五十四話
あの子達、ベッドでイチャイチャと楽しくやってんじゃないだろうな? なんて心配が一瞬頭を過ぎる。いや、別に構わないんだけどね。ただ、私は異性と楽しくイチャイチャした経験が無いんだよね。アルスとは他に選択肢が無くて仕方がなかったからだし……。
ううん、異性との楽しい思い出はあったんだ。だけど、それはアリマ・リュージの経験であって、私、アルマ・リュージュの体験じゃないんだよね。
自分自身は元々はアリマ・リュージであるって自覚も最近は無いんだよ。何しろ、アリマは自分から分離して独立した個として存在してるしさ。アリマと私は同一人物です、なんて説明はややっこしいから他の人にはしてないんだ。対外的には姉と弟って事にして振舞ってるから、なおさら自分がアルマであって、アリマではないって気持ちが強くなってるんだよね。
何が言いたいかって言うと、ぶっちゃけ恋人同士でイチャイチャ出来るのは、うらやましいな~って。
そんな事を考えてたら寝室前に到着していた。
男女が絡みあってる姿を見ることになるかも、と覚悟をしつつ勢いよくドアを開ける。
「起床!! ハリー!! ハリー!! 急げ!! 急げ!! パンツを上げて、服を着ろ!!」
やっかみ、ねたみ、ひがみ、そねみ、何と言っても構わない。寝てる奴らを叩き起こすのだ!
「……なに? なにかあったの?」
アレスが眠そうな顔をして私を見てる。アリマとシーザーもだ。しかし、寝ぼけ眼でも服をテキパキ着てるのは日ごろの成果なんだろうかね。
「あんた達、寝床に女の子を引っ張りこんでないのは感心だわ!!」
「姉貴、そんな事で俺達を叩き起こしたのか?」
「先生。流石に今日は、首都の中での攻防と城への撤退戦で、そんな元気ないんですが」
ほほう? シーザー、そういう日でなければ、ウチの娘とベッドでよろしくやってたって事なんだね?
まぁいいんだけどさ。若い男が溜め込むとろくな事にはならないからね。
「勇者の件で探索に行ってもらう為には、この包囲網を突破しなきゃならない。それは分かってるわよね?」
「母さん。それは三日後に改めて会議する手筈だろ?」
「昔の王族が作った極秘の脱出路が見つかったのよ。それがいつまで使えるか分からないから、あんた達は準備を整えて至急出発なさい」
私は娘達の部屋にも奇襲をかけて叩き起こす。そして同様の説明をすると準備を急がせた。6人が会議室に集まり待機したところで、私は案内人のスレッジを呼びにいく。
「スレッジ、子供達の準備は出来たわよ。今、会議室で待機してるの。あんたも来て、あの子達を案内してあげてよ」
「もう準備できたんですか? ずいぶんと早いですなぁ……」
「当然よ! 私が鍛え上げたんだからね!」
深夜から早朝と呼ばれるような時間になりつつある。そんな中、隠し通路であろうと、移動する人数は少ない方が良いだろうという事で、私は城の隠し通路の入り口で見送る事になった。ちなみに通路の入り口は、高位の貴族や王族が歓談で使用する部屋の暖炉だった。
「内力を鍛えることで魔族対人間は7対3か良くても6対4くらいの戦力比なんだと思うのよ。今後、内功の達人が出てくれば戦力比は逆転できると思うわ。その代わりに互角になった魔族と人間は、果てしない死闘が続いていくと思う。だから、犠牲を少なくする為には勇者の覚醒が一番大事なんだけど、それが無理なら何故覚醒しないのか原因をを調査してきてね」
アリマ、アレス、シーザー、アリス、シーラ、シータが頷いた。
「では、城外へ案内してきます」
スレッジを先頭に六人が暖炉の隠し通路へ入っていく。あの子らが帰ってくるまで城が持ちこたえるように頑張らないとね。そういや、ニコはどこへ行ったんだろう?




