九十七話
アラディンの地図は、大陸西部と海洋部分を描いたものだったんだよ。
「これを見てくれよ。この地図を見てアルマは何か分かるか?」
アラディンの地図を見て、私はハッとなったんだ。海の方にも半円を描くように島が配置されてる。この島の配置は山脈と繋がってるのではないかって思ったんだよ。それでクロヴィアやカレドニアの人々が長い年月をかけて作った地図を出して比べてみたのよ。
「やっぱりね」
「アルマ、何か分かったのか?」
「こっちの地図を見てみなよ。エドリアル大陸を南北に分断してる山脈だよ。東側の海も半円を描くように島があるでしょ?」
「確かに。これほどに離れた東西で似たような地形があるのは面白い偶然だな」
「海流が複雑で海が荒れてるもんだから、これより内側には入れないらしいんだけど、天気が良いときには遠くに山脈が見えるんだってさ」
「同じだ。こっちの西側もそうなんだ。島の外側は大丈夫なんだが、内側は無数の小さな島があって海流は複雑、しかも大きな渦がいくつもあるような難所もあるんだ。とても内海には入れない」
「大陸と山脈が大きいから、これ以上の南は地図がないけどね。たぶん、こうなってるよ」
私は大きな円を描いてみせた。その円に沿って南北に分断する山脈や、東西海洋の半円を描くような島々が重なった。
「つまり、この山は魔族の領域を囲むように存在してるってのか?」
「そうだね」
「俺は不思議だったんだ。南北に分断する山脈と、俺達が作った地図に浮かび上がる島々との関係がな。まるで人間の立ち入りを遮断する為に作られたように思えた。これは魔王が魔族の領域を守る為に、作り出したんだろうか?」
「違うと思うよ。この地形は自然に出来上がったんだよ。それを魔族は利用してるって事だね」
「どうやって、こんな巨大な円形の山脈がが作られるんだよ? 魔王が己の持つ巨大な魔力で作り上げたと思うほうが自然じゃないのか?」
「如何に強い魔族だろうと、何百キロにも及ぶような地形は作れないよ。これはカルデラかクレーターだよ」
私はカルデラやクレーターが何かを説明してやったのよ。
「砂浜に向けて大砲を撃ちこんでみなよ。巨大な穴があくでしょーが。天空から巨大な星が落ちて来る事が極稀にあるんだ。それは巨大な爆発を起こすんだよ。その端っこ部分が、こんな円形の山脈のようなものを残すのよ。それが雨や風、海なんかの影響を受けて、今の地形になったのよ」
「空から星がねぇ……」
「まぁ信じられないなら、それでもいいよ。もしかしたら、ここは巨大な火山だった可能性もあるしね」
「火山は見た事があるぜ。だが、火山がどうなったら、こんな風になるんだ?」
「火山の中央が、何らかの理由で陥没するのよ。そうすると、火山の周辺部分だけが残るからね。こういう地形になるってわけよ」
「それなら、まだ真実味があるな」
「だけどね、火山だったとすると、その火山って高さが1~2万メートルを超えるんじゃないかしら? そんな巨大火山なんて私は知らないのよね。それに火山だったとすると、ガーネルやトラスカンあたりの町は温泉があってもいいのにね」
「無かったのか?」
「うん、無かったね。だから、私は天空の星が落ちてきた説を取るわよ」
「アルマはそういった稀に起こる現象が、この地形を作ったと言うんだな?」
「そうだよ」
「なら、それを利用してるだけの魔王は、必要以上に恐れなくていいんだな?」
「勿論よ!」
アラディンは不安を解消できたのか、すっきりした表情になっていた。




