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六十二話

 倉庫の中へ入って、とりあえずは第一段階終了といったところかな。周囲には穀物の入った袋が所狭しと積み上げられていて、これなら食べ物の心配もいらないよね。


 「さて、次が問題ですな」


 スレッジが床を見て言ったんだけど、本当にそうだよね。床下からは破れなかったけど、室内からだったら穴を開けられるだろうか。


 「担当官、ここをツルハシで思いっきり叩いてちょうだい」

 「そんな事をして大丈夫ですか?」

 「さぁ?」

 「さぁって、下手をしたら私はミンチですぞ!?」

 「大丈夫よ。アンタの代わりは、いくらでもいるからね」

 「悪魔だ。ここに悪魔がいる」


 しかし、ここでスレッジが助け舟をだした。


 「姐さん、ここの真下が通路か分かりませんし、城から来た連中が床下を叩いて合図するまで待ちましょう」

 「そうね。一つしかない命を無駄に捨てさせるのは勿体無いもんね」

 「勘弁して下さいよ。私が死ぬのは決定事項ですか!?」

 「だって、倉庫内の床まで魔法で防御が施されていたら、ここにいる意味がないもの。また城まで戻らなきゃダメだし、その時は援護はないんだよ。担当官は武術も内功も心得ないでしょ?」

 「ええ、まぁ無いですけど」

 「そしたら魔族が攻撃してきたら死ぬわよ。それなら人類の為に死ぬべきだと思うでしょ?」

 「あ~~~~~~、なんで私は一緒に来てしまったんだろう!?」


 落ち込んでるけど知らない。放っておこう。あのバカのせいで、私は自分が大勢のケダモノ野郎に強姦されて喘ぎまくるという屈辱的なセリフの練習をさせられたんだからね。まぁ予算の関係上、倉庫室内からの破壊攻撃にまで防御の魔法はかけてないと思うんだよね。

 十分ほどすると、床下からコツコツと叩く音が聞こえてきた。早速スレッジが床の音がした場所に印をつける。そして穴を開ける作業をするから退避するようにと、床下の連中に指示していた。


 「では姐さん、始めましょうか」

 

 スレッジの言葉を聞いて、担当官が屠殺場に連れていかれる家畜のようになっていた。でも、印をつけた場所に立つのは私だ。不思議そうな顔をした担当官が私に尋ねてくる。


 「あの、私がやるのでは?」

 「ウソに決まってんでしょ。私がやんのよ」


 私は内力を込めて拳を印に叩きつけた。床に亀裂が入るけど、私の体には何もダメージがこない。良かったよぅ、本当は少し不安だったんだよ。担当官からツルハシを受け取ると、思いっきり亀裂の場所へ振り下ろした。床下の通路にまで穴が開いて、下の通路で恐々と見上げてくる兵士の顔が見えた。


 「ここまでやれば大丈夫だよね。あとはよろしくね」


 私が兵士にツルハシを渡して後ろへ下がると、担当官が来て話しかけてきた。

 

 「アルマ様、お疲れ様でした」

 「アンタもね。これで任務完了でしょうね」

 「何故、私にやらせなかったのですか?」

 「危険な任務を他人任せにしたら、人はついてこないわよ」

 「ですが、アルマ様に何かあったら取り返しがつかないのでは?」

 「勝算はあったわよ。この世界の人達は内力を知らなかった。だから内力を使った攻撃には反応できないと思ったし、自分の内力だったら跳ね返ってきても中和できるって思ったのよ」


 もう一つは、私が仮に死んだところで勇者の血をひいた子供達がいるし、私のオリジナルと言えば良いのか分からないけど、アリマもいる。だから大丈夫なんだよ。でも、これは口に出しては言わないけどね。


 「内力ってものが何かは分かりませんが、私はアルマ様に感服致しましたぞ!」

 「そお?」

 「ええ! これでまた、アルマ様を主人公にした物語の構想が湧いてきました!」


 物語? ちょっと待て。


 「あんた、またエッチな話じゃないでしょうね?」

 「純愛ですぞ!」

 「どんな話よ?」

 「子供達も巣立って一人きりになり寂しいアルマ様の心の隙間を埋めるために現れた一人の男。やがてその男に溺れるようになり、何でもいう事を聞くようになったアルマ様。やがては羞恥心すらも捨て去り男の肉奴隷になるのです!」

 

 どこが純愛だよ。エロじゃないか。完璧なエロじゃないか。担当官の顔面に拳をねじり込むようにして叩き込む。


 「却下! もし書いたら生きたまま消し炭になるまで燃やすからね?」


 返事がない。どうやら気絶してるらしい。私は床の穴を広げる作業を見た。下の通路から兵士が顔を出して、スレッジと握手をしていた。

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