✝-最強の吸血鬼と最凶のトラウマとただの記憶喪失-✝
-レミリアsaid-
レ「きっさま!!」
?「おっと?いいのか?俺に攻撃をしても?」
レ「ッギリ!!」
コイツ、一体何者なの?
多分身体能力はそこらの人間と同じはず。
しかし、能力が……
?「ふーん?反抗的な目つきだな?なら……」
男は、突如として私の妹の方に目を向ける。
レ「なっ!?貴様!!」
?「ははは!これは傑作だ!この妹君にはまだこんなにもトラウマが眠っているのか!」
?「ぐぅ!?」
私の妹、フランドール。スカーレット。
今までは、地下室に幽閉していたのだけれど、この男のせいで、外に出されてしまった。
?「それなら、ほほう?妹君よ。君はおねぇちゃんが大好きなんだね?でも……そのお姉さんが君を地下へと閉じ込めた。これは覆らない事実何だよ?」
フ「知ってる、それは私が悪いからで」
?「イヤイヤぁ!本当はこう思っているのだろう?……憎い、殺したい、なぶりたい、壊したい……とね」
フ「ッ私は!!」
?「っふ、-闇の叫び声-」
フ「うあああああぁぁぁぁあああぁぁぁあああああぁぁあぁあ!!!」
レ「フラン!!」
こいつの能力、それは……
心の傷の体現化。
しかも、心理を覗けるおまけ付き。
別に声や気持ちを覗かれるわけではない。
過去をのぞき見られるということだ。
それを通じて、トラウマを見つけ出し、それを身体ダメージとして通す。
この能力は、長年生き続けてきた私たちにとっては天敵と言わざるを得ない。
レ「やめなさい!!」
?「は?なに?それが人に頼む態度なの?」
コイツ!……
レ「ッ…お願いします、妹を……離してください。」
私は頭を下げる。
すると、男は私に近づく。
そして、私の頭に手を置くと……
?「頭がたけぇんだよ!!」
ズガァァン!!
レ「ガハッ!?」
な!?コイツ身体能力も高いの!?
?「どうしてって顔だな?特別に教えてやる」
男は調子に乗ってきたのか、話を始める。
?「俺、実は転生してきてな、そこで、神様にあったんだよ」
レ「かみ、さま?」
?「そうだ、なんでも間違って俺を殺したみたいでな?そのお詫びに、好きな世界に転生する権利と、能力を二つだけもらえたんだ」
レ「……」
にわかには信じ難い話の内容だが、今は信じ得ざるを得ない状況。
?「そこで俺はいったのさ、身体能力の最大限の向上と今みたいな……」
男はフランを見る。
?「人の心の傷を、身体のダメージにする能力をな!」
レ「くそっ、汚い野郎め」
?「あ?今なんつった?……今なんていったんだぁぁぁぁ!!!」
ドグシャァァァ!!!
レ「あぐぁ!!?」
私は頭を思い切り振り抜かれる。
頭が割れるように痛い……
意識が朦朧としてきた。
?「っち!本当は惨めに生かしといてやろうと思っていたが、止めだ。今すぐ殺してやる」
男はまた、足を私の頭に置くと、徐々に力を込め始める。
ミシミシッ!
レ「ガァアアアァア!??」
?「どうだ?ゆっくりと頭が割れていく感想は?あぁ?」
私はこんなやつに殺されるのかと思うと、涙が出てくる。
?「なんだ?泣いてるのか?ははは!傑作だ!高貴な吸血鬼様が、人間の俺に畏怖を抱いて涙を流してるぜ!」
くそ、こんなやつには、最後まで涙なんか見せたくなかった。
今だけでいい、神様でもなんでもいい。
たった一度だけでいい。
私の願いを叶えて。
フランを、私を……
レ「…………助けて」
?「なんだ?命乞いのつも」
ギギィ
男は扉の方を向いた。
私も同時に扉の方を向いた。
-レミリアsaid・END-
俺は今までの会話を聞いていた。
本当は様子見だけと思っていた。
しかし、思っていた状態よりも、ひどかった。
だから俺は思わず……
扉を開けた。
詩「すいませぇん、ここに呼ばれた者なんですけど?」
?「あぁ?今は取り込み中だ。出直してこい」
しかし、男は考え直すと、俺に話しかけてくる。
?「そういえばお前、見かけない顔だな?」
詩「良くわからないんですが」
?「……お前、ここが幻想郷だってのは知ってるのか?」
詩「勿論、今いる世界の名前なんですから」
?「ふむ、なら、東方は知ってるか?」
詩「とうほう?なんですそれ?」
?「……なるほど、転生者ではないのか」
男は納得した感じで、頷いていた。
詩「そういえば、ここの館の主って、あなたですか?」
?「ん?おお、その通りだ。良く気がついたな?」
詩「いえ、オーラで分かりますからね」
?「そうかそうか!お前はよくわかってるな!」
詩「あぁ……だから」
俺はその場から消えた。
詩「その足をさっさと……どけろぉぉぉぉぉ!!!!」
?「ぐぼあぁぁぁ!!??」
がががががががゴガァァァァァン!!!
