-二日目の休日。転生者が多い件について-
詩「ふあぁ……結局ぐっすりと眠れたな」
俺は枕元近くの棚に目を向ける。
そして、カードを手元に取る。
詩「これが俺のスペルカードか」
俺はマジマジと見る。
その絵は、人型に天使のような翼を広げている姿が写っていた。
その翼の色は、まさしく空色。
自由を強調するような色だった。
まさに俺の理想な絵だった。
詩「よし、これでチルノちゃんの所に行こう!」
使ったことはないが、多分行けるだろう。
俺は早速、昨日洗った-布の服-をカバンに詰め、出かける準備を終えた。
俺が廊下を歩いていると、咲夜さんに遭遇する。
咲「あら?早いわね」
詩「おはようございます」
俺は朝の挨拶をする。
現在の時刻は5:20
詩「咲夜さんも早いじゃないですか」
咲「私もさっき起きたのよ?」
詩「毎日こんなに早く?」
咲「一応従者だからね、紅魔館の誰よりも早く起きないとね?」
詩「なるほど」
確かに、そうしないと何か起きた時に対応できないからな……
咲「それで、詩音はどこに?」
詩「散歩がてらに、大妖精ちゃんに服を返しに行ってきます」
俺は肩に掛けているカバンをみせる。
咲「そう、遅くなりそう?」
詩「いえ、夕方には帰れると思いますが」
咲「お昼はどうするの?」
詩「予定ではあるんですが、妖精たちの食事を教えてもらおうかなと思いまして」
咲「魔力じゃないの?」
詩「いえ、魚や木の実とか食べるらしいですよ?消化すると魔力になるらしいです」
咲「へぇ、なら食べたほうが魔力は回復しやすいのかしら?」
詩「そうみたいですね、不思議です」
咲「そうね、じゃあ大丈夫そうね」
咲夜さんは、俺の横を通り過ぎる。
咲「道中は気を付けるのよ?」
詩「はい!」
俺も歩き出す。
そういえば思う。
咲夜さんって……
詩「お姉さんみたいだな……」
咲「ん?何かいったかしら?」
詩「い、いえ!行ってきますね」
俺は早々と歩き出す。
咲「お姉さん……ね。それも悪くないかしらね」
俺は、紅魔館の門の前まで来た。
美「あ!詩音さん、お出かけですか?」
詩「美玲さん、おはようございます」
美玲さんは、元気な様子で挨拶を返してくれた。
詩「朝早くからご苦労様です」
美「いえ、これが仕事ですから!」
元気な姿を見ると、こっちも元気が出る。
俺は自然と笑顔になるのを感じる。
美「あ、あの///」
詩「え?あぁ、済みませんマジマジと見てしまって」
俺も恥ずかしくなったので、頭を掻く。
美「それは大丈夫です!いくらでも見て構いませんから!」
詩「うぇ?は、はい。では次の機会にでも?」
俺は何となくの返事しか返せなかった。
美「そ、それで、詩音さんは何処に?」
詩「はい、これを返しに行こうかなと思いまして」
俺はもう一度鞄を見せる様に持ち上げる。
美「では、霧の湖に?」
詩「えぇ、帰りは夕方になりますね」
美「そうですか、お気をつけて行って来て下さいね」
詩「はい、美玲さんもお仕事頑張って下さい」
俺は美玲さんに手を振りながら、霧の湖に向かった。
俺は少し広い道に出た。
詩「ここなら、使っても平気かな?」
俺はポケットから、カードを取り出す。
詩「えぇと?確か、詠唱をしながらカードに念を送る、と」
俺は深呼吸を行い、高鳴っていた鼓動をゆっくりと鎮める。
詩「翼符!!」
切なる一陣の翼!!
バサァ!!
俺の背中から、横幅全長5mの大翼が顕現する。
詩「す、すげぇ……まるで天使の翼をそのまま表したかのような水色だな」
俺は、思わず呆けてしまう。
動かせれるのかな?
俺は背中に意識を集中してみた。
ファサ、パサ、ファサ、パサ……
バサァ、バサァ!
詩「お?こんな感じか?」
バサバサ!
