仇のように強く睨み付けた。


 「化け物みたいに強い人相手にそんな簡単な内容が罰なんて、ないも同然じゃないですかっ!」


 「この男は、おっきな馬車をあっさり吹き飛ばしちゃったんですよ?人型魔道兵器(マギア・ロギア)の騎士様が戦うような魔物や

機械を倒すのなんて罰になるわけありませんよ

!」


 コイツ森でラプターから逃げ回っていたわりに、結構戦闘の力関係のことがわかるみたいだな。

 

 直接戦った経験がなければ、馬車が吹き飛ばされているとは言っていても、普通それだけで人型魔道兵器(マギア・ロギア)以上のステータスをルオスがその身に秘めているなどわからないはずだ。


 憶測でなければ、こいつは多少相手の強さがわかるのだろうか?


 「また同じことが起こるかもしれないんですよ!怪我で命が危ない人たちは、

治療院の人たちになけなしのお金を払って、治してもらったけど、今度は誰か死ぬかもしれないんですよ!なのにそんな対応って……ッ!」


 サラはルティアに一歩踏み込む。


 「領主の娘でしょ!なら私たちを守ってくださいよ!悪人はさばいてくださいよ!」

さらに一歩。


 ルティアは知らずにあとずさりしていた。

 それを追うようにサラはかつかつと足音を立てて近づいていく。


 「私達の故郷も見捨てて、私達を虐げて、悪人まで庇って、悲しむ私たちが、おもしろいですか?

苦しむ私たちがそんなに楽しいですかっっ!?」


 ついに壁際に追い詰められたルティアは、金髪の髪の毛で視界が隠れそうなほど俯きだす。

 まるでいじめられっ子だな、俺もいじめられっ子だったから変な共感とかわきそうになる。


 こうしている今も、俺相手なら無礼ね、気にくわないわ!あんた処刑よ!とか黙りなさい下郎とか躊躇なく言いそうなのに、ルティアは親に叱られた少女のように顔を伏せていた。

 それに対しサラは激情を抑えきれなかったのか。


 「っ!」


 ルティアのすぐ隣の壁に拳を叩きつけていた。

 それにもルティアは反抗せず、じっとうずくまっているままだ。


 「もう二度とこないでください、これ以上いたら私もどうかしそうですから」


 サラはルティアだけではなく、今度は俺やサリア、シリアやルオスを順番に眺め、

最後にルオスに対して怯えたような目を向けた後


 「帰ってください!あなたたちに売るものなんて何一つありません!帰ってっ!!」


 そういって俺達を店から追い出した。


 「追い……出され……ちゃった」

 サリアの事実を示した言葉に言い返せない俺達である。


 「そだね」

 「そうね」

 「そうですね」

 「そうだね」


 俺とサリア以外の皆やや顔が暗いが、ルティアの顔が特にひどい。

 コイツは相当ショックを受けてるな。


 まあ結局他の人間にとっては無駄足かもしれないが、俺の場合は、そうじゃない


 今回、サラという少女がルティアの弱みということが分かったのは収穫でもある

 俺に対し、何か無理な提案をしてきたら、サラを利用して断ることも可能かもしれないからな。


 あの様子では俺も嫌われたのかもしれないが、様子を見に接触するくらいはいいだろう。

 話を聞くと、金銭にも困っていそうな内容の話もあったし、俺が彼女を森で助けた事実もある。

 

 さっきコードで盗み見た僅かな情報も武器になるかもしれない。

 軽くそこらへんをつけば、話一つくらいはできる気がする。

 俺はこの町の住民ではないから、早めにこの町の現状の話とかも聞いておきたいしな。


 ここはゼロディアではない他国だが、この町が予想位以上に危険な状態なら他の町へ移動する必要も出てくる。


 なにより領主の娘に対して住民が、ある程度の無礼が許されるなど異常だ。

 それはこの町のせいなのか、ルティアが持つ魔法神の加護とやらのせいなのか、ルティア自身の過去や生い立ちに原因があるのか。


 それをはっきりさせないと思わぬことで足をすくわれてしまう可能性がある


 移民の血とやらもよくわからない、その移民がどの国なのか全く不明だ。

 地理的に考えると他の隣国ではなく、俺を召還した大国ゼロディアの可能性もある。

 その場合この町は内側に敵を抱えているようなものになる。

 宗教だって教会と社という対立があるし、それに伴い、お互いの信奉する機械と魔法を憎み合うという価値観もあるから厄介極まりないだろうな。


 いや、これはまだ何も確定していない話だ。

 これ以上考えては混乱するだけだな。

 別のことを考えよう。


 にしても、俺達は、何一つ買えることなく雑貨屋を追い出されてしまった。

 物資どうしよう?



 「ごめんよ、僕のせいで」

 あの後ルオスは何度も俺たちに頭をさげていた。

 さっきから何度も何度も失敗した従業員のように頭をさげている様は見ていてそろそろうっとうしくなってきた。


 俺は、そろそろ時間の無駄になりつつあったので、

 「まあ、予想の範囲内ではありますから」


 「そうなんですか?」

 シリアが不思議そうに俺に問い返してきた。


 嘘だろ?こいつなにごともないとでも思ってたのか?

 罪を戦うことでつぐなうから、皆許してくれる?

 この世がそんな聖人みたいな人だらけなはずでは、ないことくらいすぐわかりそうなもんだが

いや、シリアは空気読めない天然だからそういう人の機微がわからないことも、ありえるか


 「なんか失礼なこと考えてません?」

 しばらくシリアがジト目で見るのを俺は勤めて無視した。


 結局、物資はルティアの実家から分けてもらうことになった。

 一人、ルティアが俺たちに家からとってくるわ、と言い、数刻後、綺麗な白い布の袋を片手に

やってきた。


 「保管袋(ストレージ)っていうマジックアイテムよ、とりあえずこれを借りて、中にここにいる人間の

数日分の食料といくらかの武器や防具と日用品を入れてきたわ、あとで目録渡すから使いたくなったら

言って」



 そういって渡された目録の紙には、保存のきく食料や、剣、ナイフ、鎧に盾、水瓶に、マントやテント、布団など様々なものが書かれていた。

 ご丁寧にすべて人数分あるらしい。


 正直野外で布団とかどうかと思うが。

 それに対し、サリアは強く主張しだした。


 「お布……団……超……重要……ッ!」


 「えぇ?」


 それおまえだけじゃね?


 「そんな……こと……ない、お布団……生活の……必需……品」


 「お布団……なきゃ……ごろごろ……できないっ!」

 

 「まあ木の枝とか、砂とか蟲とかあるしな」

 

 「なにより……暖かく……柔らかな……感触は……極上の……睡眠を……約束……する」

 こいつ初めて会った時並みに饒舌だな、内容はくだらないけど


 俺はそんなサリアとくだらない話をしながらルティア達とともに『マジシャンキラー』がいるとされる

森へと向かった。










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