五十話
「左手の手のひらに碁石でもビー玉でも何でも良いから乗せなさい。それで内力を込めるのよ。そしたら右手にも内力を集中させて、照準を定めながら内力を込めた人差し指で弾く! この時デコピンの要領で親指で人差し指を止めておくと、より強力に弾けるわよ」
まぁ人差し指じゃなくて中指で弾いても良いんだけどさ。慣れりゃ片手だけでも出来るんだけどね。
「先生! 立ち止まって悠長に話してるなよ! 囲まれたら全滅だぞ!」
大丈夫だよ、ニコ。
「さぁ、皆! やってみな!」
そのとき魔族の中でも巨大な奴が前に出てきた。
「あいつはヤバイぞ!」
ニコが騒ぐけど無視する。
「あれだけ大きければ的は外さないわよね。さぁ子供達! 用意はいいかしらね?」
子供達の返事が響く。
「用意! 撃て!!」
八人の子供が一斉に弾く。それは全弾命中した。更に言うと銃から撃たれた弾丸の如く、大きな魔族をブチ抜いた。
魔族は倒れて動かない。つーか、あれは即死してるよね。
「おめでとう、子供達! その技は指弾と言うのよ。内力が充実してくると、そんな石はいらなくなるわよ。気弾を撃てるようになれば一人前ね!」
さすが子供は飲み込みが早い。退屈な内力修行も面白いこと、凄いことが出来ると分かれば、一生懸命にやるんだろうなぁ。さぁ子供達が貴重な戦力になってくれたところで撤退続行しようね。
私達の撤退速度は遅かったけど、遠距離攻撃を使う戦力が増えたおかげで、厳しい状況にはならなかった。
と、言いたいけど、実は何度かなったのよね。まぁ仕方ないんだけどね。
中央の城へ逃げなさい。これはもう、何回も叫んでるのよ。途中で合流した兵士、弓使いの女性、そして指弾の子供達も一緒に叫んで知らせたのよ。
だけど世の中にはパニックになると、周囲が見えない、聞こえない人達がいるんだね。
魔族が群れをなして、こちらに向かってきてるのにさ。よりによって、そっちへ逃げるわけよ。
私達が声を枯らして叫んでるのに。
間に合えば捕まえて一発張り飛ばして正気を取り戻してやんだけどさ。そういう奴の中で男性に限って、見境無く殴りかかってきたりするわけ。
子供達や弓矢使いの女性を殴りつけようとした馬鹿は、さすがに手加減せずに殴ってやったわ。
んでね、そのパニックを起こしてんのが女性の時が困るのよね。ニコの奴ってば男が相手の時はさ。
「仮にも男の端くれだ。自分で何とかすんだろうから放っておけよ」
なんて言うんだよ。
ところが女性が、それも美少女がいるとさ。もう手遅れじゃないかって時まで救いに行くんだよ。
「もう、あの娘はダメだよ!」
「先生は悪魔か!? 俺は見捨てるなんて出来ない!」
だってさ。
パニックを起こしてる美少女の元へニコが行っちゃうから、仕方ないから私と兵士も行くしさ。遠距離攻撃の子達も必死に援護してんだよ。
それなのに、ニコのヤローは、いきなり美少女を抱きしめて強引に唇を奪うんだよ。
「すまないな。騒いでる女を黙らす方法は、これしか知らないのさ」
なんて言ってやがるんだよ。
私らが命懸けで死闘を演じてる横で、雰囲気作ってんじゃねーってのよ。
そんなこんなで、何とか城へ入れた時は、ニコ以外の全員で心から喜んだよ。
え?
ニコ?
唇を奪った美少女を口説こうとしたらさ。彼氏が出てきて美少女に逃げられちゃったよ。
「自分の大事な女だって言うならよ。男が身体を張って守りやがれ!」
そう言ってニコが彼氏を殴り飛ばした時は、ちょっと目にゴミが入ってたんで止められなかったのよ。
いや、ホントよ?