詩「良い感じになってきたな。これを……行け!」
俺は両足に力を入れて飛ぶ。
そして…………
詩「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!?????」
大ちゃんside
チ「お、お前!大ちゃんを離せ!」
「ん?離して欲しいのか?」
チ「あ、当たり前だろ!大ちゃんに何かしたら、許さないんだからな!」
「へぇ?なら攻撃してみ?」
チ「この!馬鹿にするなよ!-氷符・アイシク」
男の人が、急に腕を持ち上げる。
そうすると、私も同時に上がっていく。
チ「!!!?」
チルノちゃんは、咄嗟に口を閉ざす。
「あれれ?攻撃しないのかな?」
チ「ギリッ……」
「あれだけ馬鹿馬鹿呼ばれてるから、てっきり攻撃するのかと思ったけど……検討外れだな」
男はあきれたように首を振る。
私は訂正してほしかった。
別にチルノちゃんは頭が悪いだけじゃない。
確かに、勉強は出来る方じゃないけど、出来ないわけじゃない。
ただ、無鉄砲で、恐れ知らずで、強気で、勝気で。
ただ真っ直ぐに向かうだけなのだ。
私は、こんなわけも分からない人に、チルノちゃんを蔑んで欲しくは無かった。
私は何も出来ない事に、悔しさを感じる。
「お?大妖精が震えだしたな?お前のせいじゃないのか、チルノ」
チ「え?え?」
大「違う!チルノちゃんのせいじゃない!」
「嘘つけ、あぁあ、かわいそうに」
チ「……っ」
大「違うって言ったら違うんだから!」
「お前、煩くなってきたな」
男が手に持っている禍々しいナイフを突きつける。
「これはな?-ワールド・ブレイカー-って言ってな?」
男は、少し、ナイフに力を込めた。
すると、何か分からない気配が、この辺り一帯を覆い
ナイフから禍々しい何かが出てくる。
「一度だけ概念を破壊することが出来るナイフなんだ」
男は自慢するように、ナイフを見せつける様に、私に突きつける。
「ま、俺の場合は、一度だけじゃなくて、壊れないし、何度も破壊できるようになっているんだがな?」
概念……
つまり、存在その物を無かったことに出来るのかな……?
つまり……
「分かった顔をしてるな?」
男は、にやりと笑う。
「いくら妖精だからと言っても、これに触れるだけで……」
男はゆっくりとナイフを近づける。
「消える」
私は、心が凍るような気持ちになった。
そして、全身が震える。
チ「止めろ!!!」
「さて、東方のキャラを一人でも消したら、どうなるのかな?」
後数ミリで、私にナイフが当たる。
詩音さん!!!!!!!!
詩「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!???!?!?!」
「ごふぁぁ!!??」
私の近くから、男が瞬時に消えた。
大「え?」
私は、すぐに目を開ける。
近くに、伸びている男と、かなり息切れを起こしている詩音さんがいた。
詩「空飛ぶの………怖い」
大ちゃんside・out
詩音side
詩「不覚だ……」
蒼空を飛ぶまでは良かったが、まさか、制御できない事に後から気づくとは……
詩「練習しなきゃだなぁ」
そんなことを呟きながら、俺起き上る。
詩「そういえば、誰かとぶつかった気が?」
俺は辺りを見渡す。
茫然としているチルノちゃんに、少し震えている大ちゃんに?
詩「誰だこいつ?」
ナイフをを片手に地面に伸びている男。
詩「ぶつかったのは此奴かな?おい、あんた」
大「駄目です!」
大ちゃんは、俺を後ろから抱きしめる様にとめてくる。
大「そいつは、私たちを」
「痛、誰だ?」
男は、起き上る。
詩「……あんた、ナイフ持って何してたんだ?」
俺はナイフに何かを感じる。
「……君は、見掛けない顔だね?転生者?」
詩「(また転生者関係?)いや、何の事だか」
俺は、大ちゃんをゆっくりと後ろに下げる。
大ちゃんの震えが直に伝わっていたので、こいつが危険なのはよくわかった。
詩「チルノちゃん」
チ「え?」
俺は手招きをする。
男を見ながら。
男は、静かにそれを見送る。
詩「二人とも、下がってて、な?」
大「詩音、さん」
チ「わ、わかった」
俺は男に向き直る。
詩「で?お前は大ちゃんたちに何をしようとしたんだ?」
「なぁに、これを試そうかなと思ってね」
男はナイフを見せてくる。
詩「随分、嫌なナイフだな」
「へぇ、分かるのか?」
詩「何となくだが、見てるだけでも気分が悪くなるよ」
俺はゆっくりと、重心を前に傾けていく。
「そりゃ、概念破壊の恩恵が付いているんだ、何かを感じ取って貰わなきゃね」
詩「概念……存在その物を無かったことにでもする気か?」
静かに、身体を半身にずらしていく。
「君は東方プロジェクトって、知ってるかい?」
詩「何のことだ?」
「この世界は、幻想郷と言ってね、外の世界の僕たちにとっての呼び方という物があるんだ」
詩「……」
「それが東方、つまりこの世界の名称だね」
詩「まるで、異世界ファンタジーみたいだな」
「まさにそれだね、それが正しい」
俺はいつでも飛び出せる準備は出来た。
「その東方のキャラクター、つまり、この世界の住民を一人でも消すとどうなるのかを、確かめたかった」
詩「それを試して、どうする気だ?」
「ただの興味さ」
詩「興味だけで、人を殺すのか?」
「人?あれは人外だ。討伐すればむしろ人間に感謝されるんじゃないのか?」
詩「……てめぇ」
「君はおかしいね、人外を人外と言って何が悪い」
チルノちゃんや大ちゃんは確かに、人外という部類に入るのかも知れない。
だが……
詩「人の事を何とも思わない、お前の方がよっぽど人外だよ」
「だから、あれは人じゃないと何度言えば」
詩「もう、チルノちゃんと大ちゃんを蔑むのはやめろ」
「何度でも言うさ、あれは化け物」
詩「黙れ」
俺は瞬時に近づく。
「!!?っな」
俺は思い切り左腕を振り上げた。
ゴキィ!!!
