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森で助けた少女との再会とルティアの弱み


 しばらく俺たちは歩いているとシリアが目的地の到着を告げた。


「見えてきましたね、あそこがこの町で私がおすすめの雑貨屋ですよ!」

 

 シリアの言う通り

 視界の片隅、町の大通り近くに一軒の店が見えてきた。


 赤い屋根をした、看板に手書きらしき丸っこい文字で『森の雑貨屋 リーエンス』と書かれている。


 ドアノブを引き、店の中に入ると、一人の店員がお辞儀で出迎えてくれた。


 「いらっしゃいませ」


 見れば、茶色い髪の可愛らしい小柄な少女が店番をしているようだ。

 なぜか俺に近寄ってきた。


 なに?俺の格好なんか変?なとどいじめっ子時代にしていた俺特有の被害妄想を炸裂させ、

 内心ひそかに戦慄していると

 

 「あっ、この前はどうもありがとうございました!」


 笑顔で礼を言われた。

 なんでや?

 

 「ん?」


 よく見れば、雑貨屋の少女には見覚えがあった。

 確か森でラプターに襲われていた冒険者の子だ。


 「あ、ああ」


 森とギルドで2度逃げられたから、なんか調子狂うな。

 まあ、森でこの子を守るためとはいえ、

黙ってじっとしてろとかしゃべったら首切り落とすぞとかさんざん脅したから無理もないことなんだが。


 俺の場合、できることならなんでもしておく。この少女が余計に動いたり、叫んで他の魔物をこれ以上

 引き寄せないために、言葉で脅したのだ。


 倫理的には褒められないことだが、俺にとっては、子供が襲われようとするなら大げさな言葉で警告する大人と似たようなものだと考えている。


 それでもあのとき俺を見た時の怯えた目は、クラスメイトに嫌われていたときの悪意や嫌悪、嘲笑に満ちた敵意の視線とは違った恐ろしさがあった。


 誰かに自分を、怯えられるのはつらいと感じないはずがないのだ。


 しかし、今あの時俺が、感じた辛さや虚しさなどなかったとでもいうかのように

 少女は、俺に向かって丁寧に頭をぺこりと下げている。

 

 「私、サラといいます。この前は逃げてごめんなさい、私、冒険者でも採取専門で強くないから、ああいうのに慣れてなくて」


 ラプターは最下級だから、この子は冒険者見習いだろうか?

 ランク Iは、冒険者登録はしたものの、冒険者試験を突破していないために採取依頼しか受けられない者たちの総称だ。


 冒険者ギルドの討伐依頼は最下級でも採取専門のものでは荷が重い。

 子供程度の力でも倒せる魔物や機械などおらず、どんな討伐依頼でも危険が付いて回る。


 この少女は、森に入ってラプターなどの魔物や機械から常に逃げ回っているのだろうか?

 そう簡単に森で何度も運よく逃げられるとは思わないのだが


 腑に落ちない部分を感じつつ、まあ、そういうこともあるかと気にしないことにした。


 「あの、あにかお求めですか?」


 「そうだな、ポーションと」


 「かしこまり……え?」


 商品が陳列された棚に歩いて行こうとしていたサラは直前であるものを目にして動きを止めていた。

 その視線の先には、俺達の中で一番背の高い男、ルオスがいた。


 「な、なんで、その男が、領主様と一緒にいるんですか?」

 

 サラは、ルオスを目に入れた瞬間から、怯えを見せたものの、感情の猛りが、どうしても抑えられないのかまなじりを気弱そうなものから、別人のようにつり上げ、唇をわなわなと振るわせ始めた。


 「お父さんが大けがしたのに!なんでその男は鎖もつけず、処刑もされていないんですか!?」


 それは物静かな少女が出すにはあまりにも苛烈すぎる大声だった。

 ルティアは、いつものように胸を張り


 「か、彼の処遇は、私が預かったの」


 居丈高に事実を口にすると思いきや、やや気おくれしたように目を背けつつ、そう答えた。

 その普段の傲慢さや強引さが欠片も見えない様子に不自然さを感じた。

 

 こいつ、このサラって子が苦手なのか?

 

 さっきの野次馬に対しての態度もぬるかったが、今回は一際だな。

知らない人が見てもそれはもうルティアの弱点と言えるほどに、表情から露呈してしまっているのだから。


 サラは、ルティアを強く睨み付けた。


 「やっぱリ私達、移民なんてどうでもいいと思ってるんだ!先祖がこの地の人間の血をひいてないから、私達を国民とは

みなしていないと思ってるんだっ……!」


 それに対し、なぜかルティアは戸惑ったように目を背ける。

 こんなに弱いルティアは初めて見るな。


 それにしても移民か、どうやらこの町は、移民の血を引く住民とそうではない元から住んでいた住民がいて、移民側は、貴族となんらかの対立があるようだな。


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