さぁ!仕事開始……え?準備があるから二日待てって?
俺は今、紅魔館のエントランスに居た。
咲「という訳で、二日間は好きにしていいわよ」
詩「え…と、神社に帰るとしても、僕は空が飛べなくて……」
レ「衣食住に心配しなくていいわ。この二日間と仕事の一週間はこの紅魔館が貴方の家なのだからね?」
詩「は、はぁ、それは有難うございます」
咲「まぁ、貴方のスケジュールを決めるのに掛かる時間と考えたらいいわ」
詩「……きっと膨大な仕事量なんでしょうね」
咲「あら?そんなことないわよ?」
意外と簡単なのかな?
咲「きっとじゃなくて、必ずよ?」
逆だったか……
詩「はは、は……頑張りますか!!」
俺は気持ちを持ち上げ、やる気を向上させる。
レ「ふ~ん?案外心強そうね?」
それを見たレミリアさんは、何か感心していた。
そんな訳で、俺は紅魔館を追い出された。
まぁ、やることがないので外に出ただけなのだが。
とりあえず、紅魔館の周りの地理でも把握しておきますか。
俺は門にたどり着く。
詩「ん?この人は……」
俺は、門の隣で立って寝ている人を見る。
名前は確か……
詩「紅美鈴さん。だったかな?」
咲夜さんからは、中国だとか言ってたけど俺は流石にそう呼ばない。
詩「ちゃんと名前があるんだ。きちんと名前で呼んで上げないと本人が可愛そうだ」
まぁ、その本人は、ぐっすりと眠っているのだが……
俺は目の前まで行って、手を振る。
起きない。
次に首を掻く。
美「ん~?」
少し反応した。
そこで俺は行動を止めた。
これ以上やったら可愛そうだし。
せっかく気持ちよさそうに眠っているんだ。
俺はその人の横に立つ。
本当は紅魔館の周りを歩こうかと思ったが、美鈴さんの代わりに門番でもやっておくか。
詩「ふぅ、何となく、眠りたく気持ちも分かるな……」
今日の天気はとても快晴だった。
太陽はかなり眩しいが、そこまで熱くはなく、ポカポカの陽気だった。
俺がそんなことを考えていると、近くの茂みから、狼みたいな奴が現れた。
だが狼ではない、それは何故か。
狼の形はしてるが、存在が安定していなかった。
コイツが俗に言う、妖怪、というものだろうな。
狼「ゴアアァッアァ」
詩「美鈴さんが起きるだろうが!」
ドカァ!!
俺は瞬時に近づいて、思い切り蹴飛ばす。
狼なら投げ飛ばす程度で収まったが、今回は妖怪。
しかも、邪な感情しか感じない存在だ。
加減は……いらない。
ガサガサ!
詩「……今日の暇つぶしは、れっきとした門番になりそうだな」
茂みからは、狼の仲間なのか色々な生物が現れる。
30……くらいだろうか?
詩「俺の能力は、防御に適しているし、身体能力も心配ないから大丈夫だな」
俺は構える。
詩「来いよ、美鈴さんの睡眠を邪魔するってんなら……月までぶっ飛ばしてやるぜ?」
ラジカルドリーマー格好良いよね?
-紅美鈴Said-
私はふと、何かの気配を感じたので、目を覚ます。
美「この気配は、下級の妖怪の群れ、でしょうかね?」
私は壁から背を離すと、すぐに構えたが……
美「ん、あれ?誰かが先に戦っていますね?」
私は目を凝らす。
そして、声が聞こえる。
詩「来いよ、美鈴さんの睡眠を邪魔するってんなら……月までぶっ飛ばしてやるぜ?」
!??
え?え?
私の睡眠の邪魔って……
もしかしてあの人、私が眠っている間。私の代わりに見張ってくれていたの?
そして、妖怪が来たから、その対応も私の代わりに?
彼は動いた。
詩「せいや!」
ズガン!!