相手の顎を捉えた。
歯が数本抜けていくのが見えた。
「あがぁぁああ!!?」
男は口を押える。
「よくも、やって、くれたなぁぁぁぁああああ!!!」
男はナイフを片手に攻め込んできた。
俺は、ナイフが一番危険だと感じているので、ナイフを優先的にかわす。
詩「っく、以外、と、早い、な!」
身体能力には、自信があるんだが……
「俺は身体能力の恩恵は無いが、代わりにナイフの扱い方が上手くなっていくという力があるんだよ!」
俺が避ける先々を予測しているが如く、ナイフが追ってくるような攻撃だった。
確かに、早いわけじゃない。
的確に、俺の行動を読んで、攻撃をしてきているだけという事か。
「考え事をしている暇があるのか?」
詩「……」
「焦ってきているのかな?あんだけ、余裕そうだったのに?」
少し、やばい。
此奴、能力に頼り切っているわけじゃない。
どう動けば、相手を責めることが出来るのか把握できている人間だ。
詩「っこの!」
「おっ…と、お返しだ!」
サシュ
俺の服に掠り傷程度の刀傷が出来る。
が……
詩「……俺の上着が、消えた?」
今の俺は、Tシャツだけの状態になった。
「流石、能力は本物みたいだな」
詩「初めて使ったみたいな言い方だな」
「貰ってから初めて使ったんだよ」
詩「貰った?」
「神様にね」
また、神様か。
転生者ってのは、神様に何かしらの恩恵がもらえるみたいだな。
ほんと、迷惑な神様も居たもんだ……
しかし……
「ほらほらほら!」
詩「……っく、と、」
本格的にやばくなってきた。
一応、身体能力は高くても、ベースは人間ぽいからな。
瞬間的に吸血鬼の力を圧倒すると言っても、ずっとではない。
スタミナや感覚などは、多分人間のままな筈だ。
じゃなきゃ、ナイフの扱いが上手いだけの奴には遅れはとらない筈……
チ「あぁ!?詩音が押されてる…」
大「……」
どうする俺、考えろ。
別に勝つことが勝利条件じゃない。
今は、逃げても構わない。
だが……
俺は思わず後ろを見る。
そこには、不安そうに俺を見るチルノちゃんと、何かを決意している大ちゃんがいた。
そんな思考の中、男に見せてはいけない隙を見せてしまった。
「貰ったぁぁぁ!!!」
詩「しま!?」
ズザシュ!!
俺の右肩が、縦に切り裂かれた。
すると……
詩「あ、ぐ!?……うで、が、無い……?」
俺の右肩から先が無くなっていた。
不思議と痛みは無い。
俺はすぐに後ろに下がろうとしたが……
詩「っ!??」
俺は、その場で転倒してしまった。
何故……
そうか。
急に片手の重みが消えたから、身体が付いていってないんだ。
まずいまずいまずいまずい!!?
「くはは、無様だな?」
男は俺を見下ろす。
俺は何とか立ち上がろうと左手を軸に立ち上がろうとするが、男はそれを見逃さない。
俺は何かの力によって、頭を思い切り地面に叩き付けられた。
男の足が、俺の頭に乗っかっていた。
詩「うぐぐ」
「さてと、そろそろ消えて貰おうか?」
男はナイフを逆手に持ち、振り上げる様に高々と腕も持ち上げた。
「じゃあな、ただのモブ人間さん」
男のナイフが、、俺に向かって、振り下ろされる。
ザクッ
不思議と、痛みは無い。
俺は少し不信に感じたので、ゆっくりと目を開けた。
詩「……………………………え?」
大「大、丈夫……ですか?詩音、さん?」
何で、大ちゃんが、俺の目の前に?
