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七十四話

 私はシードとサラ、それからスレッジを連れてマース王国の都市、トレゴールへと向かったのよ。こないだのオーロン攻略戦はマース王国だって掴んでたはずじゃないのだろうか? 小国は情報戦に強くなければ生きていけないと思うんだけどね。



 「マース王国に限って言えば、そうでもないんでさ」



 スレッジが私の疑問に返事をした。私もそうだけど、ずっとカレドニアの地方都市で生活してたシードもサラも興味津々でスレッジの顔を見ている。そのスレッジは私達三人の顔を見て、どう話そうか思案してる感じだったが、ゆっくりと口を開いた。



 「アルマの姐さんも、弟子のお二人さんも期待なさってんで面白可笑しく話そうかって思いましたがね、やっぱりやめときますかね」

 「ウソは困るけど、面白く話すのは構わないわよ?」

 「いやぁ……色々と考えたけど面白くならねぇんで普通に話しますよ。マース王国とスラール王国の間には、つーか、マース王国の大半は森なんですよ。とんでもなく大きな深い森でしてね。この森を横断、縦断でもいいですが、通り抜けることなんざ不可能でしてね。しかもウソかホントか、森の中心には世界樹があるとかって噂ですな」


 世界樹かぁ……十分に面白いと思うけどねぇ? 


 「世界樹って、どんな木なんですか?」

 「さぁねぇ? 七色に光ってるなんて話も聞くし、クロヴィアの城がスッポリ入るほどに幹が太いなんて話もあるし、世界樹には意思があって話が出来るなんて噂もあったかなぁ?」



 サラの質問にスレッジは知ってる限りの噂などを話している。普通に話しても面白い内容だよね。サラも目を輝かせて聞いてるよ。今度はシードが質問してるね。



 「誰も見た人はいないんですか?」

 「いねぇなぁ。いたって話さないだけかもしれないがな」

 「マース王国は、スラール王国もですけど、その森を探索しなかったんですか?」

 「二つの王国もシードが言ったみてぇに探索しようと考えた。そして当然だが実際に探索隊を出したし、民間の冒険者なんかにも賞金をだして森を調べさせたんだ」

 「どうなりました?」

 「どうもこうも、悲惨なもんだったらしいぜ? 行方不明者続出で、生きて帰ってきた奴は何も有益な情報を掴めてなかった。ただ一つ分かったのは、ある程度奥へ入ると方向感覚が狂うらしいな。磁石も使えなくなるんだそうだ。そして強力な魔物もいたとか何とか」



 富士の樹海のもっと凄いバージョンなのかな? 


 

 「森を燃やしてしまえ、なんて乱暴な意見も出たらしいですがね、そんなことをして森から出てきた大量の魔物が都市へ行ったらどうするんだって反論も出て、最終的に森は放っておけって事になったそうですぜ。だからマース王国の王都へ向かうのなら、森を迂回した街道を通っていくしかないんですよ。そのルートをガッチリ守られたら、とても侵略なんて無理な話で、だからこそ今まで独立を守ってこれたんでしょうなぁ」



 なるほどね。トレゴール周辺で守りを固めてるのか。そういえば反対側は、どうなってるんだろ?



 「あっちは見たことないですが、川幅が一キロはあるんじゃねぇかっつーほどの大河がありますぜ。スラン川って名前でスラール王国の名前の由来は、この川だったはずです」



 海と川と森に守られた国か。上手く味方にして魔族を滅ぼしたいものだけどね。



 スレッジにマース王国の説明をさせながら国境を越えて国内に入り込んで数日が経過したのよ。ここにきて、私達の全員が変だと思うようになっていた。国境付近の小さな村が無人だったのは、まだ良いんだよ。中には派手に破壊された村もあったし、魔族に滅ぼされたのか、それとも村を捨ててもっと大きな町へ逃げたのかって思うでしょ?

 だけど、何日も歩いているのに誰も見ない。ここまで誰もいないのは、いっそ見事だと思うけど逆に私達は目立つと思うんだ。それなのに誰何すらされない。どこかで見張ってたりしてないのかな?



 「見えてきましたぜ。あれがトレゴール。マース王国の誇る城砦都市です」



 スレッジが指差した方向に、小さくだけどトレゴールの町が見えてきたんだ。

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