彼は地面を思い切り踏みつける。
美「えぇ!!-震脚-!?意外と高度な技を……って」
私は地面を見るが特に揺れる気配はなかった。
美「一体何が目的で……!!?うそぉ……」
妖怪の群れを見ると、全部ではないが半分位の妖怪が宙を舞っていた。
詩「うまく行くとは思わなかったぜ!」
本人も出来ると思っていなかったの!?
すると、彼が振れる。
否、高速で妖怪に近づいていた。
詩「まずは3体!」
彼は一瞬という時間の中で、妖怪を3体屠った。
詩「4、5、6、7の……10!」
美「動きは完全に素人ですが、手際の良さには目を見張るものがありますね……」
これで、拳法などを使えるようになれば、かなりの腕前になるかも……
詩「もう……いいかな?」
彼は動きを止めた。
美「後半分くらいは残っているのですがね?」
私は行動を確認する。
詩「聞け!!!」
彼は大きい声で妖怪に話しかける。
妖怪たちも、動きを止める。
詩「これ以上、犠牲になりたくなければ、この場から去れ!!」
妖怪たちは、急な話なので、戸惑っていた。
妖怪と言っても、考えることは出来る部類みたいですね。
詩「警告は一回までだ!!去るやつはすぐに消えろ!!」
妖怪たちは、すごすごと森に……
詩「もう一つの警告だ!!」
妖怪たちは振り返る。
詩「ここら辺はこれから俺の縄張りにもなる!痛い目に会いたくなければ、遠くに逃げるんだな!!」
妖怪たちは、走るスピードを上げ、森の奥に消えていった。
彼は、森に逃げていった妖怪を見届けると、ほっと息を下ろしていた。
詩「これで、多少は門番の仕事も楽になってくれるといいな…」
美「!?!?」
また、私のための行動だったんですか!?
この人は、見ず知らずの私に、なぜそこまでするのでしょうか?
そして、彼はこちらに戻ってきた。
美玲said-end
俺は美玲さんのところに戻る。
詩「あれ?起きてたんですか?」
美「は、はい!その、お疲れ様です!」
美玲さんは何故に敬語を?
詩「どうしたんです?初めてにしては、随分と硬いですが……」
美「いえ、門番の手伝いをしてもらったばかりでなく、撃退までしてくださったので……」
詩「ありゃま、どこからみてたんですか?」
美「え、と…-来いよ、美鈴さんの睡眠を邪魔するってんなら……月までぶっ飛ばしてやるぜ?-のところから……」
詩「……最初からじゃないですか」
まさか、聞かれていたとは……
詩「まぁいいや、美玲さん」
美「はい?」
詩「いい夢は見れましたか?」
美「///…はい」
詩「それは良かったです」
そんな話をしてると、門から気配が一つ。
咲「美玲、また寝てるんじゃないでしょうね……って、あら?起きてたの?」
咲夜さんだった。
咲「美玲が起きてるなんて、珍しいわね?何かあったの?」
美「それが……ようか」
詩「何もありませんでしたよ?」
俺は横から口を挟む。
美玲さんは驚いた顔でこちらを見る。
詩「俺がここに来てからも、美玲さんは起きてましたしね。この周辺を歩くついでに、美玲さんに地理情報を教えてもらっていたんです。ね?美玲さん」
美「え?え、えぇそうでしたね」
美玲さんは訳も分からずに返事を返してくれた。
咲「ふぅん、今日は真面目に門番をやっていたみたいね?」
咲夜さんは感心したように頷いていた。
というか、真面目にやっているだけでこんなに感心されるとは……
美玲さんはどれだけ居眠りをしていたんだ?