それ以前に……
何故、大ちゃんの胸に、ナイフが、刺さっているんだ?
「っち、邪魔しやがって」
男が言葉を吐き捨てると、ナイフを一気に真横へと引き裂いた。
チ「大ちゃん!!!!!!!?????」
俺は、声が、出なかった。
何で、俺を、かばったんだ?
チルノちゃんと、逃げれば、良かったのに。
大ちゃんが、俺の胸に崩れ落ちる様に、向かって来た。
俺は咄嗟に、左腕を持ち上げ、受け止める形となった。
詩「大、ちゃん?」
大「良かっ、た、詩音、さんが、無事、で……」
大ちゃんの体が、仄かに体が光り出した。
消え始めているんだ。
詩「どうして…」
大「何故、でしょう、ね?」
大ちゃんは、静かに笑う。
何で、この状況で、笑えるんだ?
大「詩音、さん、たった、一日、たった、一日、でしたが……」
大ちゃんの、半分以上が、消えていた。
それでも、大ちゃんは、喋り続ける。
大「とても、楽しく、面白く、愉快で、嬉しい、そんな、一日でした。そんな、一日で……詩音、さん」
貴方のことが、好きになってしまいました。
詩「……え?」
大ちゃんは、俺の驚いた顔を見て、とても可愛らしい笑みを作ると……
幻想郷から
消えた。
「なるほどな、こんな風に消えるのか」
男は、何事も無かったかのように、いつも通り、喋り出す。
大ちゃんを消したのは、ダレだ?
チルノちゃんが泣いている。
チルノちゃんを泣かしたのは、ダレだ?
俺の右腕が無くなっている
俺の右腕を奪ったのは、ダレだ?
俺は、何かが覚醒しだしているのを、感じ取った。
その気配は、自分の中からだった。
俺は静かに、そして…
否定する。
チルノちゃんが泣いている。
そんなのは、俺が認めない。
チルノちゃんの涙の理由を否定する。
俺の右腕が無い。
そんなのは、俺が認めない。
右腕が無くなったのを、否定する。
男の理不尽なナイフが、この現状を引き起こした。
そんな現状を、俺は認めない。
ナイフがあることを、否定する。
幻想郷から、大ちゃんが消えてしまっている。
男のせいで、消えてしまった。
そんなのは、俺が、絶対に、認めない……
幻想郷から、大ちゃんが消えたことを
否定する!!!!!
すると、今の環境に変化が訪れる。
チルノちゃんは、何かに驚いたのか、涙は止まっていた。
俺の右腕が、いつの間にか、もとに戻っていた。
男の手に握られていたナイフが、無残にも、砕け散った。
俺の、両腕の中に……
大「あれ?ここって……」
大ちゃんが、佇んでいた。
詩「大ちゃん……良かった、本当に、良かった」
俺は、壊れないように、優しく大ちゃんを抱きしめる。
大「あ、れ?私、刺されて……」
俺は、大ちゃんを抱きながら立ち上がる。
詩「チルノちゃん!!」
俺はすぐにチルノちゃんを呼び出す。
そして、チルノちゃんは、すぐにこちらに来てくれた。
チ「詩音!?腕は!?それに、大ちゃんが」
詩「大ちゃんを頼む」
俺はチルノちゃんの目を真っ直ぐに見る。
チ「…分かった。後、……頑張って!」
俺はチルノちゃんの激励を背に、男に向き合う。
「なんで、俺のナイフが砕けた?」
詩「さぁな」
俺は、ポケットから、カードを取り出す。
「なら、別のナイフで……お前を切り刻んでやらぁあああ!!!」
男は、こちらに向かって来た。
俺は、宣言する。
詩「-翼符・切なる一陣の翼-!!」
俺の背に、もう一度、あの翼が顕現する。
「翼が出たくらいで、何が出来る!」
男は、ナイフを繰り出す。
詩「一度の初動だけなら!」
俺は、その場から、消えた。
ように見られた。
「何処に!?」
詩「定番の後ろだよ!!」
俺は、慣れない行動のせいで、スピードは落ちたが、勢いの乗った蹴りを放つ。
ボキィ!
