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七十六話

 老人に招き入れられて部屋に入ると、そこは門番の控え室に使われていたであろう部屋だった。今はベッドなどを運び入れてあり、寝室にも使ってるようだけどね。


 「こっちだ」


 そう言われてついて行くと、城壁の中の通路に出たのよ。このあたりは、まだしっかりしてて、これだけを見てると、この王都が滅びたとは思えない。しばらく歩くと階段があって、老人は二階へ上がっていく。通路はもう少し先のところで瓦礫などでふさがって進めなくなっていた。

 私も階段を上がって二階部分へと出たけど、こちらも階段部分のみが残ってるだけで通路は瓦礫でふさがっていた。老人は更に上へ三階へと上がっていく。


 「うわぁ・・・」


 三階に上がると外壁は吹き飛んで無くなっていた。この王都へ来る為に自分達が歩いてきた道が、どこまでも遠くまで見えているので、つい歓声をあげちゃった。思えば私は高いところから遠くを見るのが大好きだったんだけど、この世界へ来てからは全然そういう機会が無かったんだよね。

 あぁ、クロヴィアのお城から魔族のカタパルトを見たことがあったっけ。でも、あの時は景色を楽しむなんて出来なかったもんね。


 「そっちじゃねぇ、こっちを見てみてくれ」


 老人に言われて振り返ると、他の三人は絶句して固まっている。三人の視線の方向を何の気なしに見て驚いた。そこには大勢の人達がいた。そう、このマース王国の住人達だ。その数は何千、いえ何万かもしれない。それが目的も無しに無秩序に動き回っている。そう、ただ動いている。よく見れば分かるんだけど、これはもう人間じゃないよ。かつては人間だった者達の成れの果てだ。

 死体が動いてるんだよ。ゾンビって奴だ。私は老人を見た。これは何かと説明を求めたいんだけど言葉が出ないんだよ。でも老人は私が何も聞かずとも教えてくれた。


 「魔族が二つの街道を通って攻撃してきた。苛烈を極める攻撃で次々と、王国の兵士も騎士も倒されたのだ。しかし、まだこの城壁がある。篭城してクロヴィアとカレドニアからの援軍を待とうと言い合ったのだ。だが魔族どもは巨大なカタパルトで巨大な岩を砲弾として使い、あっという間に城壁は破られた。そこから魔族が雪崩れ込み、あとは一方的な虐殺が始まった」


 クロヴィアも下手をすれば同じ運命だったから、そこまでは分かるんだけど、このゾンビは死霊達はどこから来たんだろうか。


 「住人達が殺されるか、わずかでも逃げ延びたか。王都に生存者がいなくなった頃にネクロマンサーの能力を持った者が王都の死者を使って反撃を試みたのだ」

 「御老人は何故それを知ってるんで?」


 スレッジが質問すると、老人は重い口を開いて答えた。


 「私は城へ逃げたのだ。城なら堅固だろうから、まだ戦えると思ってな。いや、違うか。死にたくないから少しでも生き延びられそうな所へ走ったのだ。だが城もボロボロだった。まだ多少は生きて戦ってる者がいて怒号や悲鳴が聞こえていた。私は身分が低いから、あの方が誰かは知らん。王族か貴族か、それとも宮廷魔術師だったのか。それが城から護衛と、わずかな生き残りと共に出てきて言ったのだ。この町から脱出しろと。自分はこれから死霊魔術の奥義を使って魔族を滅ぼす、と」


 老人が黙り込む。でも私達は誰も口を開かずに、老人が語りだすのを待っていた。


 「あの方が魔術を唱えている間、我々は必死に戦った。魔族に一矢報いるために、あるいは生き延びるために。詠唱が終わると、あの方は逃げろと言って力尽きた。魔族が我々を滅ぼそうと近寄るときに、それは起きた。死者が起き上がり魔族に襲い掛かったのだ。両者が争う中、我々は王都の外を目指して逃げた。魔族はアンデッドの大群を相手にして、我々などに構う暇はなかった。アンデッドも我々に襲い掛かることは無かった。やがて死ぬこともなく襲ってくるアンデッドに大打撃をうけた魔族は撤退していき、ここにはアンデッドが残るのみとなったのだ」


 だから、このマース王国に魔族はいないんだね。でも今の話からすると、あの死者達は魔族を襲っても、私達人間は襲わないんじゃないかな?


 「私は魔法については素人で分からないが、あの死者達は魔族がいれば魔族を最優先に襲う。しかし、魔族がいない時に生きた人間がいれば人間を襲う。私は不用意に近づいて襲われた」


 死霊魔術師が生きてれば、その辺も調整できたかもしれないけど死んでしまってるから無理か。そういえば生き残った人達は、どうしたんだろうか?


 「死者達は夜になると魔族を探して町の外へ出て行く。唯一例外はお前さん達が来た道だけだな。東門は壊れてないから出る事はできない。そして、あの当時は魔族が領地の中に残っていた。だから死者と魔族の両方から逃れる為に、森の中へ入ると言っていた」

 「森の中だって危険でしょう?」

 「この森の中心には世界樹があるのだ。世界樹は不浄なものを許さず浄化してしまうのだ。死者は森には入れない」

 

 森の中には人間を襲う存在はいるにしても滅多に会わないし、死者が来ない分だけ生存確率は上がるってワケか。



 

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