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四十二話

 明るくない未来予想図に、打ちのめされながらも、私達はクロヴィアの首都に一番近い町に到着した。

 クロヴィアから逃げる人を大勢見たので、寂れてるかと思ったけど、妙に熱気と言うか活気があるのよね。

 民間で冒険者と呼ばれるような連中が功名を立てようとしてるからかな?


 「クロヴィアは普通に考えりゃ負け戦だろ? でもよ、負け戦こそが戦場の花なんだぜ!」


 またニコが何か言ってるし。


 「そりゃまた、何でだ?」


 アレス、まともに聞く必要は無いんだよ? しかし、そんな私の心の声が届くはずもなく。


 「勝ち戦に途中から参加したって、上の連中にしてみりゃ有り難みなんかねえよ。でも負け戦は参加する奴はいないからな!」

 「でも感謝されたって負け戦に参加しても、もらえるものは何も無いだろ?」

 「甘い! 敵の勝ち戦をひっくり返して見せれば恩賞は思いのまま! 例え出来なくても撤退の殿を果たして帰れば、やはり恩賞は思いのまま!」


 ニコはアレスの鼻先に人差し指をを突きつけて、大きな声で言う。どーでも良いけど、指を突きつけるのは感心しないぞ。


 「でも、それはあまりにもリスクが高くないか?」

 「クロヴィアの姫よ、魔族に蹂躙される前に、このニコがお救い申し上げますぞ!!」

 「お前、お姫様を狙ってんの?」


 ニコは胸を張って偉そうに頷く。


 「きっと美人だろうな。ウチの道場の女性達よりも。フヒヒヒ」


 シーラ達は知らん顔してる。賢明だと思うよ。ニコのペースに巻き込まれたら酷い目にあうもんね。

 だけど、シーザーは、口を出しちゃったよ。

 

 「クロヴィアの姫様は、戦姫と呼ばれた剛の者だと聞いてるぞ。小国でありながら魔族相手に互角に渡り合えてるのは、スラールから猛者が流れ込んだのもあるが、戦姫による戦意の高さだとか。ニコに助けられる前に、自分で窮地を切り開くタイプだぞ」


 ニコが愕然とした表情でシーザーを見つめている。ニコのこんな顔は滅多に見れないよね。

 シーザー、グッジョブ!


 「隣国では勇者が出現したとの噂を流して、王都に入り込んだ魔族を一網打尽にしたそうですよ!」


 シードは町の噂話を聞き集めてきたみたいだね。微妙に変質してるけど、ランスロー達が、わざと流したのかも。


 「王都の連中も上手いな」


 アリマが感心してる。


 勇者の一族がいるとなれば魔王は必ず動く。自分を滅ぼす要素は、例え噂であろうと、なりふり構わず全力で叩き潰しに来る。


 しかし、王都の連中は勇者の一族を勇者と言い換えた。そして勇者の出現を餌に魔族を殲滅する計略だった事にした。

 もし本当に勇者が出現したなら、噂が届く前に魔王は滅ぼされてる。それを理解している魔王は勇者出現の噂が届こうが動かない。


 出現が嘘だって分かるもんね。


 今の魔王は絶対に負けないゲームで、魔王軍が苦戦するシチュエーションすら楽しんでる。


 余裕をかましてやがんのよ。

 魔王の薄ら笑いを絶望の表情にしてやりたいわよね〜

 フヒヒヒ


 「母さん、ニコみたいな笑い方しないでよ、もう」

 

 アリスに窘められた。


 「俺みたいって言うな! 先生と俺は笑い方すら似てしまうほど強い絆で結ばれた師弟関係なんだ!」


 う〜ん、素直に頷けない。


 「姉貴とニコは悪巧みしてる時の挙動が似てるんだよな」

 「確かに!」

 「言われてみれば!」

 「納得した!」


 アリマの言葉にアレスとシーザーとシードが力強く同意しやがった。

 なんだよ、もう。


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