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六十五話

 カタパルトへ向かう為には、敵陣を突破しなければならない。しかも相当な距離があるから、敵を蹴散らしながらだと消耗してしまうだろうね。どのみち隊列組んで橋をおろして進撃開始、なんてやってたら敵の砲弾の良い的になっちゃうよ。


 「と、いうことで最寄の食料倉庫まで地下を通って、そこから地上を通って攻撃するしかないと思うんだけど、どうかな?」


 会議の席で私が言ったら概ね賛成してもらえたんだけど、シン隊長曰くカタパルトを破壊した後も、そこにバリケードを作って防衛用の砦を作ってはどうかって言うのよ。地下でつながってるし、補給で問題はないんだよね。敵の大軍に対抗しきれなくなったら倉庫へ撤退すればいいわけで、倉庫は偏執狂の技術者のおかげで大陸ナンバー1というくらいの防御力があるから絶対に守りきれるよね。


 「では隊長の案も採用しましょう。まずはカタパルト付近の倉庫で試しましょう。効果的であれば、他の倉庫も砦として活用しましょう。ですが、それはカタパルトを破壊した後の話です」


 姫様がカタパルトの破壊の方法へと話の流れを誘導していく。

 

 「破壊の方法ですけど何か策はありますか?」

 「それはスレッジ達に任せましょう。彼らは身軽ですし、カタパルトの構造的な弱点に爆発物を仕掛けるなり、燃やして破壊するなりしてくれるでしょう」

 「アルマの姐さん、相変わらず人使いが激しく荒いですな。しかしまぁ、望むところです。やらせてもらいますぜ」

 

 スレッジはニヤリと笑って破壊作業を請け負った。そうそう、そうやって活躍しておけばシーフギルドは優遇されるし、騎士団からも一目おかれるってもんだよ。まぁスレッジも分かってるだろうけどね。抜け目ないからね。


 「私とニコが20名を連れてA倉庫から出撃、シードとサラはB倉庫から20名を連れて出撃。スレッジ達も破壊工作に必要な人数を、両方の隊に振り分けてちょうだい。もしかしたら片方がカタパルトまでたどり着けない事態が発生するかもしれないからね。最低でも片方が辿りつけば破壊できるようにしとかないとね」

 「了解しましたぜ」

 「姫様は城の地下で待機」

 「わかりましたわ」

 「シン隊長は隊をA砦、B砦に分けて待機させて、私達が倉庫へ撤退するのを援護してちょうだい」

 「了解です」

 「では、明日の夜明けと共に奇襲をかけるわよ」


 翌朝、まだ東の空がやっと明るくなってきた頃、私達はA倉庫へ来た。


 「そろそろ行くわよ」


 私はニコやスレッジに声をかける。しかし、スレッジが待てと制止してくる。上の階からの報告では、倉庫の入り口付近に小型の魔族が何匹かいるらしい。「どうしますかね?」とスレッジが指示を求めてきたので、上の階から弓矢で狙撃。と、同時に入り口より突撃して敵を殲滅すると伝えた。

 「豪快ですな」そう言いながら、スレッジは上の階へ伝令を送る。手筈を整えて入り口を僅かにあけて、外の様子を伺う。敵に矢が刺さったら突撃してやるのよ。


 しかし、またここで状況が変わる。外にいた魔族の元へ他の魔族が来て連れていったのだ。相当に慌てた様子だったので、シード達と遭遇して戦闘状態になったのかもしれない。


 「敵は恐らく私達の別働隊か、城へ向かったのだと思われるわね。この機を逃す手はないわよ。このままカタパルトへ向かうわ!」


 極力物音を立てずに静かに私達は進撃を開始する。幸いにもカタパルトへ向かう道中では敵に出会うことは無かった。きっと、シードやサラの方へ迎撃に向かった為かもしれない。しかし、そんな幸運もここまでだった。


 「アルマの姐さん。あれを見て下さいや」

 

 そこにいたのは大型のトロルやオーガーなどだった。数匹はいる。ここからは総力戦でやるしかないよね。


 「スレッジ、破壊工作を成功させなさいよ!」

 「了解でさぁ」


 スレッジ達が離れて行った後に、私達はゆっくりと敵に近寄っていく。やがて魔族の方も私達に気がついた。だが小型の魔族か、敵の人間なのか、そこまでは判断できてないようだ。私は歩みを速め、やがては小走りになり、全力でトロルやオーガーへ走っていく。

 私の後ろにはニコと兵士達が続いている。私とニコは敵と一対一で戦い、兵士達は複数対一で戦うように予め指示してあった。あとは上手くやれればいい。出来ないときは死ぬだけなんだ。


 「よいしょっと!!」


 私は内力を込めてオーガーを一刀両断すると、隣ではニコが刃物のように鋭利な気弾を飛ばしてトロルの首を斬り飛ばしている。私達ほどの内力は無いけれど兵士達もオーガーやトロルを囲み、死角からふくらはぎやアキレス腱を斬り刻む。そして転倒したところを、首筋や喉、目などを狙って攻撃している。


 しかし、全員が上手く攻撃しているわけではなかった。オーガーの攻撃を受けて即死した兵士もいたし、その死に様を見て動揺した連中は、数秒後には息もしない肉の塊へと無残に変化していた。


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