表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/133

八十五話

 剣を構えた私は同じ場所に何度も刺突を加えたけど、ドラゴンモドキのウロコには何一つキズを与えていなかった。千手の型で数十、数百の斬撃を加えたけど、それもダメ。コイツに剣でダメージを与えるのは無理、かもしんないね。


 周囲を見渡せば屋敷の門を中心に下級魔族と、スレッジが指揮する仲間達が激しい戦闘を繰り広げていた。ゴブリンやコボルトは体が小さいので、壁を乗り越えて侵入するようなマネはできない。だから門を突破するしかないんだけど、そこにはバリケードや瓦礫などがあって思うように移動できない。

 やっと乗り越えると、今度は武装した私の仲間達が待ち構えていて、攻撃を仕掛けてくるので、だいぶ苦戦してるらしい。うん、思ったとおりの展開だね。これなら当分は大丈夫だね。


 意識をドラゴンモドキに戻して対策を考える。剣に内力をありったけブチ込んで、威力を上げて斬るしかないか。このドラゴンモドキは余裕をかましてて、私が余所見してても攻撃してこないしさ。私が剣に内力を集中し始めると、初めてドラゴンモドキが動きだした。私の集中を妨害するかのような攻撃をしてきたのだ。ということは、剣の切れ味を上げれば斬れるんだね。あとは集中する時間を如何にして稼ぐか、だよね。

 ドラゴンモドキの攻撃を避けながら、剣に内力を注ぎ込み切れ味を高めていくと、焦ったドラゴンモドキの攻撃が次第に激しくなってきた。どうにも避けるほうに神経がいって内力を注ぎこめない。多分、今のまま斬ってもウロコを傷つけるくらいだろうな。

 ありがたくないけど持久戦になっちゃいそうだ、なんて思っていたら、不意に別方面から打撃が飛んできた。辛うじて何とか避けたんだけど、その不意打ちの正体はドラゴンモドキの尻尾だった。こいつってば、今まで尻尾を攻撃に使わないで、私の意識から尻尾攻撃の可能性を消してやがったのよ。

 なんていうかせこいよ、せこすぎる。高位魔族がやることじゃないと思うんだ。おかげで大ダメージを受けることは無かったんだけど、剣を弾き飛ばされちゃった。


 ニンマリと笑うドラゴンモドキ。笑う爬虫類って見たことある? あんまり可愛いもんじゃないよ。しかも、こいつの笑みは武器を無くして、嬲り殺しにされるであろう私の未来を想像してのものだからね。 剣を遠くに飛ばされたので、私は無造作にドラゴンモドキの元へ歩いていく。奴は武器がない私など敵ではないと思っているのか非常に無用心に立っている。こういうところは親玉の魔王に似てるんだろうなって思うよ。自分の勝ちっていうか優位が定まっていると、敗者の行動を眺めて絶望に浸る様を楽しむっていうのかな。

 でもね、よくいるじゃん。とっととトドメを刺せばいいのに、クダクダと喋って逆転負けを食らう悪役っていうのが。そんで主人公に三流とか言われてた瞬間が人生の最後の光景だった、みたいな奴が。目の前のドラゴンモドキもそういう奴だと言わざるを得ない。

 私はドラゴンモドキの腹に手の平を当てて浸透勁をかましてやった。いや表面が非常に硬いんで、内部から破壊してやろうと思ってさ。剣で傷すらつかない時に、この技でいくしかないな~って思ってたんだけど、やはり戦の花は剣で倒すことだと思うのよね。だから頑張ってみたんだけども、まぁ武器も飛ばされちゃったし、仲間も頑張ってるし、自分の美学とかコダワリは捨てなきゃダメだよね。


 「あら、まだ生きてるなんて、さすが高位魔族ね。でも楽になりたいでしょう? 介錯をしてあげる」


 私を嬲り殺す様を想像して笑みを浮かべたドラゴンモドキと違って、私には負けて死にきれずに苦しんでる者を嬲る趣味はないんだ。だから仏の慈悲を持って、そう言ってあげたんだけどね。軽傷で後ろに下がり治療してた仲間の一人が証言したところによると、私は残忍な笑みを浮かべながら言ったそうで、非常に納得がいかない。


 ともかく、三対三が三対二になったのは非常に大きい。これで私は苦戦してる方へ応援にいけるからね。私としてはサンドバックとして持ち帰りたいブタ野郎の相手をしてるサラの応援に行こうかと思ってるのよ。だってさ、何とか生け捕りにしたいのよね。私はサラの方へと目をやった。

 

 「やああああああ!!」


 気合を入れたサラの両手が光り輝く。そしてブタ野郎の攻撃を掻い潜り、何度目かの接近戦に持ち込んだ。ダメなら私が交代するからね。あんまり無茶すんじゃないよ。さきほど見た時は、ここから強い打撃技を何発も叩き込んでたけど、今度はどうするのか。さっきと同じ事をやったら私が相手をしよう。それで上質のサンドバックが手に入るのだ。

 攻撃に成功すれば弟子のサラの成長を喜べるから良し、失敗しても私が相手をしてサンドバッグとして捕獲するから良し、そんなどっちに転がっても構わないって気持ちで私は弟子の戦いを眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