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五十二話

 五日後に会議をする事にしたけど、良いアイデアなど出るはずもない。姫様に頼んで囮を出してもらい、包囲が薄くなったところを、私達だけで強行突破か。あるいはカレドニアからの援軍が来るまで待つか。


 こういう結論を先延ばしにしちゃうのを小田原評定って言うのかしらね? もっとも、こんな言葉を知ってるのは、私とアリマくらいだけどね。


 会議まで、あと三日となった深夜。

 夜更かしは美容の大敵だからと、私は安らかに寝てたんだけど、人の気配で目が覚めた。


 昔だったら恐い夢でも見たアレスか、アリスが来たんだろうと判断したと思うんだ。今なら夜這いに来たニコってとこかな?


 けど、ニコでもないと、すぐに分かった。だってニコなら女体を前に隠しきれない興奮があると思うんだよ。でも、この気配の主は冷めた感じで部屋の中にいる。


 「こんな深夜に何か用でもあるの?」


 気配を感じたのが気のせいだったら、深夜に独り言を呟く私は危ないオバチャンだよね。

 そんな心配を察したわけでもないんだろうけど、気配の主は返事をしてくれた。


 「昼間に訪ねてくるのは、我々にとって自殺行為でしてね」


 声の主は思ってたより若い。ウチの子と大して変わらないかも。


 「ふ〜ん? 夜更かしは美容の敵なんだけど、まぁいいわ。話を聞きましょうか?」

 「私に暗殺されるとか凌辱されるとか危険は感じないのですか?」

 「そうしたいなら来なさいよ。アンタの方が強ければ実現するし、私が強ければ、アンタの死体が転がるだけよ。どうするの?」


 真夜中の訪問者は微笑みながら、やめておきますと言った。


 「そうだね、平和が一番よ。で、アンタは誰なのよ?」

 「私の名はスレッジ。我々は盗賊の一味です」


 驚いたよ。犯罪者が何をしに来たのかしらね。


 「スラールが滅び、今またクロヴィアも風前の灯です。私らも悪事を働いてる場合じゃないと思いましてね」

 「魔族と戦う気になったわけね?」

 「そんなところです」


 なるほど、これはこれで面白い戦力になりそうだね。


 「私は戦力が増えるのは歓迎するよ。でも、それならクロヴィアの役人なり貴族か王族に言えば良いと思うよ」

 「いきなり申し出ても、信用してもらえないと思いますし、下手すりゃ捕縛されちまいます」

 「何で私に会おうと思ったわけ?」

 「何故ですかね? あなたは清濁併せ呑む人だと思えたものですから」


 そりゃ私は立ってるものは親でも使うし、忙しければネコの手だって借りるけどね。


 「アンタ達は、これを機会に表の世界に出なさいよ」

 「どういう事ですか?」

 「私は、これから勇者が出現しない理由を探るために仲間を送り出そうと思ってるのよ」


 スレッジは黙って聞いている。


 「けどね、こんな調査は切羽詰まった状態でやるもんじゃないのよ。普段の情報収集が大事なわけで、そこでアンタ達の出番なわけ。王家の諜報を引き受けなさいよ」


 スレッジも驚いたようで、王家の手下になれってんですかと絶句してる。


 「私がいた世界じゃ英雄と呼ばれるような人物は盗賊の一人くらい仲間にしとくもんなのよ」


 歴史小説に書いてあったから間違いないわよね。


 「それと調査を請け負うのは冒険者と呼ばれる連中だろうけど、彼らは罠の発見と解除なんて出来ないよね。アンタ達が仲間を派遣するとか冒険業もやんのよ」


 スレッジはユニークだと呟いている。

 最初は、この首都の盗賊を、ゆくゆくはこの国の盗賊を配下に収めて盗賊ギルドを作ればいい。非道な真似だけはしないこと、弱者や貧乏人からは盗まないこと、他国から流れてきた余所者には目を光らせ仕事をさせないこと、奴隷売買は止むを得ず子供を売りに出すケースもあるので、他国から奴隷を持ち込まれた場合も込みで盗賊ギルドで管理すること。ただし、自ら率先して子供や女性を誘拐して奴隷として売買する行為は固く禁止する。


 なんて事を、ずらずら~っと喋っていたらスレッジが感心している。


 「ようするに、我々盗賊も国家の利益の元に動いてれば良しってワケですかね?」

 「まぁ、そんなところよ。麻薬なんてお金になるかもしれないけど、この国を害する行為でしかないわけよ。それは許されないでしょ? 盗みだって貴族や金持ちからなら、バンバンやんなさいよ」

 「貴族や金持ちからは盗んで良いんですかい?」

 「少しくらい盗まれたってビクともしないわよ。ただし家の者を皆殺しにして盗む、なんてのは言語道断よ」

 「それは分かってますがね。貴族や金持ちからは盗んでいいなんざぁ、失礼ですが貴女は変わった方ですね」

 「スレッジ。あんたは、そんな私を見込んで来たんでしょ? 貴族から見事盗みました、なんて民衆に知られりゃ不満のガス抜きにもなるでしょうし、王家が斡旋して貴族や金持ちから年間いくらで徴収すれば、その屋敷には盗みに入らないとか、色々と決め事をすればいいのよ」

 「それは面白いですなぁ」


 スレッジは声を出して笑ってる。どうも完全に私を変なオバサンと認識したようだ。

 変かな? 元の世界のファンタジー小説とか時代劇とか武侠小説とか、そのくらいやってるよね。

 私は翌日、姫様に面会してこの件について相談した。

 そしてその深夜に姫様と私、そしてスレッジで会談の場を設けたのだった。 


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