四十五話
いよいよ城門の一つに突撃を開始した。
我が軍の士気は、天を突き抜けるほどに高い。いやもう、ホントに勘弁してよ。
多分だけど、兵士諸君たちは本当にパンツが欲しいわけじゃないんだよ。
魔族を相手に怯えて自分達の無力感に悩んでた時に、ニコの能天気にも程がある扇動で肩の力が抜けたんだよ。だから、それに乗ったんだよ。きっと、そうに違いない。
「お前ら、無茶すんじゃねぇぞ!! 生きてれば必ず良いことがある!! 例えば、この美少女のおっぱいを揉めるとかな!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!
またしても大歓声だ。
ちなみに扇動してんのはニコね。この美少女ってのは私だよ。
「揉ませるわけないでしょーが!!!」
「体は小さいが実は巨乳で柔らかいんだぞ! みんな、今日は生きて屈辱を味わおうとも内力を学んで、次の雪辱の機会に備えるんだ!! その果てに、この柔らかくて大きなおっぱいが揉んでちょうだいと言わんばかりに待ってるぞ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ちょっ!? まて!
揉んでちょーだいなんて言わねーよ、聞けよ。
「こいつらは、もう負け犬なんかじゃねぇ、この大陸で最強最高の精鋭達だ。人間の可能性って奴を俺達は見ることが出来た。人間の可能性はまさに無限、素晴らしいなぁ」
ニコ、何を感慨深げに言ってんだよ。
今回のニコは、何かが違う。
「全軍、美少女を中心に密集隊形!! 大型魔族は美少女に任せて、お前らは小型を殲滅せよ!! 美少女達が敵魔族を突破した頃合を機会に撤退する。分かったな!!」
「おう!!!」
なんでニコが仕切るのか分からないけど、間違った事は言ってないし、クロヴィアを開放しようって皆さんも納得してるようなので、もう私は何も言わないんだ。
「全軍突撃!!」
ニコの指揮の下、私達は魔王軍へ攻撃を開始する。大型の魔族は私達が引き受けて倒してるんだけど、クロヴィアの解放軍兵士は小さな魔族を相手に手際よく戦っていた。
「いけいけ!! 勝利の女神は貴様らにスカートをめくってパンツを見せてるぞ!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
なんて品の無い激を飛ばしてるんだよ、もう!!
城門から、こちらを見ていた兵士も弓矢で支援攻撃を開始してくれてる。
もうちょっとで敵軍を突破できそうだよ。
「先生!!」
「なによ?」
「パンツを脱いでください」
「はあぁ!? ふざけんじゃないわよ!!」
「ふざけてません。言った約束は守る! それをしなくて、士気向上と維持はできません」
「だ、だからって、この乱戦の中でパンツを脱ぐわけ!?」
「大丈夫です、我々が守ります」
「で、でで、でも、脱ぐのは恥ずかしいよ」
「そうですか、まぁ無理にとは言いませんよ。その代わり、士気は下がり兵士達は魔族に倒されて全滅するわけですな。それでも構わないと先生が言うなら、俺も何も言いませんがね」
な、なんだよ、その真綿で首を絞めるような言い方すんなよぅ。私が何で罪悪感を感じなきゃイケナイんだよ。
「はぁ、やれやれ先生ともあろう方が大局が見えないとは」
「わ、分かったわよ!! 脱ぐわよ!! あっち向きなさいよ!!」
「さすがです、先生! このニコ、命に代えても守りますよ!!」
この屈辱は忘れないからね! それにしてもスースーして心細いな。
ニコは私からパンツを受け取ると、袋に入れてシードに渡した。
「それをエサに兵士達の士気を維持して頑張れ」
シードは私の表情を伺いながら恭しく受け取った。
「シード!! 先生のパンツを洗濯すんじゃねーぞ。御利益が落ちるからな」
なんだよぅ、御利益ってのはさぁ。
まぁいいや。
ニコにヤキを入れるのは首都に入ったら、だね。
再び城門に向かって突撃を開始する。
私は違うって分かってるんだけど、魔族に八つ当たりをしまくった。
私達が魔族を突破できそうだと見た時点で、シードとサラは兵士達と共に町まで撤退していった。