咲「なら、久しぶりにお茶でもどうかしら、美玲?」
美「!!!!???ほ、本当ですか?!」
咲「嘘をついてどうするのよ?ついでに詩音もどうかしら?」
詩「俺はいいですよ。この森の周辺を回ってみようかと思いますしね」
俺は咲夜さんにバレないように、美玲さんにウインクをする。
詩「じゃ、俺はそろそろ行きますね?」
俺はすぐさま踵を返すと、真っ直ぐに森の中を目指して歩いて行った。
美「詩音さん……」
咲「……ま、今回は詩音の顔に免じて、居眠りは不問にしてあげるわ」
美「やっぱりばれていましたか……」
咲「でもま、お茶くらいしても、バチは当たらないわよ。詩音もそれを望んでたみたいだしね」
美「お礼、まだ言ってませんでした……」
咲「彼は、一応ここの住人よ。帰ってきたらお礼でも言いなさいな」
-霧の湖周辺の森-
詩「確か、この辺りが湖の中心だったはずなんだが……」
どこにも湖が見当たらない。
詩「水の音や匂いが解かれば問題ないんだがなぁ」
俺は途方に暮れていると、どこからともかく声が聞こえる。
?「チルノちゃん!流石に多すぎるよ!」
?「大丈夫だって大ちゃん!全部アタイが氷漬けにしてやるんだから!」
どこかで聞いたことがある声だった。
そういえば、彼女たちには羽がついていたな。
ここらへんに住んでいる妖精なのだろうか?
問題解決のついでに、道でも訪ねようかね。
俺は彼女たちの居場所を見つけると同時に、一気に駆け抜ける。
詩「今日は、戦闘ばっかりだな。ま、そんな日もあるだろう」
大妖精side
大「チルノちゃん、逃げようよぉ」
チ「大丈夫!こんな小さいカエルどもに、アタイが負けるはずが……」
バシャァァアアアア
湖の中心から、とてつもなく大きな波が立ちました。
その水が開けると……
「ゲロァァァァアアア!!!」
大「なっ!?一週間前までは、何もなかったのに」
チ「で、でかい……」
30メートルくらいでしょうか?湖はかなり大きいので、そんなに目立たないでしょうが、近くでみると、かなりの威圧感です。
そんな化けガエルが現れました。
大「チルノちゃん!流石に無理があるよ!急いで逃げよう!?」
チ「む、むぅ…今日は見逃してやるんだからな!頭を洗って待ってろよ!」
そこは首だよ、チルノちゃん……
そんな中、私たちは空を飛んで逃げようとしましたが……
「ゲロァァァ!!」
ドシュウ!!
何かが、私たちの横を飛んで行きました。
ドドドシュウ!!!
この何かは、化けガエルの口から吐き出されているものでした。
チ「大ちゃん!アイツ口から水を出してるよ!?」
大「それに私たちを狙ってる!?」
そして、とうとう……
チ「あぐっ!?」
大「チルノちゃん!?」
チルノちゃんは、羽に水鉄砲が被弾し、加速しながら落ちていく。
私は急いで、チルノちゃんに駆け飛ぶ。
私は、チルノちゃんを抱え込みながら、地面に降り立つ。
大「チルノちゃん!大丈夫!?」
チ「いたいよぉ、いたいぃ……」
更に、悪いことは続く。
化けカエルは、好機と思ったのか追撃をかけてきます。
私は、せめてチルノちゃんを守ろうと、背中を向けて、思いっきり目を瞑った。
詩「セリャァァァアアア!!」
バチィィィィン!!!
大妖精side・end
俺は左手を真っ直ぐに構えた状態で、化けガエルに睨みを効かせる。
詩「おいカエル」
カエルは、そんな気迫に押されたのか、若干下がり気味だった。
詩「こんなことして……ただで済むと思うんじゃねぇぇぇぇぇぞぉぉぉぉぉ!!!!」
俺は一気に駆け出す。
「ゲ、ゲルァァァ!!」
化けガエルは、バカ高い声を上げた。
すると、周りに居た小さいカエルが、我さきにと俺に向かってきた。
詩「こういう集団戦は、さっきの妖怪の時に解決済みだバカ野郎!」
俺は走りながら、空中に身を投げ出し身体を思い切り捻る。
詩「纏めて吹っ飛べやぁぁぁぁ!!」
三回転ぐらいしたあと、思い切り右足を振り抜くと、風が前方に舞い踊る。
俺の身体能力って、自然現象が起こせるレベルなんだな……
そんな甲斐もあったのか、小さいカエルどもは纏まって化けガエルのところに集まった。
詩「しぃぃずぅぅめぇぇやぁぁ!!」
俺は、自分もろとも、波飛沫を浴びながら湖の底に化けガエルどもを押しやった。
しかし、なおも化けガエルは抵抗する。
詩「ぼべばば、ぼうびっぼう!!(それなら、もう一丁!!)」
一気に浮上してきた化けガエルは水面に躍り出る。
俺は、化けガエルに押される形で一緒に水面に出た。
勢いは消されることなく、湖の外に飛び上がる形となった。
詩「おりゃぁぁ!!地球投げぇぇぇ!!!」
俺は、飛び上がった勢いを使って、化けガエルを空中で後方回転で回し、頭から水面に叩きつけた。
ドッパァァァァアアアアアンン!!!!
