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四十八話

 それは突然だった。

 クロヴィア王国の首都を包囲してた魔族が、今までにない全力攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 「母さん、どうする!?」

 

 アレスが私の顔を見る。

 他の皆も私の言葉を待っている。 


 「まさか魔族が奇襲にも似た攻撃をしてくるなんて、想定外だったわよ」

 「だが、この攻撃に思い当たるフシもある」


 アリマの言葉に、私は話を続けるようにと頷いて見せた。


 「ここの町の連中は、もう魔族を恐れていない。内力を学び、その力を試して日々反撃の牙を研いでいたじゃないか。魔族が何故、こんな篭城を許したのか? それは人間の恐怖を楽しみたいからだ。そのマイナスの感情を獲得したいからだ」

 「つまり、私達は調子に乗りすぎたってことね?」

 「たぶんな」


 と、なると……連中は、この町を滅ぼすかどうか、だね。

 まだ楽しみたい。そう思ってるなら、滅ぼさない。

 そこに狙いをつけるしかないのかな。


 「首都の中央にある城へ逃げ込もうと思うのよ。でも、その前に私達で東西南北の城門へ急行して皆を救うわよ!」

 「で、どこに誰を向かわせる?」

 「あんた、アリマとシーラは南門ね。アレスとシータは北門、アリスとシーザーは、東門、私とニコが西門だよ」


 全員が了解して散っていく。

 西門へ向かう途中、パニックに陥った群集が逃げ惑っていた。

 

 「中央の城へ向かえ!! 戦える奴は下がりながら敵を撃て!!」


 ニコが叫んだ。

 こいつはヒマさえあればナンパしなくったせいか、逃げ惑う人々のうち若い女性は立ち止まってニコを見た。面白い事にパニックは収まって、理性を保って中央の城へ撤退していく。

 そう、逃げるのではなく撤退だ。

 

 「アルマ殿!! 御無事でしたか!?」


 クロヴィアの姫様が走ってきた。


 「姫様!? 何故こちらに!?」

 「巡察をしていたのですが、いきなりの奇襲で群集がパニックになってしまい兵達は群集に押されて散り散りになってしまいました」

 「でしたら、私達は群集を城へ向かわせます。姫様は城で受け入れ態勢と臨戦準備を整えて下さい!」

 「分かりました! アルマ殿、それとニコ殿でしたか? 御無事で!!」


 姫様は中央へ走っていく。何人かの兵士は姫様に気がついて合流していた。


 「先生、姫様を護衛しなくて大丈夫か?」

 「城壁をバターを切るみたいに、スパーッと斬るんだよ。大丈夫だよ、あの姫様ならね」

 「そうかな」

 「不安ならニコも行きなよ」


 姫様と仲良くなれるかもよ? そう付け加えた。

 

 「いや、姫様を俺のモノにするなら、城が陥落したときじゃないとダメだな。魔族がウヨウヨする中を無事に城外へ脱出させ、さらに首都を脱出して人間の陣地まで連れていく。そういうシチュエーションで、初めて高貴な姫君が俺様に組み敷かれるんだよ。フヒヒヒヒヒ」


 そんな上手くいかないと思うけどね。

 あの姫様は内力をニコよりも使いこなしてるもの。

 そんな話をしてたら西門が見えてきた。

 門は破られて続々と魔族が侵入してる。

 その門の近辺で必死に兵士達が戦っていた。


 「あそこで戦ってもダメ! ニコ、彼らを中央へ撤退させるよ!」

 「了解だ! 負け戦こそ戦場の花! 男の意地を見せるときだぜ!」


 そういやぁ、ニコの奴、以前もそんな話をしてたなぁ。

 これだけの敵を見ても怖気づかないのは結構な事だけどね。




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