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3章:胡乱

Spring will come@●●● "21時に◯◯公園"


シンプルな短文が、数時間後に送られてきた。

メールアドレスが自然と目に入る。

こんな内容ならば年に何回アドレスを変更しなくてはいけないのだろう。


今年の冬は例年よりも冷え込み、東京でも積雪が見られるとアナウンサーが体を張って報道していた。

しかし、幸運にも、日本のやや南に位置するこの地域では、ぎりぎり雪が降っていない。

神様が定めた季節の境界が有るならば、ここが丁度その線上に当たるだろう。


公園は都心の少し外れにあり、昼間は近所の子供達が鬼ごっこやサッカーをして活気に溢れているのだが、夕方太陽が沈むと昼間の姿が嘘のように閑静な形相を呈する。

ほんの数週間前までは美しい景観を人々に提供していた紅葉やイチョウも役目を終え、今は痩せこけた枝を申し訳なさそうに広げるだけだった。

その変化が余計に空間を淋しく感じさせた。


彼がベンチで座って携帯をいじっていると、背後に気配を感じて身構えた。


「ばぁ!」


叫びながら何かが背後から目の前に飛び出してきた。

もちろん相手は例の彼女であった。


「お待たせ。」


「いいえ、お構いなく。」


砂利が地面いっぱいに敷き詰められていたのにどうやって無音で近ずいてきたのだろう。

それ程までに僕は集中していたのだろうか。

彼女の忍者のような能力に珍しく感心した。


「取り敢えず体も冷えるしブランコでも漕ぎながらお話しましょう。」


立ち上がって、お尻に付いた葉っぱを払い、ザクザク靴で地面を感じながら、ブランコの元に向かった。

《それを言うなら屋外より何処か喫茶店とかの方が良かったのに。》

楽しそうに歩みを進める彼女の姿を見て、その台詞は口元まで登ってきていたが、静かに呑み込むことにした。

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