かなり高い波飛沫が立った。
その水しぶきの中に小さいカエルが居たのを、俺は知らない。
化けガエルは、気絶したのか、そのままゆっくりと底の方に沈んでいった。
俺は終わった安心感を味わっていると、急に体が冷える。
俺は急いで、水面に出た。
ばしゃばしゃばしゃ
俺は、こんなにも早く飛びたいと思ったことはなかった。
詩「空が飛べたら、こんな冷たいところを泳がなくて済むんだがな……」
俺は、湖から急いで上がったが……
詩「さささささ、さみぃぃぃ!?」
俺は全身を震え上がらせる。
どんなに身体能力が高くても、耐性はついてないみたいだった。
大「あ、あの!大丈夫でしたか!?」
そこに、緑の髪の色をしている妖精に話しかけらてた。
詩「ケガはないがががが、とててててつもなく寒いででです、はいぃぃ」
寒すぎて、言語がおかしくなっているぜ……
大「で、でしたら、私の家に寄りませんか?」
詩「こんな見ず知らずの男を、家に入れてくれるのかい?」
大「その、貴方は私たちを助けてくれましたし……湖の問題も解決してもらいました。それに……」
緑の妖精さんは、俺の全身を見据える。
大「寒そうですし……」
詩「……寒いのは確かだ」
俺は、盛大なくしゃみをすると、緑の妖精さんに素直についていった。
大妖精の小屋
詩「しかし悪いな、服も借りちゃって……」
女物の服ではなく、麻の布で出来た簡易な服だけどな。
大「いえ、これくらいしか出来ないですし……」
詩「それでも助かるよ。君みたいな優しい妖精に出会えて良かったよ」
大「そ、そうですか///」
それにしても、すごいな。
詩「妖精は皆、家を持っているのか?」
大「いえ、持っているのは私くらいなものですよ?」
詩「何でだ?」
大「私たちに本当は居場所は必要ないんですよ。魔力さえあれば生きていられますしね」
詩「なるほど、つまり……仲間、いや、友達と集まるための目印みたいなものなのか?」
すると、緑の妖精さんは驚いていた。
大「凄いですね、そこまで分かっちゃうなんて」
詩「まぁな、でももっとすごいのは君だよ」
大「え?」
詩「皆の帰ってくる居場所を君自身が作ったんだ。とても尊敬するよ」
大「……」
詩「っと、変なことを言ったなら謝るよ……」
大「い、いえ!そういう訳ではなくてですね……嬉しかったんですよ。まさか、分かってくれる人がいるなんて思わなくて……」
緑の妖精さんは、目に涙を浮かべながら微笑む。
詩「…湿っぽい話はここまでにしようか」
大「ふふ、照れているのが良く分かります。」
詩「うるさい、ほっとけ」
チ「うう~ん?」
青の妖精さんが起きたみたいだ。
チ「ここは……大ちゃんのお家?」
大「あ!良かったチルノちゃん!目が覚めたんだね!」
緑の妖精さんは嬉しさの余り、青の妖精さんに抱きついた。
こんな風景を目にすると、とても微笑ましい。
俺は思わず、口元が緩んでしまうが分かる。
チ「ところで大ちゃん、アタイの傷って大ちゃんが治してくれたの?」
大「ううん、治してくれたのは……」
緑の妖精さんは俺の方に目を向ける。
詩「や、久しぶり、かな?」
チ「おお!この前学校に来てた人だな!!」
詩「覚えててくれたのか、嬉しいよ」
