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六十八話

 うん、可愛いなぁ。こういう子を見ると、あと2~3人は子供が欲しくなるね。息子だとニコみたいになったら面倒だから、娘がいいかな。


 「ありがとうございます。こんな風にしていただいたのは初めてです」

 「そうかい? 私も娘を相手にしてるみたいで楽しいよ。私の名前はアルマっていうんだよ」

 「アルマ……様……」

 「アルマさんでいいよ。あるいは親しみを込めて、お姉ちゃんでもオッケーだよ!」

 「アルマさん、アルマお姉ちゃん。私、身内がいないんです。殺されたのか、他の場所にいるのか分かりませんけど……だから、お姉ちゃんって呼べるの嬉しいです」


 そういうとニコニコと笑った。健気だねぇ、ニコが守ってやろうってのも分かる気がするよ。


 「で、あんたの名前を教えてちょうだい」

 「名前は無いんです。おいとか、お前とか、人間とか呼ばれてました」


 名前すら無いのか、この子も相当に酷い体験してきたんかなぁ。


 「じゃあ、アンタの名前はルージュに決まりね」

 「ルージュですか?」

 「私の名前はアルマ・リュージュなのよ。リュージュの名前をあげようと思ったけど、少し言いにくいかなって思うから、ルージュだよ。イヤかな?」

 「いえ嬉しいです。ありがとうございます」


 ルージュはシッポをパタパタさせながら喜んでいる。耳もピンと立てて元気になってきたようだ。


 「ルージュ、さっきも言ったけど、あんたは城にいない方がいい。気が立ってる連中に何をされるか分からないからね。私がいれば守ってやれるけど、結束が乱れるかもしれない。所詮は私もこの城では余所者だからね」

 

 元気よく振られていた尻尾は、一転して痛々しいほどに潮垂れている。


 「だから、あんたを守れるナイトをつけて城の外へ逃がそうと思うんだけど、どうにもナイト様が頼りなくてね」

 「ニコさんの事ですか?」

 「そうだよ」

 「私を助けてくれた時、とても強かったですよ」

 「まだまだ、全然ダメよ」


 そろそろニコの奴も目を覚ましたかな? 


 「じゃあ行くよ。本意じゃない事も言うけど気にすんじゃないよ。私は名前をあげたアンタを絶対に見捨てない。それを覚えておきなさい」

 「はい!」


 兵士の宿舎として使用してる部屋の方へ向かうと、ニコが鬼のような形相で何かを探している。私達を探してるんだろうね。ニコの頭の中では子供には見せられない姿のルージュがいるのだろう。でも、私がその気なら、それは現実になっていたんだよ。そしてそれは守れなかったニコの責任なんだ。


 「ニコ、さっきから何を探してるのさ?」

 「先生! その子を返してもらおうか!」

 「ダメだよ。この子には兵士達にサービスしてもらうんだからね。そのために今まで肌を磨いてきたんだよ」

 「まだ、そんな事を言うのか!?」


 ニコは私を睨みながら歩いてくる。微塵の隙もないから、さすがに私も手を出せない。いいね、ニコもスケベ野郎じゃなくて、大切な何かを守ろうって男の顔になってきたね。ニコはルージュの腕を掴むと引き寄せようとするけど、ルージュは一瞬だけ躊躇して私を見た。

 私は微かに笑みを浮かべてニコには分からないように頷いて見せた。小声で「頑張りなさい」とルージュに囁いて背中を軽く押した。ニコはルージュを引き寄せると、首都の外へ繋がる通路へ下がっていく。私からある程度距離を取ると走りだした。

 でも、まだ逃がさないんだよ。他の通路を使って、二人の前に出て待ち伏せをする。


 「ここまで来れば先回りはされないと思うけど、油断は出来ないから急ごう!」


 ニコが背後を気にしながら、そんな事を言っている。残念ながら、もう先回りしてるんだけどね。


 「ニコ。待ってたよ。その子を私に返しなさい」

 「うわっ!? いつのまに先回りしてやがった!」

 「その子を連れて移動してるんだから、内力を使った歩法を使えば追い越して先回りできるわよ」

 「先生、見逃してくれよ」

 「ダメ」

 「この子を性奴隷にする気なんだろう? 俺は助けたいんだよ」

 「アンタが外へ逃がしても、どうせ魔族相手に死ぬことになるよ。だったら中で生き延びた方が良いんじゃないかな? 例え奴隷の立場でもね」

 「俺が絶対に守る!」

 「行動で証明してみせなよ!」


 ニコが再び戦闘を仕掛けてくる。本当にもう、ルージュを守れるだけの力を見せてみなよ。最悪の場合は、私かシードとサラの近くにおいて、ルージュを守るしかないんだけどね。


 「ほら、教えたろ? 強い内力は跳ね返せなきゃ受け流すんだよ。内力を体内に満たして動くんだってば、このバカ!」

 「やってらぁ!!」


 こりゃダメかなぁ? そう思ってルージュを見たら、ルージュが頷いた。何だろ? 何かをする気なのかな? ちと様子を見るかな。


 「ニコさん。私を守ってください! そしてスラール帝国内にいる私の仲間達を助けてください!」

 「そうだっ! それが、それこそが俺のやるべき道なんだ! 俺はアレスやアリスみてぇな勇者にはなれねぇけど、勇者の出来ないことを俺がやってみせるんだ!」


 うんうん、その言や善し! それが大言壮語じゃないってところを私に見せてみな。私が内力を込めて突きを撃つ。ニコはそれを受け流しながら、両手を突き出して私の胸に当てると発勁を決めた。

 大ダメージを受けないように内力で受身を取ったけど、さすがに効いたわね。うん、ニコも合格だ免許皆伝だね。ニコは自分の掌を見ていたので、多分手応えが違うと自分でも感じたのだろうね。その感覚をわすれんじゃないよ。

 ニコは、こちらを見ると私の真意を悟ったのか、ありがとうと呟いて走っていく。ルージュが心配そうに、振り返ったので小さく手を振ってあげた。

 私の最後の、そして最大に手のかかった弟子が、ようやく独り立ちしたか。頑張りなさいよ、本当に。

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