骨の折れた感触がする。
「がぁぁぁぁああぁあぁあ!!!???」
男の右腕をへし折った。
男の利き腕は、右腕なので、ナイフも一緒に地面に落ちる。
俺は追撃を止めない。
顎に右フック。
男が後ろにのけぞる。
鳩尾に肘鉄。
男が前のめりになる。
額に膝蹴り。
男の頭が、一気に上がる。
俺はその場で回転する。
勢いのついた体重は、蹴りとなって男に向かう。
顔面を思い切り蹴飛ばす。
男は、何もすることが出来なく、あっけなく飛んで行ってしまった。
詩「まだだ、まだ終わってな」
大「詩音さん!!」
また、後ろから大ちゃんに抱きしめられる。
詩「大ちゃん……」
大「もう大丈夫ですから、もう、大丈夫」
大ちゃんは、俺をあやすように、静かになだめる。
詩「……わかった」
俺は、深呼吸をする。
詩「助かったよ、頭に血が上ってたみたいだ」
大「いえ、たいしてことでは…」
「ぐ、ふ……この、野郎、が」
俺は大ちゃんを前に連れて、抱きしめる形となる。
俺は思い切り、翼を広げる。
詩「お前、もう眠れよ」
俺の翼から、羽型の弾幕が飛ばされる。
一直線だが、かなりの数を展開することが出来る。
その数、約700前後。
初見では、交わせきれないであろう数。
「く、そ、がぁぁぁぁあああああ」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
男は、俺たちの目の前から消えた。
チ「死んだ、の?」
詩「いや、途中で光となって消えてた。多分。神様って所か、もとの世界に戻ったんだと思う。」
それに、俺のこのスペルカードは、かなり威力が低いからな。
満身創痍の敵に打ったって、倒れるか倒れないか程度の威力。
ま、牽制程度の弾幕だな、そもそも、飛ぶためのスペルだし。
詩「大ちゃん、何処か痛い場所とかない?」
大「大丈夫ですけど……」
チ「なぁ、何で、その…消えた大ちゃんが戻ってこれたんだ?」
大「そうです、私もそれが気になって…」
俺は少し、応答に困った。
詩「俺も無我夢中だったからさ、自分でもまだ良くわかってないんだ。ごめんな?」
大「そんな!?詩音さんが謝ることじゃ無いですよ」
チ「そうだよ!こうして大ちゃんが戻ってこれたんだ。それでいいじゃん!」
チルノちゃんのポジティブな言葉を聞くと、とても気持ちが楽になる。
詩「それで何だけど……どうする?」
大「取り敢えず、ここの辺りを案内しますよ」
チ「そうだね!早速行こう!」
少年少女、道案内中
大「それで、ここを東に行くと町里で、西に行くと博麗神社です。わかると思いますが、来た道の北方向が紅魔館です」
チ「だ、大ちゃん、凄いね……」
詩「ははは、そうだね。こういう知識がある友達は羨ましいよ。チルノちゃん」
チ「へへ~ん、凄いだろ?」
詩「う~ん、まだ時間はあるしなぁ、霊夢の所に一時帰宅でもするかな」
空も飛べるようにならないと……
詩「二人がいいなら、霊夢の所に行かないか?」
大「私は良いですよ?」
チ「久しぶりに顔を見てやるとするか!」
詩「やっぱり知り合い?」
大「まぁ、迷惑ばかりかけては居るんですけどね?」
チ「この間なんか、腋巫女って言っただけで、…………ブルブル」
詩「ま、まぁ、行こうか。何かあったら何とかするからさ」
チ「良し、任せた!」
俺は早速スペルカードを使う。
詩「良し、-翼符・切なる一陣の翼-」
俺の背中から、天使の翼が顕現する。
大「詩音さんの翼って、とてもきれいですね…」
チ「すごいよなぁ…」
詩「ありがとね?」
俺は静かに、ゆっくりと操作しながら飛び始める。
詩「ふぅ、なんとか耐空することは出来るか…」
大「何か、大変そうですね?疲れたら言ってくださいね?」
チ「そうだぞ、詩音はもっと体を大事にしないとな!」
本当、この子たちはとてもいい子だな……
-博麗神社・境内-
詩「……っと、ふぅ、疲れたぁ」
俺はその場に尻餅を着く。
大「結構辛そうでしたからね」
チ「無理はするなって言ったのに…」
霊「ん?……あ!」
神社から顔を出した霊夢が、こちらを見るや否や、すぐに駆け寄ってきた。
霊「詩音!あなた凄い汗よ?どうしたの?」
詩「あはは、飛ぶのに慣れようとしたら、疲れちゃって…」
霊「え?詩音飛べるようになったの?覚醒もしたの?」
覚醒?
