4章:幕間
赤い棒から二本の鎖が吊り下げられ、木の板にそれが打ち込まれていた。
もちろん今はブランコと認識できるが、初めて見た時はどのような存在なのか見当もつかなかった。
先天的にブランコの使用方法を理解している人がいれば、それは新人類と言えるだろう。
なんとも残念な新人類という言葉の活用法を思いついたものだ。
子供の頃の記憶が脳裏に浮かんだ。
たしか朝ご飯を食べ、父に連れられ二人で公園に向かった。
そこでは全てが新しかった。
まずそブランコなるものを捻ってみた。
だんだん重たくなって、幼児の力の限界を迎えた。
手を瞬時に引っ込めると、竹とんぼのように回転した。
転写の為に、解かれていくDNAの二重螺旋構造のようだった。
「いってぇ。」
回転している板の角がぽっぺにぶつかった。
痛みに驚き、相手を退けようと押し込むと、敵は振り子のように平然と帰ってきた。
何度か繰り返したが、結果は同じだった。
強さを認めるのもまた強さ。
その頃にはブランコを戦友のように感じていた。
父は笑って彼を見守っていた。
室内で遊ぶ事が多かったので、この様な機会は滅多になかった。
「これはブランコと言って、こうやって遊ぶんだよ。」
恐る恐る彼も父のように遊び始める。
風を切る感覚は肌にも神経があった事を思い出させてくれた。
「明日も遊びたい。」
その言葉を聞いた父は少し顔を曇らせた。
そうだな、また行こうと独り言のように呟いた。