男は、かなりのスピードで地面と摩擦を繰り返しながら、壁に思い切りブチあたっていた。
俺は、足元にいた少女を抱き起こす。
レ「コフッ!」
詩「いいよ、無理して喋らなくても、あなたが館主のレミリアさんですよね?」
少女は頷く。
詩「なら、少し待っていてください。すぐに助けがきますから」
俺はレミリアさんを抱き上げると、近くの少女にも近づく。
レ「ふら、ん」
詩「大丈夫、彼女も一緒にたすけるから」
俺は左手で、軽く肩に触れる。
少しだけだが、出血のほうが止まった。
これで、応急処置的にはなっただろう。
ん?回復も出来るのかだって?
霊夢の殺気を浴びたら、能力が一気に進化したみたい。
軽い傷くらいなら、回復させれるようになった。
俺は右手を前にレミリアさん。
左手を後ろにフランさんをおぶりながら、すぐに扉の前にたどり着く。
詩「済みません、扉の外に出したいのですが、両手が……ですので、ここで少し休んでいてください」
俺は左手で最後にレミリアさんに触れると、離れる。
レ「ま、て」
詩「まだ、無理しないほうが……」
レ「いい、から、き、ききなさい」
俺はレミリアさんの話を少し聞いた。
相手の能力と、身体能力の高さを。
詩「分かりました。では……」
俺は後ろを見る。
詩「おい、どうせまだ生きてるんだろ?」
?「っぐ!?てめぇ……」
男は、ガレキの下から現れた。
血だらけで……
詩「お似合いの格好だな、おい?」
?「殺す、てめぇはぜってぇころしてやる!」
男はフラフラと立ち上がる。
俺も、左手を構える。
?「てめぇは直に殺す!」
男は少し足を前にだす……
シュバン!!
男が目の前に突然現れる。
詩「!?ぜあぁ!」
左手で弾くように、男の右ストレートを防ぐ。
?「なに!?」
詩「っふ!」
?「ぼげぁ!!?」
男はまたも、壁まで吹っ飛ぶ。
しかし……
詩「(俺の身体能力が上がってるのか?吸血鬼を圧倒している男を、俺は更に上回っている……)」
この力は、どこまで上がるのだろうか?
でも、このまま押し切れば……勝てる!
だが……
後ろから、大仰に扉を開ける音が聞こえた。
霊「詩音!助けにきたわよ!」
魔「待たせたな!」
咲「お嬢様!ご無事ですか!」
やばい!?この状況は……
?「うごくなぁぁぁぁ!!!」
皆は一度、止まってしまう。
そこが一番の失敗だった。
?「そこのお前、よくも俺を何度も殴ってくれたな?」
詩「っち!?」
俺は先手を打とうと動こうとしたが……
?「おっと?いいのか?誰が傷つくのやら?」
詩「…………」
俺はその場で止まってしまう。
咲「お嬢様!妹様!あぁ、なんてお姿に……これをやったのは……」
咲夜さんは、俺の目の前の男を睨みつけた。
?「はっ!十六夜咲夜だよな?俺に逆らおうってのか?」
咲「黙れゲスが!今その口を開けなくさせる!」
咲夜さんは、どこからともかくカードみたいなのを取り出す。
なんだあれは?
俺は始めて見るものだった。
咲「-幻世ザ・ワールド-!」
詩「これは、止まった時間の世界……しかも俺も動けるのか?」
俺は周りを見る。
霊夢は止まっていた。
魔理沙は止まっていた。
レミリアさんは止まっていた
動けるのは、俺、咲夜さん、そして……
?「くくく、俺には時の現象はきかねぇぞ?」
男は笑いながら、一気に咲夜さんに近づいた。
咲「早い!?だが、見えないわけではないわ!」
二人は、格闘の壮絶な応接が繰り広げられていた。
俺は身体能力が上がっているせいか、二人の動きに全く驚異を感じなかった。
詩「あれ?チャンスじゃね?」
俺ってば、意外と……ひどい人間かも。
俺も一気に咲夜さんと男の所に近づいた。
二人は俺が早いのか、気づいて居なかった。
狙い目は……
詩「せあぁ!!」
?「な!?ぐべぁらぁあぁぁ!!?」
背中側の右脇腹中心部分。
あれでは、息をすることもままならないだろうな。
咲「うわぁ……不意打ちに適度な弱点特攻とかひどすぎないかしら?」
詩「何言ってる?レミリアさんを傷つけただけでなく、咲夜さんを攻撃していたんだ。容赦の欠片も感じないよ」
咲「……あなた、いつか後ろから刺されるわよ?」
詩「それって咲夜さんから?」
咲「いえ、色んな女性からよ」
詩「なにそれこわい」
こんな話をしていたが、決して油断をしていたわけでは無いと思う。
しかし、無常にも世界の時間は止まっても、俺たちの時間は動いていた。
更に不幸は続く。
ピキィィィン
詩「世界が戻った?」
咲「スペルブレイクよ、時間制限が終わった証拠よ」
スペルブレイク?
