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九十一話

 九死に一生ってのを、この世界で初めて経験したけどニコのおかげで助かったのよね。それにニコの仲間達の活躍もあって、スラール王都は無事に攻め落とすことができたわけよ。あのスケベなニコが……このままじゃ絶対に性犯罪者になると思ってた、あのニコが! まさかこんな活躍をする日が来るなんて夢にも思わなかったよ。私はとても感動してるわ!!

 最後に揉ませろ、吸わせろ、しゃぶらせろと三拍子で要求された時は、やっぱりニコはニコだったとガッカリもしたけどね。その件についてはあとで落とし前をつけるとしても、色々と片付けないといけない事があるわけよ。



 当初偵察で判明してたサイロスの敵軍ってのはニコ達だったのよ。そうなると今では友軍ともいうべき存在なので、ラデックスにいる味方をサイロスへ進軍させたわ。



 「マースの森の世界樹の所には、マース王国の生き残りの連中が逃げ込んでるんだよ。サイロスの守りは、あいつらに頼んでるんだ」

 


 と、ニコが言ったのでニコの軍の人間を何名か同行させて、サイロスの軍と衝突しないようにしといたのよ。サイロスの北はナドレンって都市で、ここはマース王国の都市で王都から溢れ出たアンデッドが徘徊してるし、放置しても大丈夫だろうってのが私達の見解。まぁあんまり油断するわけにもいかないだろうけどさ。

 サイロスの西はデルゴーって都市で、ここはサイロス、スラール王都、バジールと街道が繋がってるんだけど、魔族の敗残兵は、このデルゴーへ逃げ込んでいるみたいだね。 

 今、名前が出たバジールはまだ魔族側の都市だったので、王都で数日間ほど兵を休ませた後、二万の大軍で攻略、ガーネルの守備兵はバジールに合流させたわ。


 これで、サイロス、スラール王都、バージルを制圧して、残りはデルゴーだけ。このデルゴーもスラール王都を攻撃したカレドニアとクロヴィアの連合軍四万五千にニコの軍五千を加えた総勢五万で攻撃したら、あっさりと陥落したのよね。

 この攻略戦の立役者は、やはりニコの軍の兵士達だと思うんだよ。カレドニアのランスローやガレスには及ばないにしても、兵士の一人一人がそれに近い実力を持ってるんだ。やはり魔族の血をひいてるが故なのかな。


 とにかくデルゴーを攻略したことでスラール王国の領土は全部人間側へ取り戻したってわけよ。まだ北西の都市国家が魔族の支配化にあるけどね。私としては、その都市国家群を取り戻して、大陸の北半分を完全に人間の版図として取り戻したと宣言したいんだよ。

 だけど、またニコがやらかしたんだよね。これは仕方ないのかなぁ? 以前の世界で私は仲間を組織して魔王と戦ったけど、国のトップって立場じゃなかったからね。ちょっと判断に迷うんだ。それでニコがやらかしたって内容だけどもね。デルゴーを奪還して、スラール王国全土を取り戻した時、これからどうするかって作戦会議の席だったんだけど……。



 「作戦会議に入る前に一言良いだろうか?」

 「何よ? それ魔族戦に関係することなの?」

 「先生。今言っておかないと、あとで落ち着いた時ではダメになるかもしれないんだ」


 ランスローが話すように促すと、ニコは話始めたんだ。


 「領土の事だ。俺の軍は人間と魔族のハーフで構成されている。この先、戦争が終わった後に何らかの差別を受ける可能性がある。そこでもし、小競り合いが発生したら、今度は俺達の仲間が魔族と言われて討伐対象になるかもしれない。だから俺の仲間が安心して生活できる為の領土が欲しいんだ」

 「スラールは王家も滅びてますし、国民も自発的に立ち上がって魔族と戦って奪還戦をやった実績もありません。だから元スラール王国の領土を得たいと言うのであれば、構わないのでは?」


 ニコの言葉にクロヴィアの姫様が答える。


 「ニコ、アンタは領土が欲しいって言うけど、それは構わないけど、領民は生き残ってるのよ。その人達は立ち退かせるつもり?」

 「いや、仲間をどう呼称するか、まだ決めてないけどよ。俺達の国を立ち上げる時に、魔族とのハーフも普通の人間として認める。差別は許さない。そういう国を作る。ハーフと一緒に同等の権利を持つ国民として生活すんのがイヤだってんなら、出てってもらうけどな」

 「ニコ、俺は昔からお前を知ってるから個人的には応援してやりたいんだがな。お前やクロヴィアと違って、俺達カレドニアの将兵にはそれを認める、あるいは反対する権限がねぇんだよ」


 ガレスは悪くはないと思ってるようだね。そしてランスローがニコに語りかけた。


 「ニコの気持ちは理解した。だがガレスの言うように、ここにいる我々には権限がないんだ。これからカレドニアまで早馬を飛ばしても往復で一ヶ月はかかるんだ。それまで魔族討伐を中止しろって言うのかな?」

 「そうだ。だけどランスロー達が進軍するなら、俺はやめろとは言わないよ。俺達は動かないってだけだ。そして領土として欲しい都市を確保させてもらう」



 全員が黙り込んだときに、ランドー上陸以来、別働隊として活躍していたアーサーが発言する。



 「何度も使者を往復させて時間を浪費すると、せっかく追い詰めた魔族が勢いを取り戻してしまう。そこで先に具体的な要望を我々で決めては如何か?」

 「というと?」

 「ニコはどこを領土として要求するんだ? 我がカレドニアの国王陛下が仕方ないと了承するような現実的な要求をだしてくれ。そしてこの際だからクロヴィアも我が国も仮に領土の分割要求をしてみたらどうだろうか?」

 


 ある程度固まった話をカレドニアの王が承諾するか否かって所まで煮詰めたらいいってアーサーは言ったのよ。それでまずニコはスラール王都、バジール、デルゴー、サイロスを自国の領土として要求したってわけ。クロヴィアの姫様は、オーロン、ラデックス、カティフを要求。カレドニアはランドー、ライレール、トラスカン、サファル、ガーネルを仮に取りたいって言ったのよ。



 「あとは、これをカレドニアの王様が飲むかどうか……だね。」

 「恐らくは大丈夫でしょう。ニコが選んだ土地は対魔族の壁となるわけですし、スラール王都は最前線となるデルゴーの後方支援基地として、必要になるでしょうからなぁ」



 私の言葉にノンビリとガレスが答えた。 

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