チ「アンタがアタイを治してくれたの?」
詩「まぁな、ここに連れてくる途中でささっとな」
本当、俺の左手は便利だ。
防御に回復、後衛には最適の武器だ。
チ「ところで、カエルは……」
詩「多分、もう悪さはしないだろうさ。湖の底に沈めてやったし、反省くらいはしてるだろ」
チ「!!?あのカエルをやっつけたの!?」
詩「そのおかげで、ずぶ濡れになったがな」
俺は簡単に今までの経緯を話す。
チ「すっごいんだなぁアンタは……」
詩「はは、俺のことは詩音でいいよ。アンタは他人行儀で嫌いだな」
チ「わかったよ詩音!アタイもチルノって呼んでね!」
大「私も大妖精か大ちゃんでいいですよ。皆にもそう呼ばれてますし」
詩「オッケー、改めてよろしくチルノちゃん大ちゃん」
俺はこの日、夕日が見えるまで二人と楽しく話し込んだ。
詩「っと、もうこんな時間か。そろそろお暇させてもらうよ」
チ「えぇ!?もう?まだ大丈夫だろ?」
大「ダメだよチルノちゃん。無理を言っちゃ。」
こんな短い時間なのに、とてもなつかれたみたいだ。
だが、悪い気は全くしない。
詩「まぁ、明日も暇ではあるから、この周辺を案内してくれると助かるんだが……」
チ「はいはい!!アタイが案内するよ!この周辺はアタイの庭みたいなものだからね!」
大「差し支えないのなら、私もご一緒します」
詩「ありがとう二人共、助かるよ」
俺は椅子から立ち上がる。
詩「それじゃ、また明日。集合場所は……」
大「皆の集まる、この-場所で-」
詩「はは、了解。この-場所-だな?」
俺は思わず口が緩む。
そして俺は、大ちゃんの家を後に紅魔館へと足取りを進めていった。
チルノside
詩音…か。
楽しい人間だったな。
チ「早く会いたいな…」
大「なら、明日の為に早めに寝ちゃおうか?」
チ「う~ん……よし!今日は寝ちゃおう!」
アタイは早く明日が来るように、急いで寝る準備を始める。
大「ふふ、こういう時だけ、チルノちゃんは積極的だね?」
チ「だって、楽しみなんだもん!」
早く明日が来ないかな?
大「さてと、私も寝る準備を…………え?」
チ「どうしたの大ちゃん……大ちゃ、ん?」
大ちゃんの後ろには、ナイフを突きつけている男が立っていた。
チルノside・end
-紅魔館-
詩「いやぁ、戦闘ばかりだったけど、楽しかった」
レ「あら?誰と戦ったのかしら?」
詩「人ではないですね」
咲「あら?弾幕ごっこ以外での戦闘?珍しいこともあるのね」
詩「……弾幕ごっこってなんですか?」
皆は驚いた顔になった。
レ「詩音は、こっちに来てからどれくらいたったのかしら?」
詩「2週間くらいですかね?」
咲「普通はすぐに教えてもらえるのだとおもうのだけれど……」
霊夢は特に教えてくれなかったな。
フ「じゃあじゃあ、スペルカードも知らないの?」
詩「スペルカード?何かを唱えるのか?」
レ「本当に何も知らないのね……」
-少女達説明中-
詩「へぇ、面白いですね。つまり不殺を目的にした戦いなんですね」
レ「簡単に言うとそうね」
詩「誰がこんな大規模なルールを?」
咲「妖怪の天敵、博麗霊夢が提案したのよ。」
詩「霊夢が、ねぇ。流石だな……」
