七十八話
オーロンに戻ると、私はランスローに面会してブンケンと共にマース王国の現状について報告をした。その場には主な将軍やクロヴィアの姫様がいたけど、皆が沈痛な面持ちを隠せないでいたよ。
「では、マース王国方面からの魔族の侵攻は無いと思って良いわけですね?」
ランスローは私達に念を押すように確認を取ってきた。私が頷くのを見て、ランスローは話題を変えた。カレドニアの王都にいた一万の軍勢を無事に合流した事についてだった。
「これでオーロンに四万五千、トラスカンに二万の軍勢がいることになります。これが我々人類の最大戦力ということになりますね。マース方面は除外すると、残るはラデックスとカティフですが、トラスカン勢との合流を考えるならばカティフしかありません」
カティフ攻略を次の目標にする事は全員が賛成したんだ。どう攻略するかで意見は色々と出たんだけども、如何に魔族を分散させるかってのが問題だった。同数で戦えば私達は不利だし、勝てたとしても戦力が回復するのに、どれだけ時間がかかるか分かったもんじゃないからね。
ちなみに、カレドニアとクロヴィアでは志願兵を募り訓練を施して部隊を編成してるんだけど、魔族を相手にして戦える実力を養うのは並大抵のことではない。まず国内の治安維持で夜盗、山賊の類を討伐して腕を磨き、実力ある者の中から選ばれた者がオーロンへ来る事になってるみたい。
で、話をカティフ攻略に戻すけど、まずクロヴィア勢五千と王都から来た一万でラデックスに攻撃を仕掛ける。これは本当にラデックスを落とす為ではなく、隣接する都市から魔族の増援をひきつけるのが目的だ。残りの三万が本隊としてカティフに攻撃を仕掛ける。
陽動攻撃を仕掛けるラデックスはサイロス、スラール王都、サファル、カティフと隣接してる。恐らくカティフの魔族達はオーロンとトラスカンの人間の戦力を警戒して動かないだろう。残る三都市から援軍が出るはずだ。
私達の一番の狙いはサファリの魔族達が援軍として、ラデックスへ動いてくれることだ。
そうなれば、カティフに攻め込んだときに、サファリ方面からの増援部隊が減るはずだからね。
最悪の場合、ラデックスへの増援はサイロスとスラール王都の二都市のみで、サファリの魔族は動かないかもしれない。そうなるとサファリのほとんどの魔族がカティフへ援軍として来てしまう。
それに備えて三万で攻めるんだけど、最初はオーロンをカラにしてしまうことには強い反対が出たのよね。でも守備と称して遊ばせておくような余裕はないんだ。少ない戦力で攻めて撃退されたら、その損失は計り知れない。
私達は攻撃計画を実行に移した。クロヴィアとカレドニアの連合軍一万五千が出発した数時間後、私達の本隊三万がカティフへと進撃を開始する。スレッジ達を先行させて、カティフの戦力を確認することも忘れない。
戻ってきたスレッジの報告によれば、カティフにいる魔族は一万程度で、それも雑魚ばかりだという。ならば、私達三万で十分に倒せるだろう。スレッジを今度は伝令としてトラスカンに向かわせる。カティフの戦力をトラスカンにも把握させるためだ。
独自に偵察は出してると思うけど、盗賊ギルドの忍び足には及ばないだろうからね。
カティフの戦いは一方的な展開となった。勿論、私達の圧倒的な勝利だ。何しろ、敵には雑魚しかいない上に、数がこちらの三分の一しかいないんだからね。このカティフ戦において、トラスカン勢は援軍に来なかった。これなら私達で攻略できると判断したんだろう。
それにカティフが手薄だったのは、私達の気をカティフに向けておいてガーネルとサファルから大軍でトラスカンを攻撃陥落させる為の罠だと思えたってのもあるんだよね。トラスカンが抜かれてしまえば、魔族に対抗できる戦力もなくカレドニアの国土が蹂躙されてしまうもんね。
これでオーロン、カティフ、トラスカンのラインが繋がって、連絡がとれるようになったわけよ。




