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六十一話

 いよいよ決行の日が来た。ホントにもう、この日を待ち焦がれていたわよ。

 何が悲しくて、エロゲーの声優みたいな事をしなければいけないのか。

 

 「いささか、演技には不満がありますが、まぁ何とか開錠するレベルには到達してるでしょう」

 「こいつ……偉そうに……あんたが設定したんだから、あんたがやんなさいよ」

 「ふっ! ノミの心臓と言われた臆病者の私が、魔族共がいる中で平静を保って読めるワケないじゃないですか!」

 「胸を張って言うことじゃないでしょーが! もう何で私なんだよぅ?」

 「思い起こせば一ヶ月ほど前、絶望した我々の前に魔族の包囲を破って、颯爽と首都へ入ってきた戦女神! それが貴女です!!」

 「戦女神とか称えるクセに、エロいパスワードにしちゃうわけ?」

 「ロリで巨乳の美少女。しかしとある筋からの情報では、年頃の美少女の娘がいるとか?」

 「その美少女と双子の息子もいるけどね」

 「野郎なんざ、どうでもいいのです!」


 この野郎、アレスはどうでもいいとか言いやがったな? アルスに似てる可愛い我が子なんだよ。


 「ロリでありながら母親! そして母親でありながら子供を産んだようには見えない外見から、アルマ様を初めて見た男性はロリなのに姉のような包容力を持っていると感じるでしょう! しかし、年下にしか見えないから妹のように可愛い! つまり、ロリコンにしてマザコン、そしてシスコンと全ての属性を持っているのですぞ!」

 「知らないよ、そんなこと」

 「さらに!!」

 「まだあんのかよぅ?」

 「母と娘を同時に頂く親子丼の夢すらも!! これがエロでなくて何であろうか!?」

 「ろくでもねー夢だなぁ、もう」

 「そう仰いますが、お弟子さんは私に全面的に同意して下さいましたよ?」

 

 ニコか。そういえば、この担当官もニコと同じ精神構造してんだろうなぁ。きっとニコとは心の兄弟なんだろうなぁ。そこへスレッジが口を挟んできた。


 「姐さん時間ですぜ。隊長が東門から、ニコ殿が南門から出撃した頃合です。魔族どもが移動を開始したら、我々も堀を舟で渡りましょう」

 「了解よ」


 東門と南門の連中が押し寄せる魔族と戦い続けるとしたら20分くらいが限界かな。それまでに開錠しなきゃいけないんだけど、まぁ何とかなるでしょ。それに姫様が遊軍として控えてるから、どっちかがマズイことになっても大丈夫なはず。


 「姐さん、魔族が移動を開始しましたぜ」

 「オッケー、もう少し待ってから舟を出しましょう」

 

 魔族の移動開始から1分して私達は舟を静かに漕ぎ出した。対岸についたのは3分を5分を経過した頃かな。倉庫の前には小型の魔族が3匹いたので、私とスレッジと兵隊達で同時に倒す。短い時間だったけど、派手な剣戟が響いたので魔族の応援が来るかもって緊張したんだ。でも、東門と南門で激しい戦闘が行われてるせいか、こっちには来なかった。


 「いや、驚きましたな。堀からでは死角で見えませんでしたし」


 スレッジがぼやいてるけど、よくあることだよね。むしろ手早く始末できたんだから上出来だよ。


 「さぁアルマ様! 今こそ特訓の成果を見せるときですぞ!」

 「分かってるわよぅ、あんたらは周囲の警戒をしなさいよね」


 私は一回深呼吸をすると、メモを見ながらパスワードを読み始めた。そして最後のセリフのところへ差し掛かる。

 『いやぁ! いやよぅ! お願い入れちゃダメぇ~! あぁ……知らない男の人のが入ってくるよぅ……え? ヤダ、中に出さないで! ダメよぅ! 中は、中にだしちゃ、らめぇ~!!』

 音声を認識する魔法の板が輝いて、擬似音声が流れる。


 「パスワード ヲ カクニン シマシタ。 カイジョウ シマス」


 カチャっと音がして、ドアが開く。さすがに私もホッとしたよ。あんなの何回も感情込めて読むなんてやりたくないしね。ここまでで10分は経過してるのかな。いい感じだと思う。


 「ほら、開いたよ」


 私が振り返ると、担当官は前屈みになって、エッチな笑顔で私を見てる。


 「素晴らしい演技でしたな! 私は思わずアルマ様を押し倒して思うがまま蹂躙したくなりましたぞ!」

 「うるさいよ! いいから中へ入りやがれってのよ!」


 担当官を倉庫の中へ蹴り込むと、スレッジや兵士達が次々と入る。私は魔族が来ないかを確認しつつ室内へ入った。

 

 「スレッジ! 倉庫への侵入成功の狼煙を上げて! 余力があるうちに引き上げた方が被害は少なくて済むはずよ!」

 「了解!」

 

 しかし、スレッジは既に兵士に指示を出してたようで、狼煙が空へと昇っていく。

 作戦成功だわね!


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