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あっけない交渉とルティアの突然の共闘宣言

 俺は今からこいつと交渉する。

できれば話が通じればいいんだが……


 近づいたことでこちらを向いた男の表情は困惑だが、内心は不明。

用心しておかないとな。


 「あ、あのちょっといいですか?」


 「なにか、ようかな?」



 「あなたは昨日走っている最中馬車を弾き飛ばしましたよね、その際この町の

住民に被害が出ています」

 俺がそういうと、男は暗い顔でうつむいた。


 「生まれつきこうなんだ、力が強すぎて」


 「配達依頼を受けたんだ、急ぎの依頼っていうから急いで届けようとして」


 「目立ったらいけないっていう注文があったからなるべく早く走って」

 目立ったらいけない?


 「どこでその依頼を受けたんだ?ギルドか?」


 「ギルドじゃないよ、ぼくは、登録を断られてしまったからね、ギルドを出て仕方なく歩いていたら、知らない男の人に困っているなら、仕事を紹介しよ

うか?っていわれたんだ」


 それ絶対怪しい仕事だわ。

 

 「運んでいるものはここにありますか?」


 「あるよ……ほら」

 男が懐から出したものは、俺も最近見たものだった。

 「ただの薬草か」

 見た感じ、森で助けた冒険者が採取してギルドに提出したものと変わらないように見える。

 こんなものをわざわざ運ぶ依頼などあるのか?


 こいつ適当なウソをついているんじゃ?と少し思ったが、もう少し考えてみよう。

 もし嘘ならこいつと決戦なわけだし、相手が話をする姿勢を持つのなら、ひとまずは、こちらもそれにしばらく応じてもいいだろう。


 男の言ったことが正しいと仮定して考えてみる。

 この男が受けた依頼は、できるだけ早く目立たないように、依頼で薬草を運ぶという依頼を受けた、だったな。


 普通に考えれば、この薬草にはそれほど価値はないだろう。


 なら視点を変えてみる。

 運んだものではなく、運ぶこと、もう少し言えばこの目の前の男に急がせることが目的だったのならどうだろう?


 実際昨日は馬車が空高く吹き飛ぶような大騒ぎだ。

 町の衛兵もこの男に注目して、他の場所の警備が薄くなっている可能性はある。

 だが、それが本当だとしても。


 「それでもあなたがこの町で犯した罪は償う必要がいると思いますよ?」


 「そうだね、その通りだ」

 俺の言葉に男は頷いた。


 「僕は、罪を償いたい、ならこれからどうしたらいいんだろう?」

 そして男は素直にそういいだした。

 なにを考えている?


 罪を償う?


 昨日の惨状を見る限り、犠牲者が出ていてもおかしくない。

 人が死んだのなら犯罪者として鉱山送りか、死刑の可能性があるんだぞ?

 なら死ぬ以外に償う方法などない可能性が高いだろうに。


 油断させるための策か?

 とはいえこれは俺が判断するべきことじゃない。


 「ちょっと待ってくれ、いま上の人に聞いてみる」




 「ちょっと、聞いてもいいですか?」


 赤い巨大な魔石のある杖にまとった光が、ふわんふわんと不安定に光り輝く中、

 ルティアは鋭い目つきで睨み付けるようにこちらを見た。


 この杖大丈夫か?なんかすごく不安定な魔力の動きなんだかと思いながら


 「なに?聞くなら早くして、もう詠唱終わって魔法完成しているんだから、早くしないと暴発しちゃう!」


 アブねぇ!

 けど、いざとなったら空にでも魔法を放ってもらうしかない。

 俺は自分の考え、あの男が知らずに犯罪関係の男に仕事を持ち掛けられた可能性と当然、その話が

嘘の可能性を伝えた。


 「ふーん、 まあこの町はギルドや領主館以外にも重要な場所はあるから、可能性はあるわね」


 「当然嘘の可能性もあるけど、それは調べれば割とわかることよ、狙う場所もだいたい想像ついているしね」

 さすがにこの町の領主の娘なだけあって、町の内情には詳しいらしい。


 「いいわ、話した感じあなたの感覚では彼はどう映った?」


 「表面的な話なら彼は普通の一般人です。なした出来事は一般人とは程遠くても」


 「もし話がすべて本当だと仮定すれば、彼は、巻き込まれた被害者です。

話がまとまる可能性があります。彼は思ったより理性がある人間です。戦いも望んでいないようです」


「ただ彼の言うこと全て嘘だった場合のリスクも考えておいてください」


 「……いいわ、ひとまずここで暴れる気がないのなら、彼の話に合わせましょう」


 「わかりました。では、もしあの男が、罪を償うとしたらどうすればいいですか?」


 「罪を、そうね……」


 「それなら戦奴っていう刑罰があるわ」


 「闘いをする刑罰ですか?奴隷みたいな」


 「そこまでじゃないわ、闘い方までは束縛しないし、誰かを守って死ねとも言わないけれど、戦う相手だけはこちらが決めるから、強い魔物や機械とは真っ先に闘うことからは逃れられない」


 「私は見てないけど、報告を聞いた限り、あの男って相当強いんでしょ?」


 「被害者が死んでたらまずかったけど、治療院のおかげで幸い死人は出てないわ、だからあの男がするべきことは大きく分けて二つ」


 「まずは謝礼、あの男がこわしたものと怪我した人の治療費」


 「次に戦奴としてDクラスの魔物を何体か倒せば、一応法的な罪を償えるはずよ」

Dクラス、大型系統の魔物が出現してくるクラスだ。


 このあたりになると魔道機械と同等かそれ以上の敵が出現し始める。

 決して簡単な相手ではないが、ことあの男の力を考えればかなり譲歩してくれていると考えるべきだ。

 下手をしたら奴隷刑や死刑、そうでなくても体の一部を奪われる刑の可能性もあったのだから。


 俺は男のもとへ再度戻ってきていた。


 「聞いてくれ」

 

こちらは、内心身構え、いつでもインテグラルで迎撃し、離脱できるように備える。

 さあ、どうでる?


 「幸いあなたの行動で死人は出ていない、だから怪我した人への治療費の支払いと壊したものの代金、それと町を守るためにいくつかの危険な魔物を

倒せば貴方の罪は償える」

 俺はこの言葉を言った瞬間、男は硬直した。


 「そ、それでボクの罪が許されるのかい?」


 「そうだ」


 「おお、ありがとう、ありがとう」

 男は、感極まったのか地面に頭をつけて俺を拝み始めた


 「やめてくれ、俺は橋渡ししかしていない」


 「それでも助かったのは事実だ、ありがとう、本当にありがとう」


 「まずは手始めに誠意を見せてもらうわ」


 いつのまにか近くにルティアが来ていた。


 腰に手を当て、ルティアが気高に言う。

 「私達はこれからEクラスの機械『マジシャンキラー』の討伐に向かう。あなたもついてきなさい」


 その一言に、その私達ってもしかして俺も入っているの?と思わず不安になった。




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