美「咲夜さん、そろそろご飯にしましょうよ、お腹減っちゃいました。」
咲「そうね、ちょっと待ってて」
咲夜さんは銀の懐中時計を取り出し、竜頭を押す。
その瞬間、世界が息を潜めた。
咲「さて、料理を…」
詩「さ、早く持ってきましょうよ。美玲さんが待ってるみたいですし」
咲「……何か、私の他に時間の中を動ける人がいると、違和感しか感じないわ」
詩「人間は慣れに強いですから大丈夫ですよ」
俺は厨房に料理を取りに行く。
咲「それもそうね、早く運んじゃいましょうか」
詩「はい」
俺と咲夜さんは、3回くらい往復して料理を運び終えた。
詩「初めての夜ご飯ですけど、毎回こんなに多いんですか?」
咲「美玲が一番食べるけど、詩音も増えたからね、」
詩「何か、悪い気がしてきたな」
咲「大丈夫よ、よく食べてくれる方が嬉しいもの」
詩「お言葉に甘えさせてもらいますね?」
咲「あなたは遠慮なんて覚えなくていいのよ、その方が魅力あるわよ?」
詩「がめついのが魅力あるんですか?」
咲「そういう訳じゃないわ。あなただからこそよ。」
俺にはよくわからなかった。
そして、運び終わる。
レ「あら?今日は食事量が多いわね?」
咲「詩音も増えましたし、男の子ですからね、よく食べると思いまして」
フ「何か、パーティーみたいだね?」
美「そうですね」
俺は席についてから気づく。
詩「あれ?確かもうひとりいませんでした?」
レ「あぁ、パチェなら最近喘息が酷いから、こもってるわよ?」
詩「持病ですか。まだ正式な挨拶もしてないんですがね……」
咲「パチュリー様なら、図書館にいつも居るから良くなったら挨拶でも行きなさいな」
詩「そうしますね、じゃあ、いただきます」
レ「そうしなさいな、いただきます」
皆はそれぞれ、食事にありついた。
-食後の談話室-
詩「所で、やっぱり皆さんは空をとべるんですか?」
レ「なにを当たり前のことを聞くのかしら?」
詩「……当たり前ですか」
フ「普通に飛べるよ~じゃないと弾幕ごっこでは話にならないしね」
美「私は格闘系なので、地上の方がいい気もしますがね?」
詩「そうか、飛べないと話にもならないのか……この先が辛いな」
咲「あぁ、そういえば詩音は飛べないのだったかしら?」
レミリアさんとフランさんは驚く。
レ「どうやってここまで来たのかしら?」
詩「空にぶら下がってきました。」
フ「よく生きてたね!」
飛べないと死ぬ前提!?
詩「やっぱり、飛べるようにならないとダメか……」
レ「……詩音、あなた弾幕は出せるのかしら?」
俺以外の人が固まる。
詩「弾……幕……?」
咲「弾幕ごっこの基本攻撃よ」
……知らない。
レ「ま、まぁ、物は試しよ。あっちの壁に当ててみなさい」
詩「壁が……」
フ「大丈夫だよ!本気でも出さない限り、私でも壊れない壁だから!」
丈夫な壁だな……
詩「出し方は?」
美「えぇと、手の平に集中して、それを前に押し出す感じですかね?」
俺は手の平を前に出して、集中する。
詩「……………………っは!!!!」
咲「……何も出ないわね」
レ「気配すらもなかったわね」
詩「ふぐっ……」
どうする!?この世界の基本が出来ない俺はやっていけるのか?