詩「そう言えば、レミリアさんから、弾幕ごっこってのも教えてもらったなぁ」
霊「……あぁ、そういえば言うの忘れてたわね」
詩「忘れてたならしょうがないよ、何とかなったしね?」
俺は、紅魔館で教わったことや、チルノちゃんたちにあった事件を話した。
少年、少女に説明中。
霊「ふ~ん、大妖精が一度消えた、ねぇ…」
詩「あぁ、身も凍る思いだったよ…」
チ「え?アタイ、詩音に何もしてないよ?」
大「例えだよ、チルノちゃん」
霊「本当、外来人の人たちは、スペルカードルールを知らないから困るわね」
詩「えっと、殺し合いをゲームにするっていう?」
霊「平たく言えばね?これのおかげで、妖怪は異変を起こしやすくする反面。人間は、異変を解決しやすくなるの」
詩「なるほどね、平和的だなぁ」
でも……
紅魔館を襲った奴や、チルノちゃんたちを襲った奴らは違った。
多分、この世界のルールは知っていた筈。
なのに、殺そうとした。
詩「完全に秩序を乱しているのは、よそ者の外来人か……」
俺は……外来人、か?
多分、外来人だろうな。
霊「ま、外来人と言っても、全部が全部とは限らないわよ?」
霊夢は俺を見る。
霊「詩音の場合は、ルールを知らなかったとしても、人を安易には傷つけないでしょうしね?」
詩「チルノちゃんや、大ちゃんみたいな妖精だって傷つけないさ」
霊夢はクスッと笑う。
霊「そうね、そんな人間性が大事なのよね」
チ「アタイだって、むやみに人を襲ったりしないぞ?」
大「まぁ、カエルや、知っている人には、かなり喧嘩売ってる気がするけどね……」
霊「あ、そうだ」
霊夢は何かを思い出すと、奥に消えていった。
何かの用事で、霊夢が居ない間、大ちゃんに話しかける。
詩「大ちゃん、今は何ともない?」
大「へ?あ、はい!元気が有り余るくらいです!」
詩「そう、良かった」
俺は自然と笑顔になる。
大「…っ///」
チ「うおっ!?大ちゃん顔真っ赤だぞ!?熱があるのか?」
詩「え!?本当?」
大「だ、大丈夫です!!何とも有りませんから!」
そんな事をしてると、霊夢が戻ってくる。
霊「おかしいわね、10枚はあったと思ったんだけど……魔理沙め」
詩「魔理沙は、こういうことはよくやるのか?」
霊「自分の欲しい物は、大抵こういう事はやるわね」
詩「程々にして貰わないとね…」
俺は苦笑いになる。
犯罪紛いは、程々にしてほしいな。
霊夢の手には、真っ白なカード。
スペルカードの素を、俺に差し出してくる。
霊「はい、一応あったけど、2枚しかなかったわ」
詩「俺に?」
霊「えぇ、本当はお金をもらうけど、賽銭の件もあるし、ルールの伝え忘れもあったから、タダで良いわよ?」
詩「それは有りがたい、まだ一枚しか持ってないからな、これで、戦闘の幅が広がるよ」
霊「あら?レミリアから貰ってたの?」
詩「本当は、50枚くらいあったんだって……」
霊「魔理沙か……困ったやつね」
俺は素直に、スペルカードの素をもらう。
詩「さて、どうしようかな?」
考え事をしていると、後ろに引かれる感覚がした。
詩「ん?どうしたの、チルノちゃん」
チ「えっと、さ、それ、作ってからでいいから、この後、弾幕ごっこを」
魔「遊びに来たぜ!!!」
魔理沙が、大きい音を立てながら、ふすまを開ける。
魔「お?それはスペルカードじゃないか?まだ残ってたのか」
霊「魔理沙?神にお祈りは済んだのかしら?」
霊夢は、何処からともかく、お札を辺りに展開する。
魔「はん!信じれるものは自分自身だけだ。神には頼らないさ」
魔理沙も、八卦炉を構える。
何気なくカッコいいセリフだ。
詩「ちょいちょい!!?、神社の中で弾幕ごっこはやめてくれ」
俺は静止に入る。
