九話
勇者の血筋を守る名も無き村を出た私は北上していた。
村が大陸の南端だと聞いていたからね。
北上したら町の一つや二つ、すぐに見つかるでしょ?
それはともかく、実は猛烈に困っているのだ。
私ってば着の身着のままで村を出たんだよね。
お金も無いし。
村に戻って瓦礫を漁ろうかな?
村長の家とか探せば、当座の生活費くらい出てきそうだよね。
だけど皆を埋葬した所から視線を感じたら、どうしよう。
やぁアルマ。
戻ってきて嬉しいよ。
おや、何をするかと思えば火事場泥棒だなんて、ボクは悲しいな。
私の心の中のアルスは情け容赦ない。
死者にお金は必要ないじゃん。
私は生きなきゃいけないんだよ。
必死に言い訳をしてたら、獲物が来てくれたよ。
「お嬢さん、どこへ行くんだい?」
欲望でギトギトの目をして私の胸や尻を見ている。
あいつの想像の中では、どんな目にあわされているのやら。
でも、知らないフリして聞いてみよう。
「このへんで大きな町って、どこですか?」
「あぁ、俺が連れてってやるよ。この辺は物騒なんだぜぇ」
お前の方が、よっぽど危ないと思うんだが・・・御礼は言っておかなきゃな。
「まぁ、御親切にありがとうございます。この辺はどうなってるんですか?」
「なんでぇ、この近くの村の出身じゃねえのかい?」
「私、体が弱くて家から出してもらえなかったんです」
「そうかい。ここは裏街道で人の通りは少ねえんだ。よほどの訳有り以外は通らねえ。南へ行けば港町のフォースティンがある。北へ行けばカレドニア王国で一番の商業都市アルコンだ」
「そうなんですか。じゃあ、アルコンへ行ってみますね」
「俺が送ってやるよ」
そう言うなり俺の肩・・・じゃなくて、私の肩を抱いてきた。
そして逆の手で俺、じゃなくて私の胸を乱暴に揉みだす。
「なっ、なにをするんですか!?やめてくださいっ!」
「言っただろ?こっちを通るのは訳有りだってよ。お前身売りされたのを逃げたんじゃねぇのか?」
「違います!手を離して!」
「俺が逃げるのを手伝ってやるよ、その代わりに・・・」
なぁアルス、私は十分に可憐な少女として振舞ったよな?
私は怒って、こいつをぶちのめしても良いんだよな?
「いい加減に、その手を離せってんだ!このスケベ野郎!」
「なんだと?」
私は胸を揉んでる手の小指を掴むと遠慮なく、へし折った。
「いてえええぇ!? てめぇ、何をしやがる!」
「こっちのセリフだ、この野郎! 俺の胸に触っていいのはアルスだけだ!」
私は一歩前に出ると軽く拳を握って、腕を90度の角度で固定した。そのまま腕相撲の要領で腕を倒しつつ、腰を回転させながら肩を入れてスケベ野郎のアゴを目掛けて打つ。拳が当たった瞬間に腕も振りぬいた。
いい感じで命中したね。
私は女の子だし、体重を使って攻撃をしないと大きい男性には勝てないものね。
スケベ野郎の腰にあった剣を抜くと、未だに立てないスケベに剣を突きつけた。
「おじさま、私のおっぱいを揉んだ料金をちょうだい」
できる限り可愛く微笑んで代金を要求する。
体でお金を稼ぐなんて、どうかと思うんだけど正当な対価を要求してるだけで、強盗をしてるわけじゃないのよ?
私のような絶世の美少女
アルスは黙っていれば絶世の美少女って言ってくれたよ
が、可愛く微笑んで請求してるのに、おじさまは青ざめて震えながらサイフを出した。
「おじさま、もう立てるでしょ?立ってくださいますか?」
おじさまは立ってくれた。
「おじさま、ちょっとジャンプしてみてくださるかしら? あら、音がしましたわよ?ポッケのお金も出してくださいませ。それから靴下の中に緊急時の金貨なんて入れてませんか?脱いで確認させてくださいませ」
「てめぇ!悪魔か?もう勘弁してくれよ!」
「あら、おじさま。私、知らない方に荒々しく胸を揉みしだかれて恐かったんですのよ?」
スケベ野郎は有り金を全部奪われて悄然として去っていった。
毎度あり~ってなもんかな?
金貨1枚と銀貨10枚か。
まぁまぁかな。
さぁ北の商業都市アルコンへ行ってみよう!