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七十一話

 東西南北の魔族軍のうち、南を包囲してた連中は壊滅的なダメージを与えることに成功したんだけど、東西と北については成功とは言い難い結果に終わったみたい。でも、南を壊滅させたことで敵の四分の一を削ったんだし、これでいいのかなって思うんだよ。


 敵は軍を分ける事に危惧を覚えたのか南に全軍を集結させたのよ。周囲を警戒して私たちが奇襲を仕掛けられないほどに厳重にしている。これで膠着状態に陥ったんだけど、私達はこれで良いと思ってんのよね。なにしろ、カレドニアの本隊が来るまで力を温存できるのだから。


「これで、やれることはやりましたね」


 姫様も同じ事を思ったみたいで、そんな事を言っていた。ガレスもこれ以上は無理と見て、城外へ軍を引いて陣を敷いたみたいね。それから二週間ほど経過して、ついにカレドニアの本隊が到着したわけ。ランスロー率いる二万五千の歩兵が、この地に来たんだよ。私はそれをスレッジの報告と、そして魔族の軍勢が外へと進軍していくので分かったのよね。魔族は決戦をするのに城外を選んだみたい。魔族軍の本隊はカレドニア軍に任せるとして、私達もやれることをしなきゃね。



 「ですが魔族軍は五千程度の軍を残しています。これと正面から戦うのは無理では?」



 そんな意見も出たんだよね。私達で戦える戦力は二千くらい。魔族軍は篭城する私達への抑えとして、かなりの軍勢を残していったのよ。篭城してるだけなら問題ないんだけど、外へ出て戦うとなると倍もいるんじゃ厳しいよね。五千って数字は、城の外へ出てくれば叩き潰すって魔族軍の意思だと受け取ったんだ。だけど、そこでスレッジ達が偵察をしてきたんだ。



 「アルマの姐さん、敵は殆どがゴブリンやコボルトの類ですぜ。数は多いが訓練された人間の敵じゃねぇと思いますがね。あとは何匹かトロールやオーガがいますが、何とかなるんじゃないですかね」

 「ふ~ん・・・どうりで城から離れた場所に布陣するわけだね。五千って数字を見せつけてるのか、とも思ったんだけど、軍勢を構成してる種族を知られたくなかったわけか」



 これなら戦えば勝てると思う。あのオーガやトロールさえ何とかすれば。そしてそれは私の役目だ。



 「もう疲弊しきった我が国は魔族に対抗する力がありません。このままカレドニアに庇護下に入り、そして吸収合併されて国家として消滅するでしょう。 それも仕方がありません。 ですが、そうなるまで我が王家は、我が軍は民を護ったのだと誇りを持って滅びたい。 アルマ様、戦いましょう!」



 一国を預かる立場として姫様は戦闘することを選んだ。配下の騎士も兵士も戦意は高いみたい。



 「やりましょう姫様、あの魔族を叩きのめして王都を綺麗にしましょう!」 



 カレドニアと魔族の大軍同士が睨み合う中、私達クロヴィア勢は王都に残る魔族の掃討作戦を開始した。腕に覚えのある者ばかりを選抜して千人の軍に再編したのよ。これが魔族軍五千と激突するんだ。残りの千人を更に二つの隊に分けて、一つは城の防衛を任せたの。もう一つはスレッジを隊長にして、東西と北の門をを閉じる役割を任せたわけ。南門は最後まで閉めない。王都の戦況と魔族とカレドニアの戦闘次第で決める手筈になってんのよ。


 城の南の橋をおろして私たちが出る。魔族は王都の南門付近に陣を敷いてるため、こちらへ来るにしても時間がかかる。きっと今頃は北の橋をおろしてスレッジ達が出ていることだろうね。千人が城の外へ出ても、敵軍の動きは鈍い。こっちの動きを知らないのか、それとも勝つ自信があるのか……


 「もしかして、外で行われるはずの魔族軍の本隊とカレドニア軍の勝敗が気になってるのかもしれないですよ」

 

 そう言ったのはシードだった。ゴブリンやコボルトは弱い敵に対しては勇猛で獰猛な戦士となるんだけど、ちょっとでも不利になると本来の気の小さい臆病な性質が顔を出すんだよ。そして一旦臆病風に吹かれると、あっというまに壊走するんだ。そうか、オーガやトロールはゴブリン達が逃げ出さないようにする為の見張り役みたいなものかもしんない。


 私達が魔族軍に向かって進軍を始めると、向こうも遅まきながら進軍を開始した。敵は私達を包み込むように動いている。だけど王都の町の中では、そんな事はできない。だからこそ敵の本隊は外へ出たというのに、こいつらはバカだよ。

 そうやって敵の陣形が乱れたところを狙って、私達は一気に走って距離を詰める。私が袈裟斬りにした隣でサラが拳を無数に叩き込んでいる。さらにその向こうでは、盾を使う兵士が数匹のゴブリンを猛烈な体当たりで吹き飛ばし、転倒した一匹の顔面を踏み潰していた。

 頼もしいんだけどグロい……敵も同じように感じたみたいで早くも逃げ腰になっている。そのなかの恐怖に耐え切れなくなった奴が背中を見せて逃げようとしたけど、すかさず二刀流の兵士が斬り倒した。


 「ここは大丈夫だね! 任せたよ!」


 私は他の方へと走っていく。前方に華麗な鎧を纏った姫様が、刀身を輝かせた剣を持って戦っていた。その周囲には護衛の騎士達が戦闘をしている。


 「姫様、大丈夫!?」

 「ええ、私は大丈夫です!」


 派手な姫様に引きつけられるように、敵の中でも上位の強さを持つトロールやオーガがやってきた。こちらの姫様を倒せば、勝ちだと思ってるのだろうか。間違いじゃないけど、それは最悪の選択ってもんだよ。だって、私がいるんだからね。大きなトロールやオーガ等が寄ってくれば、それを見た我が軍もやってくる。ここが最大の激戦地になりそう。いや、なるだろうね。


 「お前達、私が相手だよ!!」


 そう叫んでオーガの両手を斬り飛ばし、そして足を付け根から斬り落としてやった。バランスを崩して倒れる巨人の顔面に剣を突きこんでトドメを刺す。次はトロールを、そう思って振り返ると姫様がトロールを真一文字に斬り捨てていた。

 あの輝く刀身は内力を込めて切れ味を高めたものだろうし、あの大きな巨人を真一文字に斬ってみせた力も内力によるものだろうけど、何とも大した姫武将になっちゃったよね。

 他にも何体かトロールやオーガがいたけど、シードやサラ、杖術使いの兵士が討ち取ったらしい。まだ半分以上、二千以上もゴブリンやコボルトはいたんだけど、怖気づいて壊走していた。


 「逃げる敵は追わないで、南門を閉めて下さい!!」


 姫様が指示を出している。スレッジ達は、まだ東西の門を閉めてる頃だろうか。シード達の隊が南門を閉めた。これでクロヴィアの王都は私達が取り戻したんだ。


 「姫様! 勝鬨を上げましょう!!」

 「ええ!」


 私達の上げる勝鬨の声は中央の城にも届いたようで、城に残った守備隊からも勝鬨の声と、そして民衆の歓声が響いていた。

 


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