魔「なんだ?詩音も混ざりたいのか?」
霊「怪我するわよ?」
詩「入ること前提!?」
俺は頭を抱えたくなるのを抑え、チルノの方を少しだけ向く。
チ「弾幕ごっこ……」
大「チルノちゃん、詩音さんがこっち見てるよ?」
俺は、チルノちゃんの方を見ながら、口パクをする。
後でな
チ「……あろえな?」
大「後でな、だよチルノちゃん」
チ「本当!?聞いててくれたんだ……」
俺は、再び魔理沙に向き直る。
詩「やるといっても、俺は弾幕を打て……出せないし、スペルカードも一枚しか所持してないぞ?」
魔「もう、一枚で良いや、霊夢。審判頼むな?」
霊「負けたら、スペルカード返してもらうわよ魔理沙?」
魔「はっ!素人には負けないつもりだぜ?」
随分と、ひどい言われようだな。
俺も男だ。プライドくらいある。
詩「……足元、救われないようにな、魔理沙」
魔「ん?何か言ったか?」
詩「何も?取り敢えず、外に行こうか」
俺たち全員は、境内に入る。
霊「ルールは?」
魔「詩音が決めても良いぜ?」
詩「なら……」
弾幕ごっこ
詩音VS魔理沙
ルール
スペルカードは1枚まで。
時間制限なし。
勝敗は、先に被弾した方の負け。
また、スペルカードを攻略されても負け。
あくまで、弾幕のみの勝負。
魔「よっと」
魔理沙は、箒にまたがると、蒼空に舞い上がる。
詩「おい、俺は飛べないんだぞ?」
魔「あれぇ?ルール説明にそんなの言ってたかな?」
イラッ
詩「完膚なきまでに叩き潰す」
魔「やれるもんならやって見な?」
霊「…詩音が若干切れてるわね、どうなることやら…」
霊夢は、高く手を上げる。
霊「始め!!!」
魔「先手必勝だぜ!」
魔理沙の手から、普段は経験しないであろう数の弾幕を張り巡らせてくる。
詩「うおっ!?なんて数だ!?」
俺は必死にかわす。
一応体力は自信があるので、避けまくる。
詩「普通の攻撃でこれなら、スペルカードの威力はどうなるんだ?」
俺は少しだけ冷や汗をかく。
動体視力も少し上がっているのか、何となく、避ける道が解る。
魔「ふ~ん?結構動けるみたいだな……なら、ペースを上げるんだぜ!」
詩「まだ上がるのか!?」
俺は更にギアを上げる。
詩「まだ、一直線だから避けれるな……あのナイフみたいな攻撃じゃなくて良かった」
一直線なら、動きに変化はないからな。
俺は、ギアを上げながらも、動きを最低限にとどめる。
霊「へぇ、結構やるわね詩音も。もしかしたら、いつか化けるのかもね……」
魔「っち、当たらない!!」
魔理沙は、空中を動き始める。
魔「これなら、どうだ!」
魔理沙は、俺の上空を回りながら、弾幕を落とすとように打つ。
詩「……っく、密度が高くなったな」
俺は、ステップの数を増やす。
詩「霊夢!!」
俺は確認したいことがあった。
霊「何かしら?」
詩「俺の、左手、は、当たった、ら、被弾に、入るのか!?」
避けながらだと、キツイな!
霊「左手は、能力の一部だから……肘から上なら良いことにするわ」
詩「良し!」
俺は早速活用する。
詩「せい!」
俺は軌道上の弾幕をはじく。
魔「いっ!?はじくのかよ!!」
詩「こんなことも、出来る、ぜ!!」
俺は弾幕に手の甲を当て、はじく。
魔理沙の方に向かって。
魔「なっ!?マジか!」
俺ははじく量を増やしていく。
避けながら弾く、かなり疲れてきた。
詩「ふぅふぅ、きっつ……」
魔「何だ?もうバテテきたのか?」
まぁ、こっちのはじいた弾幕は、結構単調だからな。避けるのは簡単だろう。
魔「なら、止めを刺してやるよ」
魔理沙は、手元に八卦炉を持ち出した。
更には、スペルカードを取り出す。
魔「喰らいな!!」
-恋符・マスタースパーク-!!!