またも、俺の知らない単語が出てきた。
?「もう、許さねぇ……皆纏めて苦しめぇぇぇぇぇ!!!」
男は、所々が折れ曲がっており、出血が止まっていなかった。
だが、奴は普通に立っていた。
詰まるところ、余程のタフなのか……神経が死を予見して、麻痺してるのか、だな。
男は叫ぶ。
?「-闇界の絶望とともに-!」
霊「!?あぁぁああぁあ!!?」
魔「があぁぁぁぁあああぁ!??」
咲「ぐぅうぅううぅううぅぅ!?」
レ「ぐっ!?あぐっ!?」
フ「…っ!……っっ!!?」
詩「な!?一度に複数の人間を相手にできたのか!?」
?「ふはははははは!!!苦しめ!死ねぇ!惨たらしく死に晒せぇ!!」
俺は、左手が目に入る。
能力を複数に?
俺にも……出来るのか?
詩「……能力を、複数人に分けるイメージを強く。全体に振り分けるイメージを」
俺の左手が、感覚が、何かを感じ取った。
霊「くぅ……」
魔「ふ、うぅ……」
咲「はぁはぁ……」
レ「っ……」
フ「うぅ……」
何とか、成功はしたみたいだ。
男のおかげで、自分の能力の可能性を教えられたみたいで癪に障るがな。
だが……
詩「ちょうど五人までみたいだな……いわゆる定員オーバーってか?」
つまり、俺には能力の加護が受け付けていないということ。
?「また……またお前か、いつも、いつもいつも邪魔ばかりしてくるな」
詩「はっ!ここの主の言葉を使わせてもらうとしたら……-運命-とかってやつじゃないのか?」
?「……もういい、お前、死ねよ」
男は告げる。
?「-闇の叫び声-」
詩「……」
……
?「な!?-闇の叫び声-!」
俺は自分の身体を確かめる。
どこも痛いところはなかった。
?「なぜだ!?ちゃんとトラウマを!過去を!ダメージにする能力は発動しているのに!」
過去?
詩「……あぁ、なるほどな」
俺は思い出す。
詩「俺…………記憶喪失なんだわ」
?「は?」
俺は男の後ろに回り込む。
詩「皆を苦しめたんだ、相応の対価を、な?」
俺は右足を振り上げた。
男の下半身に。
?「っっっっっっっ!!!?!!?!?!??!!?!?!!?!?!?!」
俺も思わず、離れて抑えてしまった。
これは、潰れたな……
軽く本気でやったし、男も宙に1メートルは飛んだもんな。
男は泡を吹きまくって、気絶した。
そして、徐々に光の粒子となって、空間に消えていた。
少し状況が収まると、俺は急いで霊夢たちのところに走っていった。
詩「皆!大丈夫か!?」
霊「私は少し辛いわ……」
魔「痛い……」
咲「油断したわ……」
レ「私よりもフランを……」
フ「うぅ…」
俺はすぐに行動する。
俺は咲夜さんの手を取ると、自分の左手と重ねあわせた。
咲「な、なにを!?」
詩「すいません、少し我慢してもらいますね」
俺は集中する。
すると、左手は呼応したのか、感覚が研ぎ澄まされていく。
咲「……傷が」
俺はすぐに手を離すと、尋ねる。
詩「咲夜さん、レミリアさんの部屋の場所を教えてください」
咲「え?えぇと、二階の奥から3番目よ」
詩「ありがとうございます、それから、頼みごともいいですか?」
咲「大丈夫……ね、傷も治ってるみたいだし」
詩「では、霊夢と魔理沙の治療をお願いします。俺はレミリアさんとフランさんを部屋まで連れて行きます」
咲「……分かったわ、こちらは任せて」
俺はレミリアさんを左手で後ろに背負い、フランさんを前に抱え込む。
傷が深いのはレミリアさんだ。少しでも早く怪我を治して上げたからな。
咲「お嬢様を、お願いします」
詩「任されました」
俺は走るまでもは行かないが、できるだけ急いで二階を目指した。
-レミリアの部屋-
俺はすぐにベッドへと二人を下ろした。
詩「流石に服は替えれないよな……」
俺は二人の血だらけの服を見て、躊躇う。
詩「服はいつでも着替えられるし、すぐに怪我の治療だな」
俺は二人の手を近づけると、フランさんの手を下、俺の次に、そしてレミリアさんの手を重ねるように繋いだ。
これなら、同時に回復を促せる。
俺は手を握りながら考える。
眠い
俺は手を離さないように、ベッドに顔をうずめた。
今日は疲れたな……