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四十九話

 私は突破された西門付近で戦う兵士を救う事にした。


 「ニコ! 西門付近の連中を助けるからね!」

 「了解!」


 私達二人は西門に突っ込んで魔族に攻撃を開始する。ニコは他の連中に比べると技量の面では落ちるけど、心身共にタフだ。

 下手をすれば退路を絶たれて嬲り殺しにされそうな局面でも気後れしない。

 これで、あそこまでエッチじゃなければって思うのよ。けどニコの強さは煩悩にあるんだと、最近見抜いたから何も言わない事にしてんの。


 言っておくけどね。

 諦めて匙を投げたわけじゃないんだからね?


 「おう、おめえら!! 中央の城に撤退すんぜ!! ついてきな!!」


 どうしてニコは偉そうな口をきくのだろう? 師匠の私は、こんなに謙虚な女の子なのにね。


 「巡察に来た姫様を見失いました。見つけ出すまで城へは戻れません!」

 「それなら大丈夫よ。姫様は城へ戻って指揮してるわ。私達は撤退しながら逃げ遅れた人を救助するから、手伝って欲しいの」

 「姫様の身が安全であれば、我々は喜んで手伝いをさせて頂きましょう」


 これで四人の兵士を仲間に加えて、戦いも楽になるかな。この四人は真面目に内力を鍛えていたようね。

 一撃で魔族を倒す事は出来ないけど、鉄のように硬い皮膚を槍で貫く事ができるんだもの。

 この四人の兵士を二人ずつ、私とニコの補助につけて三人で戦うようにした。

 私が斬った魔族に二人が槍を突き出してトドメを刺し、二人が手傷を負わせた魔族を私が倒した。

 うん、なかなか上手くいってる気がするわね。


 しかしまぁ、嫌でも実感する事があるのよね。


 「戦いは数だよ、アニキィ!」

 「はぁ?! 先生、いきなり何を言ってんだよ。アニキって誰だよ?」


 おっと、心の中で言ったつもりが口に出ちゃった。


 「気にしないでね」

 「先生は昔から突然に何か変な事を言うよな」


 まぁいいけどよ。ニコは、そう言って戦いに集中する。ごめんね、先生の若さ故の過ちを許してちょうだいね。


 なんて事を考えてたら、頭上を何本もの矢が飛びこえて魔族に刺さる。見れば後方の住宅の二階から三人の女性が弓で攻撃している。


 「城へ撤退するから、貴女達も一緒に行きましょう!」


 声をかけると頷いて降りてくる。これで更に余力ができるね。ニコが大きな声で城へ逃げろと叫ぶので、私達の近辺は整然とした流れが出来つつあるけど、他はどうなってるんだろ?


 それを意識して見ると、逃げる群衆に追う魔族は川の流れのようで淀みが無い感じ。魔族を食い止める私達は清流の中にある大きな岩みたいなもんかな。

 勢い良く流れる水っていうか、魔族をを跳ね返して飛沫をあげてるみたいな?


 そんなイメージを持って周囲を見てると、魔族の移動の流れが淀んで見える場所を見つけた。


 私がそちらへ向かうと、兵士二人と弓矢を持った女の子が一人、ついてきてくれる。


 「先生! 勝手に分散すんなよ! 各個撃破されちまうよ!」


 ニコの意見尤もだと思うのよ。でも、あそこが気になるんだよね。気になる場所があると告げるとニコは「仕方ねえなぁ!!」と言いながら私についてくる。


 ホントにニコは偉そうな口をきくよなぁ。私は先生だっつーのにさぁ。


 それはともかく、やはり魔族の移動の流れが淀んで見えた場所には、逃げ遅れた人達がいた。

 兵士四人を弓矢の護衛に残して、私とニコが突撃をかける。逃げ遅れた人達を囲んでた魔族を一掃して、声をかけたんだけどね。


 そこにいたのは、まだ十代前半の子供達が八人と老婆が一人だった。


 「助けて頂いて、ありがとうございます」


 老婆が御礼を言ってきた。この人は足が悪く速く動けないらしい。老婆の周囲にいる子供達は孫なんだってさ。


 兵士の一人に老婆を背負わせて撤退を開始したんだけどね。やっぱり興味があるのは子供達の技だ。

 あのまま放置しとけば遠からず全滅してたにしても、魔族を足止めして私達が駆けつける時間を稼いだ事は事実だもんね。


 「これを使ったのよ」


 孫の女の子達は、ガラス製のおはじきを見せてくれた。男の子達はビー玉、あるいは碁石を見せてくれる。


 「これを、こうやったんだ!」


 男の子はビー玉に内力を込めて、投げつけた。それは見事に魔族に命中する。

 なるほどね。

 これなら効くよね。小さな子供が石を投げてきたら死にはしないけど、メチャクチャ痛い。下手をしたら怪我をするかもしんないよね?

 魔族にしてみたら、それくらいの攻撃だったのかもしんない。


 私は、この子達を戦力にする為、一つ効果的なやり方を教えてやる事にした。


 「あんた達の発想は正しいわね。ただし、やり方が効果的じゃないわ。だから私が教えてあげる。祖母を守りたいなら覚えなさい!」


 子供達は真剣な表情で頷いた。







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