魔理沙の手元の八卦炉から、かなり特大の光線が飛び出す。
詩「おいおい、神社を覆ってるくらいの大きさって……」
俺は霊夢の方を向く。
霊夢はため息をつくと、札を取り出して、境内に結界を張り巡らす。
霊「今は弾幕ごっこ中だから、詩音には結界を付けてないからね?」
詩「当然だろ?」
俺は涼しげに、答える。
霊「あら?マスタースパークが来ているのに、余裕ね?」
詩「これがあるからな」
俺はポケットから、カードを出す。
ちなみに、魔理沙からは見えていない。
まぁ、光線がこんだけ大きかったら、こちらは見えないだろう
それが、最大のチャンスなんだがな。
詩「じゃ、行きますか」
俺は宣言する。
-翼符・切なる一陣の翼-
俺は霊夢の目の前から、消える。
霊「早い……わね。私でもギリギリ、か」
霊夢は空を見上げて呟く。
魔「ふぅ、ま、これで終わりだな。素人には良い教訓にでもなったろ」
魔理沙は、八卦炉を懐にしまう。
俺は真後ろから観察する。
魔「にしても、私に勝とうなんて、100年早いんじゃないのか?しかも、あんだけ言っておいて、これで終わりかよ、大したことないなぁ」
我慢の限界だった。
俺は魔理沙の肩を掴む。
魔「!!!!???」
詩「油断大敵、そしてさようなら、だ!!」
俺は思いっ切り、下の境内に魔理沙を突き落す。
魔理沙は動揺しているのか、蒼空を飛べないでいる。
詩「行け、切なる翼よ!!」
俺の背中から、羽の弾幕が飛び出していく。
その数……800余り。
これでやっと、半分の弾数だ。
多分、全力でやると、1500は行けると思う。
まだ感覚が掴め切れていないから、まだまだだろうがな。
魔「うわぁぁぁぁあああ!!!??」
俺は、ゆっくりと降りていく。
これでお互いのスペルカードは尽きた。
俺のスペルカードが効いていなかったらどうなるんだろうか?
そんな事を考えてると、煙が晴れる。
魔「……そんな痛くなかったな」
魔理沙は普通に立っていた。
だが、服が少しだけほつれたりしていた。
霊「勝負あり、勝者は詩音ね」
詩「よっし!!」
俺は思わずガッツポーズをする。
魔「詩音……」
詩「ん?」
魔「お前、蒼空飛べないんじゃなかったのか?」
詩「別に、-今は-飛べないだけで、スペルカードを使うと飛べるさ、ルールで言って無かったから、分からなかったか?」
魔「っく……参ったよ」
魔理沙は両手を上げる。
俺は魔理沙に近づく。
詩「俺も、生意気言って悪かったな」
魔理沙の手を掴む。
魔「な!!?にゃにを!?///」
俺は手に集中する。
すると、魔理沙の体力が戻っていく感覚がする。
こういう事をしていると、相手の状態を触れているだけで分かってくる。
詩「お詫びになるか分からないけど、体力は戻ったろ?」
魔「う、うん、ありが、とう///」
急にしおらしくなったな?
俺は袖を引かれる。
そして、右下を見る。
チ「えっと、大丈夫?」
詩「ん?平気だよ、被弾はしなかったからね?」
チ「それなら、アタイと弾幕ごっこ、出来る?」
詩「おう!良いぞ、やるか!」
その後は、勝負を行い。霊夢が出してくれたお茶を皆で飲み交わした。
勝敗は、ギリギリ俺の勝ちに終わった。
2連戦は意外とキツイ。
詩「じゃ、俺はそろそろ行こうかな」
霊「あら?そういえばバイトはどうしたの?」
詩「2日間は休みだったんだよ。明日から本格的に開始だよ」
俺は、ポーチを腰に着けると、立ち上がる。
詩「お茶ありがとな?」
霊「お茶くらい幾らでも出すわよ」
霊夢はあきれていた。
詩「それと、お願い……があるんだ」
霊「…何かしら、出来るだけ聞いてあげるわよ?」
詩「霧の森での話は言ったよな?」
霊「えぇ」
詩「大ちゃんとチルノちゃんを、少しの間、泊めてやってくれないか?」
大「え?」
チ「ほぇ?」
霊「成る程ね……3日間くらいでいいかしらね?」
詩「助かるよ」
俺はチルノちゃんと大ちゃんに目を向ける。
大「その、何でそんな事を?」
チ「そうだよ、アタイたちは別に泊まらなくても」
詩「俺が心配なだけなんだよ……」
俺は心の内を話す。
詩「あの後の事だからさ、少し心配なんだ」
多分何もないと思うけど、大ちゃん何か特に心配だ。
大「…分かりました。霊夢さん、少しの間お世話になりますね?」
霊「ま、大妖精みたいな大人しい子なら、大歓迎なんだけどね?」
詩「はは、ま、お泊り会みたいに楽しんでよ」
魔「よし!なら、今日は宴会だな!!」
霊「えぇ~、めんどくさいわねぇ」
詩「はは、じゃあもう行くよ」
俺はカードを取り出す。
俺は皆に手を振る。
そして、その場から消えた。
魔「は、はえぇ……」
チ「し、詩音が消えたよ!大ちゃん!」
大「ほえぇ……」
霊「やっぱり、詩音は化けるわね……」
明日からバイトだ。頑張ろう!
俺は意気揚々と飛んでいく。
詩「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!???????」