美「詩音さんはなにを思いながら弾幕を出そうとしました?」
詩「え?……球体かな?弾幕っていうくらいだし」
美「なら、レーザーとかどうです?一応そんな弾幕もあるらしいですし」
フ「そうだね、魔理沙のスペルカードもレーザーも打てるから、可能性はあるんじゃない?」
俺はもう一度試す。
詩「レーザー、……っふ!!」
俺の手から何かが飛び出る。
咲「お嬢様……今の見えました?」
レ「残念ながら…ね」
フ「わぁ!早かったね~」
美「やりましたね詩音さん!」
詩「え?あ、あぁ」
俺は壁まで歩く。
そして、注意深く見つめる。
詩「2センチくらいの穴があるな」
レ「貫通効果もあるのね…」
咲「弾幕の域を超えてますね…」
詩「よほどの限り、弾幕ごっこでは使えないですね……」
俺は天井を見上げる。
美「大丈夫ですって!練習すれば色々な形の弾幕を出せるようになりますよ!」
詩「そう、だね。ありがとう美玲さん」
美「い、いえ///本当の事を言っただけですから。頑張ってくださいね?」
詩「練習を積み重ねるしかないな。弾幕ごっこのためにも」
レ「なら、スペルだけでも弾幕ごっこで活かすしかないわね?」
咲「そうですね、弾幕ごっこで弾幕を使えないのは辛いですからね」
詩「そのスペルとかスペルカードとかって、具体的にはなんなんですか?」
咲夜さんは、懐に手を入れる。
そして、カードを取り出す。
咲「これよ」
詩「それって……襲撃者が来た時に使ったやつですか?」
咲「そう、-幻世ザ・ワールド-よ」
詩「へぇ、やっぱりみなさんも持ってるんですか?」
周りの皆は、各々にカードを取り出す。
レ「私のは-紅符・不夜城レッド-とかよ」
フ「私のは-禁忌・クランベリートラップ-とかだよ」
美「私は-華符・芳華絢爛-とかですね」
詩「おぉ、何かレミリアさんのスペルカード格好良い響きですね?」
レ「ふふん♪でしょ?」
咲「……」
フ「……」
咲「そ、そうですね?」
詩「それはどうやって手に入れたんですか?」
レ「そうねぇ、咲夜、うちに余りはあったかしら?」
咲「どうでしょうか……魔理沙がいつも盗みに入りますから……」
レ「っく、コソ泥風情が……」
美「うぅ、済みません……」
詩「盗み……ですか。」
魔理沙は盗みを働いているのか……
そういう事に手を染めて欲しくない。
多分次も来るだろうから、俺が止めてやらないとな。
咲「とりあえず、在庫を見てきますね?」
瞬間、世界が止まる。
詩「そのカードってどこに保管してるんですか?」
咲「確か、地下の保管庫に収納されているはずよ?」
そこで俺たちは保管庫に向かった。
咲「これでもないわねぇ……」
詩「これか?……なんだ、レミリアさんのプロマイドか……」
咲「それは私が預かっとくわ。これでもないわね……」
詩「これかな?……フランさんの写真か……」
咲「それも預かっとくわ」
詩「これは……フランさんとレミリアさんの昔の写真かな?」
咲「それを早く寄越しなさい?」
詩「ふぅ、これだけさがして一枚か……」
咲「大丈夫よ、霊夢は沢山もっているはずだから」
そんな咲夜さんの顔は、とても輝いていた。
なぜだ?
俺と咲夜さんは、談話室に戻ってくる。
そして、丁度世界は動き始める。
レ「ん?行ってきたのかしら?」
詩「はい、一枚だけですけどね?」
レ「ぬぐぐ、50枚はあった記憶があるのに……」
咲「私たちにはスペルカードの素は作れないですからね……」
美「それで、スペルカードはすぐに作るんですか?」
詩「そうですね、今すぐにでも作っちゃいましょうか」
俺はカードを持つ。
そこには、真っ白なカード。
そして、俺は考える。
詩「どうやって作るんですか?」
美「はは……さっきと同じ感覚ですよ?念じてください……貴方の思いを、スペルカードに」
俺は手に集中する。
俺に……
自由を魅せる為の翼を!!
俺の手元は光り輝き出す。
詩「っっっ!?……これが、俺のスペルカード?」
俺の手元には、一枚の白い翼が描かれているカードが。
レ「へぇ、綺麗なカードね?」
フ「可愛らしさもあるね!」
美「素敵なカードですね、おめでとうございます!」
詩「使ってもいいですかね?」
咲「今夜はもう遅いから、また明日にしなさい?」
詩「うっ、そうですね、明日まで我慢します」
レ「ふふ、それが一番ね。楽しみは後になるほど素晴らしいものよ?」
美「明日が楽しみですね!」
俺、今夜は眠れるかな?
そんな事を思いながら、この夜は更けていった。