✝-博麗と八雲との出会い-✝
魔「さて、空中遊泳もここまでだぜ?こっからは一気に目的地に向かうからな?」
詩「おう、一気に行っちまえ!!」
俺は結構ハイテンションになっていた。
ごぉぉぉおおお!!!!!
すると、あっという間に人里を通り過ぎる。
意外と……いやかなり早いな。
アリスさんとやらの言うとおり、魔理沙はスピード狂みたいだな。
そんな中、魔理沙が喋りだす。
魔「詩音!もうすぐ目的地だ!前方の神社がそうだからな!」
そういうと、更にスピードを上げ始める。
詩「おい魔理沙!少しはスピードを緩めないと着陸できないぞ!?」
そして俺は、一瞬の地獄を垣間見た。
魔「着陸?なんだそれ?食えるのか?」
俺はそれを聞いたとたん、恐怖が一瞬で消え、箒の上に立ち始めた。
神社の鳥居まで数秒。
3
2
1
タンッ!
俺は空中に身を投げ出した。
ドカァァァァァァァァアアアアアンンンンン!!!!!!!!!!!!!
?「はぁ、またあんの馬鹿が来たのね?」
俺はそんな言葉を吐く女の人の後ろに着地した。
詩「よっと」シュタッ
俺は前を見る。
そこには、古ぼけてはいるが哀愁を感じさせる神社があった。
詩「へぇ、立派な神社だな」
俺は意外と神社だったり、お寺が好きだったりする。
なんというか、心が穏やかになる気がするからだ。
?「ふ~ん、あなた、割といい目持ってるじゃない?」
後ろから声をかけられた。
俺は後ろを向く。
その人は、俺よりも少しだけ背が小さく
髪色は漆黒の黒髪。
頭の後ろには大きい赤いリボンが結われていた。
もみあげ辺りを纏められており、可愛らしい印象を持っている。
目元は少しつり目で、勝気そうな気配を持ってる。
服装は巫女服のようだが、俺の知識とは若干異なった衣装だった。
ワンピース型の赤い衣装を着ており、肘の上辺りから、袖を付けていた。
その為、肩や脇の露出が目立つ衣装となっていた。
全体的には、赤と白でまとまっており、華やかな格好をしている。
?「……何よ?何か言いたいことでもあるかしら?」
詩「いや、その、可愛らしい巫女さんだな、って」
俺は恥ずかしくなったので、咄嗟に視線を外す。
?「ふ、ふん///褒めても何もでないわよ?」
巫女さんはそう言いながらも、嫌そうな表情はしていなかったと思う。
魔「っててて、お~い詩音、大丈夫か?」
詩「いやいや、逆に魔理沙のほうが心配なんだが?」
俺は思わず苦笑いになっていた。
あんだけ派手に突っ込んだんだ。
怪我がない方がすごい。
?「魔理沙あんたねぇ、いつもいつもこんな形で来て、掃除する私の身にもなってみなさいよ!」
いつもこうなのか?
それは確かに掃除が大変そうだ。
魔「一々気にすんなよ-霊夢-。それより詩音、よく無事に降りられたな?面白いこと期待したのに……」
詩「体が勝手にな……それに、俺にギャグ系は意味ないと思うぜ?俺からだったら通用するかもしれないけどな?」
霊「随分と便利な体質ねぇ?」
詩「いや、今思いついただけだ」
霊「……面白い人ね、魔理沙」
魔「やっぱりそう思うか?」
ん?霊夢さんと魔理沙には何か意思疎通みたいなことができるのかな?
俺にはさっぱりわからん。
詩「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は神裂詩音。人間だ」
霊「あら?自分から自己紹介なんて、礼儀がなってるじゃない?私は-博麗霊夢-ここ、博麗神社の巫女よ」
へぇ、ここ博麗神社っていう、の……か?
