ギルドの前のひと騒動と交渉依頼
あらすじ書き加えたり、段落整理したり、いろいろ見やすいように
試行錯誤中です。
ギルドに行く途中、巨大な人ごみができているのが見えた。
群衆の中央にはあの男がいた。
黒いズボンに白い布のようなものを体に巻き付けており、肩がでており、むき出しの筋肉は、盛り上がっていて、たくましさが垣間見える。
もちろんその肉体の力の一部を俺は既に知っていた。昨日この男の体がぶつかっただけで巨大な馬車を空高く吹き飛ばしていたのだから。
見たところ本人は走っていただけという態度だった。
それなのに、確か血だらけの重症のけが人も出ていたはずだ。
もはや力だけで、クラスメイトどころか、俺を殺しかけた幼馴染に匹敵しうる力の持ち主の可能性がある。
周りの人々は畏怖と嫌悪の視線をその男に向けている。
「丁度いいところに来たわねっ!」
そこにルティアの声がかかった。
見渡せば、群衆の向こうに、金髪の髪の毛がひょこひょこと揺れながら近づいてきていた。
白い特徴的な神官服を来た少女であるシリアを引き連れているからなのか、ルティア自身が嫌われているからか、周囲は、彼女に対して自然と離れて丁度モーゼのように人の海をかきわけていく。
気づく、周囲の人ごみの視線が俺にも集まっていることに。
これは…?
「ギルドに行く前に面倒な事態になっちゃったわ、その子は?」
「サリアです、俺の相棒の一人で、こう見えて俺より強いんですよ」
「ふーん、それは丁度いいわね!」
「丁度いい?」
嫌な予感がするな。
「領主の娘として町の問題は可能な限り解決する義務があるわ」
ルティアは、胸を張って、誰はばからず毅然とそう口にした。
「衛兵たちからすでに話は聞いているわ、とんでもない力の持ち主みたいね」
髪の先をいじりながら、ルティアはちらと目を群衆に囲まれた男に向ける。
俺はルティアに尋ねた。
戦闘に突入する可能性があるのに、この人ごみはいかがなものか。
「この野次馬は退避させなくていいんですか?」
するとシリアが
「ルティアさんは、言いましたよ!危ないから、ここから離れてと、けど、ギラルクの子息が」
自らの髪の先をなおも手でもてあそびながら、ルティアは、シリアの言葉に呼応し
「あの糞生意気な馬鹿貴族、よりにもよって私が領民に命令して従わせようとするのは、傲慢だとか
言ってきてね、領民の好きなようにさせるべきって言ってきたのよ!」
「ギラルク?」
さっき宿のお兄さんから聞いた貴族にあったな。
「このオデラスの隣の領地ですよ」
そこの跡取りって、ところか。
「にしても、他の領地の貴族にほいほい従うなんて」
だいぶまずい事態じゃ、処罰しなくていいのだろうか?
俺の視線に対しシリアは、うつむいていた。
「きっと何か事情があるんですよ」
野次馬と化した群衆に対して俺は、冷たい目を向ける。
「どんな事情があったにしても、危ない場所とせっかく忠告したのに、従わないなら自業自得ですよ」
ルティアは髪をいじりながら
「貴族に逆らえるものは少ないわ、ギラルクの貴族に脅されている可能性もある」
だが、その反論では弱い。
見たところ街中を衛兵が巡回しているし、ギルド何度の各施設にも兵がいる。
俺が昨日一瞬で囲まれたことからも、兵の練度は悪くない。
昨日街中で騒ぎを起こした時も、兵がすぐにかけつけてきた。
なにかやろうものなら衛兵たちが黙ってはいないだろう。
ましてやここは、ルティアのホームだ。
自分たちの領主の娘に従わず、他の領地の貴族に従っているなら普通処罰されても
仕方がないはずなのに。いくら嫌われているから、無礼を許されているといってもこれはさすがに……。
この人は俺には結構情け容赦ないのに、なぜ自領の人間に対してこれほど甘いのか。
俺の目には領民がギラルクの貴族がいってくれたのをいいことに、調子に乗っているようにしか見えない。
ルティアの髪の毛をいじる指はさっきからせわしない。
くせなのか、自ら綺麗に整えたであろう髪の毛が乱れてもそこに頓着する余裕が見えない。
実は内心かなりのストレスを感じているのかもしれないな。
「あなたに依頼するわ」
なおも髪の先をいじりながら声をかけてきた。
「依頼内容は」
「交渉依頼よ、報酬は、金貨50枚とかでどう?」
ちなみに小銅貨10枚が銅貨一枚、銅貨100枚が銀貨一枚、銀貨100枚が金貨一枚となる。パン一つが銅貨10枚前後、宿に泊まるときの額が銀貨一枚前後と考えるとその報酬の額が中々だということはわかるだろう。
「金額はいいですけど、交渉?」
「あなたが交渉しなさい!」
「えぇ?」
あの怪物じみたパワーの持ち主に間近で交渉?下手したら死にますがな。
さすがに断ろうかなと俺は逡巡した。