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五十六話

 スレッジを送りだした後、私は城の中を見て回った。姫様も私についてくる。

 中庭の花壇を見て、花じゃ食べられないなぁ、と呟いたら姫様は侍女に何事かを命じていた。


 「早速、食べられるものを植えるように指示を出しておきました」


 うわ~、迂闊に独り言も言えないじゃないのよ。

 そこへ誰よりも大きな声でニコが私を呼んでいる。


 「センセーーーーーーーーー!! ちょっと来てくれよ~~~~~~~!!」

 

 でけぇ声で呼ぶんじゃないっ!! 恥ずかしいじゃないか!

 注目度120%じゃん! あ、後ろからついてくる姫様が注目されてんのかな?


 「なによ? 大きな声で呼んでくれちゃってさ」

 「うおっ!? 姫様も御一緒でしたか! じゃあ、ちょうどいいかも」

 「私が必要な話なのでしょうか? 極秘の話でしたら会議室に行きますか?」

 「いやっ! そんな内容じゃないっす! 実は城の食料が少ないって御存知でしたか?」


 おおっ! さすが我が弟子。とにかくまず食べる事に気持ちが向くとはね。


 「……なぁんかセンセー、俺の事をバカにしてんだろ?」

 「し、してないよっ!?」

 「そおかぁ? どぉもセンセーの俺を見る目が生温かいっつーのかな」

 「気のせいだよっ! いいから、話の続きをしなさいよ」


 コイツ、妙なところで鋭いよなぁ。


 「いや、ここの守備をしてる騎士のオッサンと話をしてたんだけどさ。城の備蓄は実は多くないんだって聞いたんだよ。だけど、この国の首都ってさ、スラールやカレドニアが攻めてきても数年間、下手したら十年くらい篭城できるって聞いた事があってさ」


 姫様が何か嬉しそうに頷いている。堅牢な城砦都市を持つからこそ、クロヴィアは独立を守ってきたんだし、そういうのは誇らしいのかな。


 「こんなチッポケな国で、攻めても堅くて首都を落とせないメンドクセー国だって、大国に思わせたから滅びなくて済んだんだろ? なのに城の備蓄が少ないって変だよな?」


 ニコってば姫様がいるのに、そんな身もふたも無い事を言っちゃって。

 あ~あ、姫様が下向いて震えてるよ、あれは相当に怒ってるね。

 さりげなく侍女や騎士が距離をとってるもの。

 ニコってば変なところが鋭いクセに、姫様が激怒してるのは気がついてないんだね。


 「そんな話をしてたら騎士のオッサンだけじゃなくて、商人のオッサンとかも話に加わってさ。城の備蓄量は少ないんだけど、町のあっちこっちに備蓄用の巨大な倉庫があるんだってな?」


 へぇ? そんな倉庫があるんだ?


 「だからさ、そういう倉庫を一箇所でも奪う事ができたら、俺達はもっと頑張って篭城できんじゃないかって思うんだよな」


 それだ!

 私と姫様は顔を見合わせて頷きあった。

 姫様は役人を呼んで、町の中にある備蓄用倉庫の位置を調べて地図に印をつけるように命じた。

 何とかなりそうな気がしてきたよ。


 「ところでニコ、あんたはどこで寝泊りしてんのよ?」

 「騎士団の宿泊所だよ」

 「アレスやシーザーとケンカでもしたの?」

 「してないよ。ただ、同じ場所で寝泊りしてるとさ、アリスとかシーラとか訪ねてきてイチャイチャしてやがるし、俺は気まずくて居場所がないんだよ」


 ニコ、アンタも苦労してんだね……

 

 「センセー、同情の涙をだくだく流しながら、俺の頭を撫でるのやめてくれよ」

 「アレス達は勇者探索の旅に出て誰もいないから、宿舎に戻りなよ」

 「そっか、あいつら行ったのか……」


 そう言うと、ニコはどこか遠くを見つめている。

 もしかして一緒に行きたいって思うところもあったのかな?

 

 「なぁ、センセー」

 「なに?」

 「誰もいないなら、女の子を連れ込んでも構わねえかな?」

 「好きにしなよ」

 

 こいつ、どこか遠くを見て儚げな感じだったから、私も色々と深く考えちゃったけどさ。

 女の子を裸にする事しか考えてないんだ。

 ニコに繊細な部分なんか無いって、改めて分かったよ。

 

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