プロローグ
昔書いてたのを上げてみました。
連載はコツコツ行く予定です。
森の中に大きな影があった。
近くの馬車を覆うようなその影の本体は、悠然と木々の間にいる獣や魔物を威圧するように進んでいるため、近づくものは皆無だった。
見上げるばかりの巨人に誰が好んで近づくというのか。その威容は、あらゆるものをちっぽけに思わせた。巨体の割には小さなけれど荒々しい駆動音をたてながら、巨神が、前へと動く。
ただの4本の銀色の棒にいくつもの無骨な砲身を寄せ集めて作られたような異様な外見だった。
かろうじて足と呼ばれるものが3本あるとはいえ、その銃口の多さは、要塞にすら見える。
銀色の輝きを放つ、その機体の目的はただ一つだけ
撃って、撃って、撃ちまくる。
前に進むたびに決して小さくない足跡が地面に刻まれ、地面がかすかに揺れる。
そんな鋼鉄の巨大な機体は、現在護衛任務の真っ最中であるらしく、背後の離れたところに馬車を引き連れている。
全身銃でできているような機体と馬車を前に俺は、思案していた。
今の俺は、裸である。
ぶっちゃけ全裸である。
服もなく、パンツもない。
……いきなり出て行って撃たれたりしないよね?
想像してみる。
変態紳士の俺が、不審者と思われ一瞬で蜂の巣になる絵が思い浮かんだ。
くそっ、せめて、股間さえ隠せれば
辺りを見回す。
葉っぱとツルがあった。生えていた植物からそれらをむしりとり、
とりあえず下半身を覆うようにして、大きな葉っぱとツルをつけてみた。
やべぇ、こいつはヤベェ
現代社会の他の人が見たら即ムショ行きのモザイクレベルだ。思わず冷や汗が流れてしまう。
しかし、俺に選択肢はない。
涙を飲んでツルと葉っぱで作った下着?を身につけている。
もう終わりだ。ただの学生である俺が、しかも思春期の俺がこんな屈辱耐えられるわけがない。
だが、だがしかし、まだ希望はある。まだ誰かに見られると決まったわけでは「そこにいるんでしょ?早く出てきなさい!!」ない
「な!?」
気がつけば、銀色に輝く巨大な銃口の先が、俺の隠れているしげみを捉えていた。
赤い巨人はこの世界で見慣れた人型魔道兵器『マギア・ロギア』と呼ばれるものだ。
「警告する。3秒以内に出てこない場合、問答無用で殺すわ」
機械に拡声された女の声が聞こえた。
……もうだめだ。うふ、うふふふふ、うっうっ、うわぁぁあああああああ!!
これでもそれなりにまともな人生だったのに、人に裸を見られて興奮するなんてこともないまともな人生送ってたのに……ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、もう俺に残された道は変態紳士だけ
なら、おとなしく出て行ってやる。
そうやって素早く茂みから抜け出した俺を冷たく一瞥する機体。
はは、見たきゃ、見ろよ
するとめちゃくちゃ凝視された。
穴が開くほど
正直気恥ずかしくなりそうだ。
信長書○で教師とたまたま鉢合わせになったかのような気まずい無言の時が俺とその機体の間に流 れる。
だいたい10秒の時間後、
「な、なんで裸なのだ、おまえは!?」
どうやら俺の前衛的過ぎるファッションを前に、ショックで放心していただけらしい。
「盗賊に襲われて、着るものも含めて全部盗まれてしまったんです」
嘘だけどな、でも嘘も方便だと俺は信じている。
「そ、そうか。それは災難だったな……」
うう、人の同情が身に染みるっ!あと心が痛む!!
俺は、羞恥心を我慢して、情報収集を開始した。
「ここから一番近い村か町を知りませんか?」
「それだとオデラスという町が一番近いな」
なんだか見られるのが、気にならなくなってきた。
「町の門を通るときにギルドカードがないと通れないからな、ギルドカードは持っているか?」
「はい」
「うむ。なら問題ない。それじゃあな」
ついに見られるのが、快感になりそうだった時に俺達は別れた。
心なしか早足で去って行ったような気がする
「意外と悪い人じゃなかったみたいだな」
正直拍子抜けした。
この世界に着てからまだ日は浅いが、こういう人もいるんだなと思い知らされる気分だ。