詩「痛ッ!!?」
また何かが頭の中に入ってくる。
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?「けど、初対面でハグって難しくないかい?」
詩「それもそうだなぁ、まぁ最初の序盤は博麗神社に着くだろうから、そこで最後の情報くらいは思い出すことにするか」
?「というと?」
詩「とりあえず、主人公格の人物の情報。後はハグの条件とかかな?」
?「あぁ、確か特別な感情を持ったハグで思い出すようにするんだよね?」
詩「おう、感謝のハグや嬉しさを表したハグとかな?とりあえず、悪意の無いハグだったら良いことにしようか」
?「思い出す種類はどうするの?」
詩「最初の方は能力でいいだろうな、じゃないとあの世界では厳しいだろうしな」
?「じゃあ、大半の能力を思い出した後、自分の正体を思い出させるようにするね?」
詩「あぁ、それで頼むよ……-神様-」
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詩「……ふぅ、やっと痛みが治まったか?」
俺は頭を横に振る。
霊「あんた大丈夫?結構酷そうな頭痛だったわよ?」
魔「それでも立ってられる詩音には驚きだな」
詩「女性の前では膝まづきたくないんでね?男としてはね」
霊「ふ~ん?」
魔「詩音って、変なプライド持ってるよな?」
詩「気にすんな」
とりあえず、これからの条件は整ったかな?
-博麗霊夢-
主に空を飛ぶ程度の能力
異変解決を生業としている博麗神社の巫女。
かなり優秀な素質を持ち、故に怠惰な生活の日々を送っている。
裏表の無い、単純だが正直な性格で
感情に任せて短絡的な会話をすることも多いらしい。
この世界、幻想郷の主人公の一人。
-霧雨魔理沙-
魔法を使う程度の能力
魔法の森に住んでいる魔法使いの少女。
語尾に「だぜ」を付ける癖を持っている。
負けず嫌いの努力家でもあり、怠惰を嫌う。
この辺は霊夢さんとは正反対だな。
借りると言って、泥棒紛いのことをするのが日課らしい。
(某ゲームからの情報抜粋)
そして俺は、これまでのいきさつを霊夢さんに話した。
ついでに、さっきの記憶を思い出して、二人のことを何故か知っていることも話した。
霊「ん~これは、異変……になるのかしら?」
魔「どうせあれだろ?いつもの幻想入りって言うやつだろうぜ?」
詩「幻想入り?」
霊「えぇ、簡単に言うと、この世界の秩序を守っている大妖怪のイタズラって事よ」
大妖怪のイタズラ?
詩「」ピクッ?
何かの気配がする。
?「んもう、それは失礼じゃない?霊夢~」
霊夢の背後から、いきなり空間が開いた。
その開いた空間には、無数の目玉がぎょろついていた。
はっきりいって、いい趣味だとは思わない……
?「何か、拒絶された気がするわ……」
魔「そりゃあ、そんな物を初めてみたら、誰でも引くって」
霊「で?結局アンタの仕業じゃないの?紫?」
紫?
俺の記憶には無いな。
だが、かなりの実力を持っていることが分かる。
紫「確かにいつも色んな人をこの幻想郷に呼んではきたけど……」
紫さんは俺の睨むように目線を合わせてきた。
紫「この人は私が呼んだ人ではないことは確かね」
紫さんという人から、物凄い殺気を感じる。
しかし、何故か驚異を覚えない。
だが、勝てるとも思わないのが不思議だ。
記憶を頼りにするとすれば、俺に能力がまだ無いからとかか?
