五十七話
スレッジが帰ってくるのを待って私は会議室へ向かった。
「少しは休ませて頂きたいものですなぁ、実にコキ使って下さるもんです」
「泣き言を言うんじゃないっ! さっさと行くよ」
会議室の前に待機していた兵士に、スレッジが戻ってきたので姫様と騎士団の隊長を呼ぶように頼んで、私とスレッジは室内に入って待つ事にした。スレッジは待っている間、テーブルに突っ伏して眠っていた。
「お待たせして申し訳ありませんでした」
私達が入ってから二十分もしないうちに、騎士団の隊長と姫様が現れた。
「いや、もっと遅くても構いませんでしたぜ」
スレッジが眠そうに言う。もっとシャキッとしなさいよ。
「アルマ様、食料の件ですわね?」
「その通りです。このスレッジがいない事には話ができませんでした。なので、スレッジが帰ってくるのを待っていたわけですが……」
「姫様、アルマ様。食料も大事ですが、その前にスレッジ殿の報告を聞きたいのですが」
騎士隊長の発言に、私は先走りすぎたと反省する。
「確かに隊長の言うとおりですね。スレッジ殿、報告をお願いします」
「は、はいっ! 首都に近い町、プルートですな。ここに奪還軍がいたとアルマ姐さ、アルマ様より聞いていたんですが、残念ながらおりませんでした」
「なんですって!?」
思わず、声を出した私に、姫様が手をあげて制する。私は赤面して頭を下げた。
「カレドニア方面へ十キロほど後退したカロリナ平原に陣を敷いてます」
「何故? スレッジ、町はどうしたのよ?」
「この首都を攻撃した直後、魔族の別働隊が町を攻撃したそうで、町は壊滅しましたぜ」
「住民は? 奪還軍は?」
「住民は大きな被害を出しましたが、大多数がカレドニア方面へ逃げたそうです。奪還軍は五千の兵がいたそうですが、住民の脱出を援護と殿を務めた為に半数近くが戦死だそうです」
これは、思っていたより状況が悪いわよね。
「それでカレドニアからの援軍は、いつ来るのですか?」
「カレドニア軍の三万が、すでに王都を出たと連絡があったそうです」
「少ないんじゃないかな? 全軍で五万から六万はいたはずだよ?」
「王都防衛とカレドニアの南にある港町の防衛に三万を残しているようですな」
そうか、アルス達の村は南から侵入した魔族に壊滅させられてたんだった。王都にも魔族が潜伏してたし、それを考えたら軍勢を出し惜しみしてるとは言えないわよね。魔王の野郎、そこまで考えてたのかしらね?
「それにしても見事ですわね。わずか五千の手勢で魔族の大軍相手に撤退戦を演じたのですから」
え? 姫様は何を?
「アルマ様の教えた内力、それが無かったら住民も兵士も皆殺しにされたはずです。それが半数の戦死で済んだのですよ。大きな犠牲に違いはありませんが、私達人間は魔族相手に戦えるのです」
いつのまに、そんなにポジティブシンキングするようになったのかしら? でも確かにそうだわ。
「三万もいれば勝てますね! 私も少し弱気になってたけど」
「それでアルマ様。食料倉庫の件ですが、どうやって回収しますか?」
私は食料倉庫の場所を記した地図を広げた。その地図を姫様と隊長とスレッジがのぞき込む。
「スレッジ、城と外を結ぶ通路。アンタのアジトと城を結ぶ通路。その近くにある食料倉庫はない?」
「そうですなぁ……」
スレッジは地図をしばらく眺めたあと、一箇所を指差した。




