四話
俺は好青年と共に村長の家に向かった。好青年は名も無い村と言ってたけど、かなり大きい村だと思う。
これで名も無いと言うなら、かなりのワケありな村なのかも。
権力争いに敗れた貴族の落人の隠れ里のような・・・。
ま、いっか。
異世界から来た俺には関係ない。
俺は前を歩く好青年の衣服を摘まんで、クイクイっと引っ張った。
「なんだい?」
「あ、あのさ、助けてくれて、ありがとう」
「そんなことか、気にしなくて良いんだよ。君を助ける事が出来て良かったと思ってる」
「俺の名前は有馬竜児って言うんだ」
「アルマ・リュージュ?良い名前だね」
違う、アリマ・リュージなんだけど、まぁいいか。姿は女の子だしな。
「ボクの名前はアルスだよ、よろしくね」
アルスか、勇者と共に戦う俺の従者にしてやろう。自分で言うのも何だけど、今の俺を見てもスケベ面しない奴は貴重だ。
俺なら、今の俺を絶対にナンパすんぞ。
「さぁ、村長の家についたよ」
見た感じ、普通の家だね、これは。
アルスは中に入ると、村長に勇者の件で客が来たと告げていた。
俺はアルスに手招きされて、村長の前に出る。村長は椅子に座るように勧めると、アルスに飲み物を持ってくるように指示した。
「それで、お嬢さんは勇者の何を知りたいのかね?」
「居場所だ。俺は勇者の仲間となって、魔王を倒すんだ」
「魔王を倒すのは勇者に任せれば良いと思うがのう」
このクソジジイ、教えないつもりか?
「いいか、この可愛い見てくれに騙されるような奴には用はないんだよ!俺は勇者と共に魔王を倒す。そして元の世界に帰る。ただそれだけなんだよ」
「村長、このアルマは、この世界の地理や国名などを、まるで知りませんでした。異世界から来たのは真実かと思います」
アルス〜、お前はいい奴だなぁ!中身は男だけど、それで良ければホッペにチュ〜してやろうか?
「だがなぁ、お嬢さん。私が何を危惧してるか教えてやろうか?お前さんの体には外見に似合わぬ魂が入っておるのは分かる。そして、この世界に飛ばされたと言うが、私はお嬢さんに魔の力の匂いを感じるのだ」
俺は匂いと言われて、自分の体臭を嗅いでみる。
「大丈夫、実際ににおいがする訳じゃないからね」
すかさずアルスがフォローを入れてくれる。
「つまり、俺が魔族の仲間で、勇者の情報が魔族に筒抜けになるとか、あるいは俺が勇者に危害を加えるかもしれない、なんて思ってるのか?」
「そういう事だ。気を悪くするだろうが、私には勇者を護る義務があるのだ」
そう言われたら怒れないじゃんか。
「俺も異世界では勇者と呼ばれたから、そういう気持ちは分かるよ。だけど信じてもらわなきゃならないんだ。そこで教えて欲しいんだが、魔族の拠点を知ってたら教えてくれないか?」
「勇者の居場所の次は魔族の拠点かい?知ってどうするの?」
「決まってるだろ?叩き潰してくるんだよ。そうしたら信じてくれるだろ?」