俺は降参の意味を込めて両手を挙げる。
詩「そんなことを言われても俺は何も知らないし、何も話せない。多分紫さんも聞いていただろうけど、俺には断片的な記憶しかない」
紫「なら、解決策は簡単ね」
霊「何をするつもりよ?まさか、アンタの能力で……」
紫「そう、私の-境界線を操る程度の能力-あなたの記憶の境界線をいじらせてもらうわ」
詩「境界線を操る程度の能力?何か物騒な能力だな」
魔「ほとんど反則みたいな能力だけどな?」
境界線か……
詩「どこからどこまでの境界線なんですか?」
紫「どこまでも」
どこまでもって……
詩「例えば?」
霊「そうねぇ……生と死、とか?」
魔「現象の方が分かり易いんじゃないか?1メートルから100メートルの距離を無い物にする、とか」
紫「まぁ、空間というものが存在するのならば、ほぼ何でも出来ると捉えていいわ」
詩「……」
俺は考える。
境界線・空間。記憶・能力。
詩「あの、紫さん」
紫「何かしら?」
詩「出来ればで良いんですが、俺の記憶という境界線をいじってはくれませんか?」
紫「……理由を聞いても良いかしら?」
詩「得にはありません、けど、俺には記憶が無いという話は本当です。
なら、俺自身の記憶を取り戻せるならここに来た意味も分かりますし、
多分ですけど紫さんは能力を使う際に俺の記憶を読み取ることが可能だと思います。
それなら、証明できるのではないかと……」
紫「十分な理由じゃない、良いわ。本当は覗くまではしないと思ったけど、貴方の覚悟を尊重することにしましょう」
詩「お願いします」
俺は紫さんの真ん前に立った。
紫「特に何も感じることはないと思うわ。すぐに終わらせます」
紫さんが目の前から消えた。
というより、空間に飲み込まれていった。
詩「紫さんはどこに……?」
霊「多分、貴方の記憶の境界線にいるんじゃない?」
魔「空間はどこにでも存在するらしいからな、詩音の頭の中にでもいるんじゃないか?」
俺は無意識に頭に手を当てる。
詩「特に違和感はありませんが、そう言われると気になってきますね……」
それから間もなく、目の前に紫さんが出てきた。
あれ?でもおかしいな、あの時のように記憶が蘇ったりしてないはずだが……
紫「単刀直入に聞くわ、本当に貴方は何者なのかしら?」
俺は紫さんの目を見る。
俺は咄嗟に感じる。
本気の目だ。
多分、俺が少しでも変な真似をしたならば、本気で殺しに来るだろう、そんな目。
詩「……先程もおっしゃった通り、俺には記憶がありません。何も、答えられません……済みません」
俺は頭を俯かせる。
正直、怖かったのだと思う。
普通ならこんな事は誰も信じないだろう。
更に俺はこの世界の住人でもない、異種分子的な存在。
俺は最後まで弱さを見せないように、手の震えを必死に押さえる。
殺されるのかな?
そう考えただけでも、足は震え、涙が浮かび上がってくる。
だが、それさえも必死に押さえる。
紫「…………ふぅ」
頭上から吐息が漏れた。
そして……
紫「随分と逞しい子じゃない?」
俺は抱きしめられていた。
詩「え?」
俺は意味が分からなかった。
紫「ごめんなさいね?私の能力が効かない人なんて初めてだったから、少しだけ驚いてしまったの」
能力が効かない?
紫「本当にごめんなさい、貴方が一番不安だったのにね……
分かったのは、貴方はたった一人で、
記憶も無く、友も居なく、家族も忘れ、更に自分さえも分からない
私は無駄に長く生きているから、目や動きをみれば何となく分かる。
貴方は嘘をついていないということがね?」
俺は震えの制御が付かなくなってきた。
詩「……」
紫「私は貴方に恐怖したのかも知れない、でも、そのおかげで思い出したこともあるの」
俺はそれを聞いた途端、涙があふれるのがわかった。
幻想郷は全てを受け入れる場所
紫「貴方の記憶は悪かもしれない、善かもしれない、それすらも分からない現状だけど……」
今は不安を隠さず、思い切り泣きなさい?
俺はついに、抑えきれなくなっていた。
大声では泣かない、それはせめてもの自分への抵抗だった。
地面に膝を付き、力のある限り、紫さんに抱きついてしまった。
どれくらい泣いたのかは分からない。