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力と裸


 門番に引き止められるという騒動があったものの、俺はギルドカードを門番に見せ、町の外壁を

の門を見事通過した


 俺の背後には、町をぐるりとまるで要塞のように囲んでいる灰色の壁が見えた。

 なんだか、閉じ込められたような圧迫感だったが、気を取り直して、歩き始めた。


 あっちこっちに目を向けながら、俺は真っ先にギルドを探した。

 うまそうな串焼きを売っている露店や、いかつい顔をした武器屋の親父、黒いローブで顔を隠した魔道具であるアクセサリー売りなど、いろんな人がいた。


 俺は違和感を抱いた。見られているのだ。

 それは客を見るものの目ではなかった。


 心なしかあちらこちらから視線を感じたのだ。


 ――そろそろ快感になりつつある。

 

 大小さまざまな建物が立ち並ぶ中、遠くに巨大な円形の屋根が見えた。


 一度見たことのある建物、なんとなくこれだと思った。


 その丸い屋根の大きな建物を目指していると、右の曲がり角からなにかが来る音が聞こえた。


 待ってすぐ見えたのは、二頭の馬とそれに繋がれている馬車


 白いキャンバス製の幌がかけられいて、


 車輪には、金属がついている


 どことなくコネストーガ幌馬車に似ている。


 「おお……」

 さすが異世界

 こんなの今時日本じゃ見ない。


 しばらく馬車を見ていると、俺は


 「えっ!?」

 ほうけたような声を出していた。


 大柄の1人の男らしき人物が馬車にものすごい速度で向かっていくのだけ見えた。

 次の瞬間


 ――それが、空高く舞い上がる。


 男ではなく、空を飛んでいるのは馬車だった。


 重さ1トンは下らない重量物が空中を飛び上がり、地面に落ちると地面が馬鹿みたいに

揺れた。


 それを1人の人間が起こしている。


 胸の奥をそのまま揺さぶられるような、凄まじいショックが俺を含めて周囲を精神的に直撃する。


 まるで物語の向こう側の話みたいに実感が無い光景。


 次の瞬間、パニックが集団を襲った。


 「化け物ッ!?」

 「いやあっ!!!」

 「うわぁぁあああああああッ!!!」


 阿鼻叫喚、逃げ出す人々


 そんな騒ぎの中心にいる大男は、困ったように頭をかいている。


 「困ったな、目立つつもりはなかったのに、ちょうど曲がり角だったからやっぱ確認しないと

まずかったか……」


 そういい残し、男は、そのままどこかへ走り去っていった。


 男が走り去って直ぐ何人かの鎧をつけた兵士が、現れる。


 「くそっ、逃がしたか!?」

 「まだ町は出ていない!!追うぞ!!」

 彼らは、そこで粉々に砕け散った馬車に気がつく。


 当然中にいる人間は、血まみれになっており、急いで担架で運び出すのが見えた。

 幸い、馬車の屋根が頑丈で、中に入っているのが、塩や砂糖、布などであったため、それらが

 クッションになり、一命は取り留めているようだ。


 慌しく運び出されていくターバンを巻いた血まみれの親父は、既に意識がないらしく、歪に折れた右腕や両足にうめくことなくぐったりとしている。



 「驚いた……」

 異世界にはあんなのもいるのか……

 にしてもなんだか、人とちょっとずれてそうな人だ。

 目立つつもりはないって、めちゃめちゃ目立ってんじゃねぇか

 もっともそのおかげで誰も全裸の俺から視線がそれたわけだがら、ある意味ありがたいのだが。


 「はは……」

 俺は強がっていた。

 人一人殺しかける男に怒りを抱くよりも、恐怖が勝っていた、

 ……本気でイノチの危険を感じた。


 魅入るほどの、チカラ。

 幼馴染と戦った時を思い出してしまうほどの、いや、それ以上の圧倒的なチカラ。


 しばらく気を落ち着けることに専念した。

 体が震えている。

 怖いんだ。俺は弱い等身大の人間だから。

 そうして静かにじっとしていた。


 数分後、落ち着いた俺は、

 気を取り直してギルドを目指した。


 さほど時間も掛からずギルドに辿りついた俺は、メクロ討伐というGランクの今の俺に、手ごろな依頼と服を手にして、すぐに依頼にいくことになった。


 ……正直裸でもいいかなと思い始めていたのは秘密である。



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